2回目なんですが1
乗っていた馬が急に速度を上げ出鱈目に森をかけぬける。
必死に手網を握り制御しようと思っても、何かに興奮した馬は言うことを聞かない。
危ない、ぶつかる……目前に迫る大木。
迫る恐怖にきつく目を閉じた瞬間、強い衝撃を体に受けた。
あ……また頭打つんじゃん。
地面に頭が当たる直前にそう思ったのは仕方ない。
「きゃーお嬢様!」
「お嬢様」
メイドの悲鳴と護衛の野太い叫び声を聞きながら、私はゆっくりと意識を手放した。
【おぼっちゃま、お逃げ下さい】
青い軍服をどす黒い血で染め、背後に庇うのは自分が仕える貴族の子息。
【ミルフィは、どうするの?】
14歳の子息は顔を青ざめさせ震えながらも、強い瞳で私を見あげる。
【目の前の敵を倒してから後を追いますので、おぼっちゃまはこの路地を走り抜け、憲兵隊の待機所へと向かってください】
震えそうになる声を必死に止めそう答える。
本当はもう目の前の5人をねじ伏せる力は残っていないかも知れない。
20人を5人まで、減らせたのは気合と根性だったと思う。
【わ……わかった。憲兵を連れてくるから、絶対に連れてくるから】
声に涙を滲ませながらそう言ったぼっちゃんに、私は敵を睨みつけたまま背後を振り返らず、口角を上げ頷いた。
パタパタ……かけていく足音。
どんどんと遠ざかる。
さぁ……私は私に出来る事をしよう。
ふっ、と笑って剣を握り締めると目の前の敵へと切り込んだ。
それが最後の記憶……。