サララの身勝手
ちょっと長くなってしまいました。
嫌な話なので、読むのはお勧めいたしません。
性的描写、人が亡くなるシーンがあります。
サララは5歳の頃、洗脳の能力があると判定された。
それからは両親と使用人の態度が変わった。
両親と使用人たちはまるで汚いものを見る目で私を見る。
王家に洗脳の能力のあるものが発見されたと報告され、私は王宮へと招待された。
「間違った使い方をせず、正しく生きよ」
王と言われる人にそう言われたが、私は間違った使い方や、正しい使い方が分からない。
そもそも洗脳がどんな能力なのかも分からなかった。
自分の家の者たちに線引をされたような接し方をされ、私は孤独に陥った。
五歳の子が普通に親を恋しがっても両親は恐れたように私には近寄らず、私は独りだった。
メイドたちが最低限の世話をするだけ。
この孤独を振り払うためには洗脳の力を使いこなさなければならないとある頃から考え始めた。
洗脳の能力をどうすれば使えるのか知りたいと思ったけれど、知る方法がなかった。
色んな事を試してみた。
水が出せるのかとか、火が出せるのか色々試してみたが反応がない。
触れずに椅子よ動けと頭の中で考えていたときにメイドが私に触れ、何かがメイドに流れるのが分かった。
そしてメイドは首を傾げながら椅子を少し動かした。
「何故椅子を動かしたの?」
「・・・解りません。なぜか動かさないといけないと思って・・・」
戸惑うように話すメイドを見て、もしかしたら思う通りに動かすことが出来るのかもしれないと思った。
まず初めに私の世話をしてくれている二人のメイドに色んな方法を試してみた。
離れた場所から指示を出してみたり、目を見て指示してみたりいろいろ試してみたが、成功するのは素肌が触れ合っている時に命令することだった。
何度も繰り返し指示を出していて気付いたのは、本人が本当に嫌がることはさせられないと言うことだった。
意外と人の嫌がることは多くて驚くのと同時にがっかりした。
メイドの二人を皮切りに次々と洗脳していく。
洗脳は毎日続けて掛けていく毎に強い力を発揮することも分かった。
一度や二度で嫌だと思っていたことも、十回、二十回と重ねがけしていくと、強く忌避していることでも言うことを聞かせられることが分かっていった。
そして私は孤独ではなくなった。
父や母も抱きしめてと指示すると抱きしめてくれるし、使用人たちは私に優しくなった。
孤独だった私は兄弟が欲しくて父と母に兄弟を作るように何度も重ねがけをして命令を出した。
私の願いは叶えられ、妹と弟が生まれたが、家の者達の関心が妹弟に向かった分、私への関心が薄れただけの結果となった。
まだ自我のない妹弟に日に何度も何度も洗脳を上掛けしていく。
妹弟は自我がないまま大きくなり、私の言う事なら何でも聞く私の大事なお人形になった。
欲しかった妹弟ではなかったけれど、これはこれで楽しいおもちゃだった。
もっとおもちゃが欲しかったので、両親にもっと子供を作るように重ねがけしていったが、両親の忌避の方が強かったのか、新たな子供は生まれなかった。
仕方なかったのでメイドや料理人に子供を作るよう強制したけれど、これもまた忌避が強かったのか誰も子供を作らなかった。
私が子供を作ったら生まれる前から洗脳できるのかしら?
私が産めばおもちゃが沢山できる。
子供の作り方が分からなくて、両親に子供の作り方を見せるように指示したが、これもまた忌避された。
メイドや料理人に同じ様に子供の作り方を見せるように指示すると、一人の従僕が、私より一つ年上のメイドを使って見せてくれた。
メイドはとても嫌がって体中の色んな所から血を流していたけど、私は満足した。
ただ、あんなに痛い思いはしたくないなと思って従僕と他のメイドに話していたら、女が受け入れる気があれば、痛いものではなく、気持ちのいいものだと教えてくれた。
ひとつ上のメイドに嫌がるなと何十にも指示を出し、行為が行われている最中にも指示を出し続けると、忌避しなくなり、何度目かには気持ちよさそうにし始めた。
私はその様子に満足して、私は私のおもちゃを作ろうと決心した。
多くの者が婚約者を決める十歳に私もなり、色んな所からお茶会の誘いを受ける。
触ることの出来た子にはどんどん洗脳を掛けていく。
私の周りには洗脳された子供がたくさんいて、私は大満足だった。
子供は洗脳しやすいのか、簡単に洗脳できる。
ただ、何度も掛けられないので時間とともに解除されていってしまうのが難点だった。
ある日、ケイナという侯爵家の女の子がいた。
ケイナの周りには男女問わず人垣が出来ており、腹立たしい気持ちになった。
あの子も洗脳の能力があるのかしら?
ケイナをなんとか洗脳してやろうと近付いていくが、多くの子供や大人に阻まれて結局触ることが出来なくて、腹立たしくて仕方なかった。
次のお茶会に行った時、ケイナとアルルというこちらも侯爵家の子と婚約したと誰もが話をしていた。
アルルという子がどんな子か分からなかったけど、いつかこの腹立たしさを味わわせてやると思った。
何人もの子供が婚約者が決まっていく中、私には婚約者候補すら現れなかった。
十五の歳になり、学園が始まってケイナとアルルが同学年だと知った。残念なことに同じクラスにはなれなかったけれど、チャンスはいくらでもある。
ケイナからアルルを奪ってやろうと思い立ち、私のおもちゃを作る相手にアルルは丁度いいかもしれないと思った。
アルルはとても美しかったので、さぞかし可愛いおもちゃが生まれるだろうと想像してうっとりしてしまった。
学園でも肌が触れた相手にどんどん洗脳を掛けていった。
ケイナとアルルの情報を集めるよう、触れた相手に指示を出す。
ある男子生徒が、アルルは退屈しているみたいだと情報をもたらした。
私は今が絶好の機会だと思い立ち、アルルの前を何日も掛けて彷徨いてみせた。
最初は私のことは気にもとめていなかったが、だんだん私に視線を向けることが増え、ついに話しかけられることに成功した。
私は歓喜に打ち震え、笑いが止まらなくて体が震えた。
落としたと言ったネックレスを受けるときにアルルの手を掴み、洗脳を掛けていく。
ケイナへの愛情が強いのか、手を握っただけでは簡単に洗脳できなかった。
唇をそっと触れ合わせ、指示をどんどん強めていく。
「サララを愛していると言って」
「さらら・・・を、あい・し・ている」
「何度も言って」
「サララ、を、あいし、てい、る・・」
「もっと言って」
「サララをあいしている・・・サララを愛している」
「そうよ。私達は愛し合っているのよ」
「私達は愛し合っている」
私は満足して、私に口づけるように命令する。
そっと触れるだけの口づけから深い口づけに進めるように指示していく。
ケイナの悔しがる顔を思い浮かべて笑みがこぼれた。
「今日はこのくらいで帰りましょう。明日も会えるでしょう?」
アルルと明日の放課後、体育館倉庫で会うことを約束する。
それから毎日アルルと放課後、体育館倉庫で会うことにした。
中々手を出してこないアルルに焦れたが、何度も深い口付けをしているうちに彼の下腹部にそっと手をあて、何度かすりあげるとアルルが覆いかぶさってきた。
私は抵抗していなかったのに、初めての時は痛くて、血が出たみたいだった。
メイドが嘘をついたと腹立たしかったが、感じるものは痛みだけではなかったので、家に帰ってからメイドにお仕置きをすると心に誓ってアルルにされるがまま我慢した。
父に子供が出来たとどうしたら分かるのか訊ねると、月のものが予定通りに来なければ大体妊娠していると教えられた。
ひとつ上のメイドが妊娠するまで、従僕の好きにさせた。
月のものの予定日を聞き、一週間遅れても月のものが来なかったので、妊娠したのだろうと判断した。
ひとつ上のメイドはこの後、首をくくって死んでしまった。
赤ん坊が生まれるところまで見たかったのに、とても残念だった。
私は妊娠せず、月のものがやって来た。
どういうことか尋ねると、そういうこともあるとしか返答がなかった。
仕方なく、続けてアルルに体を好きにさせる。
その行為の間、ずっと愛してると言わせた。
毎日体を好きにさせて、愛してると言われていると、私もアルルを愛しているような気分になることもあった。
休日にはケイナとデートを楽しんでいるようで腹立たしい思いをしたけれど、この先の楽しみのために我慢して、月曜日にはたっぷりとアルルを堪能した。
予定日に月のものが来なくて、更に十日経っても月のものは来なかったことで妊娠を確信した私はアルルに「ケイナより私を選んで」と指示を出す。
私と繋がっている時のアルルはとても素直でいい子。
少々忌避あることでも私の言うことはなんでも聞いてくれる。
「ケイナと婚約破棄してくれるでしょう?」
「わかった」
その返答に満足して「明日は私とケイナでまず話をするから、タイミングよく現れてね」
「わかった」
ケイナを放課後教室に残るようアルルに言わせて、アルルより先に私が現れたのを見てケイナは訝しんでいた。
「アルルをね私にちょうだい」
ケイナの歪んだ顔を見られて私は嬉しくて震え上がった。
頬が勝手に上気していく。
「そんな事出来るわけないでしょう」
あぁ、もっとみっともない顔を私に見せて。
「でも、アルルは私を選んでくれたのよ」
「嘘!」
「本当よ」
我慢できなくて笑いが漏れる。
ケイナの背後にいるアルルを指差す。
「どうしてここに?」
「すまない」
「なぜ謝るの?」
「私がケイナ以外を選んだから・・・」
アルルの苦渋する顔もまた私を喜ばせる。
「それがサララだというの?」
ケイナの絶望する顔に私はエクスタシーを感じた。
「そうだ。本当にごめん」
「ケイナ。君を好きだという気持ちは確かにあるんだ。けれどそれ以上にサララが・・・気になって仕方ないんだ。本当に済まない。婚約を・・・破棄、してくれないか?」
アルルの言葉にちょっとムッとしたけど、婚約破棄をケイナに言い渡したことで相殺する。
もう少し強く指示を出したほうがいいと判断してアルルの手を握る。
またケイナの顔が歪むのが見れた!
嬉しい!!楽しい!!この時を十歳の頃から待っていたのよ!!
「私達が培ってきた五年間を無駄なものにしてしまうつもりですか?」
「すまない・・・」
「本当にそれでいいのですね?」
「ああ。私はサララを選ぶよ」
私がアルルと手をつなぐのではなく、アルルが私に縋るよう指示を出す。
それでいいのだと何度も上書きしながら指示を強めていく。
「私達の婚約はアルルのお父様と、私の父との話し合いで決まった政略的な婚約です。アルルや私の気持ちでどうにかなるものではありません。アルルのお父様から婚約破棄の話を我が家に届けてくださいませ」
「フン!選ばれなかった女が偉そうね!」
私は勝ち誇った気持ちでケイナの顔を見下してやった。
ケイナは一瞬、表情を崩し、そして無表情になった。
ケイナがアルルに近寄り、アルルの手を握る。アルルの顔を覗き込む。
「アルル、本当にサララのような女でいいのですか?」
アルルは目を伏せ、ケイナの手を払い除けた。
「ああ。サララを選んだんだ」
「そう、なら私は何も言うことはないわ。ここで失礼します」
「ケイナ・・・本当にごめん」
私は去っていくしかないケイナに高笑いを聞かせてやった。
アルルはケイナの後を追いかけようとしたので「体育館倉庫に行きましょう」と手を引いた。
体育館倉庫に着くと私の方が我慢ができず、アルルを押し倒した。
「ねぇ、見た?あのケイナの顔!!私はもうたまらなくて!!ねぇ、アルル!私を満足させて!!」
笑いが止まらなくて声が抑えられなかった。
「今夜、家に帰ったらアルルのお父様に、ケイナとの婚約は破棄したいとお願いしてくださるでしょう?」
私がそう望むとアルルは素直に首肯いた。
その次の日からアルルは学校を休んだ。
何か私の想定外のことが起こっている気がして不安になる。
クラスの子達が私とアルルとケイナの話が噂になっていると告げに来た。
それは別に構わないが、何故アルルは学校に来ないのだろう?
クラスの子達に聞いても、使用人に聞いても皆、分からないとしか答えなかった。
一週間アルルは学校を休み、やっと登校してきたと思ったら下を向いて歩いていて私を見ようともしなかった。
私はアルルを追いかけて教室に入っていく。
幾人もの人が話すざわめきが無くなり、教室の中は静かになる。
アルルがケイナに話しかけるのを見て不満が募る。
なるべく余裕そうな顔をしてアルルに話しかける。
「長く休んでらしたけど、大丈夫かしら?」
一週間も休んでいると指示の上書きをしなければと焦ってアルルに近寄る。
「近寄るなっ!!お前が私を洗脳したことは分かっているんだ!!」
教室にいる生徒達が、私と距離を取ろうと2〜3歩離れていく。
洗脳が解けてしまった?
一週間やそこらで消えてしまうほど弱いものではないはずなんだけど、一体何が起こっているの?
私はケイナにみっともない所は見せないと心に誓い、クスクスと笑ってやる。
「私に近寄ると洗脳されると分かっていて近寄ってらしたのでしょう?」
「違うっ!洗脳なんて事を本当にするなんて思わなかったんだ」
「ケイナが嫌で私に近寄ってきたと思っていましたが?」
「それは断じて違う!!」
「まぁ。私は満足ですよ。あなた達が壊れただけでも」
「壊れてなどいない!ケイナと私は婚約者だ!!」
私はアルルのみっともなさに笑いが堪えられなかった。
「アルル、あなただけが壊れていないと思っているのよ。ねぇ、ケイナ」
ケイナを見やると平然とした顔を私に向けてきた。
腹が立ったが、アルルへの洗脳はまた後でなんとかしようと考え、目的は果たしているし、アルルはもう要らないんだと思い直す。
アルルと教室の全員の表情を見て大笑いして私は自分の教室ヘと戻った。
翌日、学校に行くと、十人以上の騎士が学校にいて、何か物々しさを感じさせた。
クラスの子達に何が起きているのか聞いても誰も分からず、授業は始まった。
教室になにか魔法を掛けられたことが分かり、全員がキョロキョロと周りを見回す。
口を開くが、声が出ない。
その事に驚いて喉を手で押さえる。
教室の扉が開き、騎士たちがガチャガチャと音を立てて入ってくる。
騎士たちは私の周りを囲む。
文句を言いたくて口を開くがやはり声が出ない。
触れて洗脳してやろうと掴みかかるが、素肌が出ている場所がない。
顔にも兜をかぶっていて素肌の露出部がない。
私はあっという間に縄に掛けられて教室から連れ出された。
文句を言いたいのに声が出ないまま馬車に乗せられ、王宮へと連れて行かれた。
広い広い部屋の中央に鳥の籠を模したものが設置されていた。
中にはベッド、お風呂、トイレが設置されているが、目隠しできるものは何もなかった。
籠の中に入れられ、扉が閉まり、ロープが引っ張られて籠に体をぶつける。
痛いと声を出したが、何の音も響かせなかった。身を縛っていたロープが切られる。
自由になった手を擦り、甲冑を着けていた騎士の一人が魔法を解除した。
「なんなの?!一体何?!」
何を尋ねても誰も何も答えず、出ていった。
何時間かたった頃、粗末な昼食を盆に載せ、扉を開けること無く籠の中へと差し入れた。
「一体何なの?!私をこんなところに閉じ込めて!許されると思っているの?!こんな粗末な食事食べられないわ!」
私が思いつく罵詈雑言を浴びせつづけたが、食事を持ってきた女騎士はこちらを見もせず、黙ったまま出ていった。
私は食事には手を付けず、そのまま放置した。
何も起こらずまた女騎士が食事を持ってきた。
食べなかった昼食が抜き取られ、夕食が差し込まれる。
「今のこの状況がどうなっているのか教えてくれてもいいんじゃないの!!何か言いなさいよ!!」
やはり何も答えてくれず、黙ったまま出ていった。
そんな日が十日ほど続き、五人の男女が入ってきた。
「あなたが洗脳した人々の名前を言いなさい」
「やっと話をする人が来たと思ったら何のことよ!!」
「あなたが洗脳の能力があることは分かっています。答える気がないのなら私達はここで失礼します」
そう言って全員が出ていった。
それからまた何日も朝と夕の二度の食事が運び込まれるだけになり、五日に一度お風呂の湯が運び込まれた。
その間に口を開く者は誰も居らず、私一人が怒鳴り立てているだけだった。
更に十日が経っても誰も何も話さないまま日は経っていき、私は降参した。
食事を持ってきた女騎士に「質問に答えるわ」と伝えると、女騎士は黙って出ていき、その日は誰もやってこなかった。
翌日、前回来た五人の男女がやって来て、同様の質問をされ、名前が分かる範囲を答えると皆黙ってしまった。
一人が書かれたメモを持って走って出ていき、別の誰かが新たに入ってきた。
質問されたことには素直に答えていく。
アルルを何故洗脳したのか聞かれたときだけは嘘をついた。
アルルなんかに興味はなかった。ケイナに屈辱を与えられて、おもちゃを作るのにちょうどよかっただけだ。
まさか、こんなところに閉じ込められるなんて思いもしなかった。
「私はここから出られるの?」
誰に聞いても私の質問には誰も何も答えなかった。
世間話の一言もない。
会話があるのは質問されたことに答えるときだけだった。
私に月のものがないことが発覚して、全身甲冑で覆われた人が籠の中に入ってきて、最後に医師の格好をした人が入ってきた。
甲冑に押さえ込まれた手と足に屈辱を感じ、医師が診察する。
甲冑姿の一人が「万が一医師に洗脳をかけようとしたら即死罪になると思え」と脅された。
私は震え上がって黙って首肯いた。
診察が終わると医師が洗脳されていないか確認され、全員が出ていった。
何もすることのない私は、私のおもちゃに話しかける。
「あなたは私のおもちゃ。人を恨んで憎みなさい」
毎日毎日お腹に向けて洗脳を深めていく。
洗脳が上手くいくのかどうか分からない。
初めてのことだし、生まれたら確認すればいい。
でもこの狭い鳥籠の中にメイドを入れて住まわせるのかしら?
それより私はいつまでここに入れられたままになるのかしら?
こんな所にいつまでもいるのはごめんだわ。
触れなくても洗脳できるように力を強めなければ・・・。
あまりの痛みに声を限りに叫ぶ。
この部屋の周りには誰もいないのか、誰も駆けつけてこない。
一定間隔に襲われる痛みにのたうち回る。
「痛い、誰か助けて!」
襲ってくる痛みにまた叫び声を上げた。
夕食を持ってきた女騎士が、私の叫び声を聞いても反応もしない。
「ねえ、痛くてたまらないの!!医者を呼んでよ!!くっぅっ!!」
夕食が差し込まれ、女騎士は出ていく。
暫くすると先程の女騎士がまたやって来て私の苦痛の間隔を測っているようだった。
黙ったまま出ていって、その夜私は一人で痛みにのたうち回り朝を迎えた。
朝食が運び込まれ、騎士はまた苦痛の間隔を測って出ていく。
私はもうただすがる思いで「助けて」と弱々しい声をかけたが、また反応すること無く出ていった。
この痛みの連続に自分の体に何が起きているのか分からず、怖くてたまらない。
痛みと恐怖に涙が止まらない。
何かが漏れ出るような感じがして、便意を催したように体が勝手にいきみ出す。
何度か繰り返すうちにいつの間にか医師と甲冑を着た騎士に取り囲まれ、手と足を広げた格好で籠に縛られた。
誰も何も話さない。
私のうめき声だけが広い部屋に広がっていく。
体の中から何かを排出した感覚があり、ペチンペチンと何かを叩く音が聞こえて赤ん坊の泣き声が聞こえた。
布にくるまれた赤ん坊が部屋から連れ出され、私はおもちゃを産んだのだと初めて気が付いた。
こんなに苦しいものなら作ったりしなかったのに!!
何故誰も教えてくれなかったのかと腹を立てた。
「私のおもちゃをどこにやったの?」
医師が一瞬顔を顰めただけで誰も何も言わなかった。
おもちゃを産んだ翌日、鳥籠から出ることが出来た。
出産で疲れた体は辛かったが、この部屋から出られることの方が嬉しかった。
体は縛られていたが、籠から出れただけで私は開放感を堪能した。
窓から見える空に感動する。
それもほんの僅かなことで、地下に連れて行かれる。
目隠しをされ、体を横たえられ、足を台に縛りつけられる。
「なに?!何なのよ!!」
聞いても無駄だとは分かっていたけど、目隠しまでされているのだ。
不安で仕方ない。
首の周りに木の枠を感じる。
「目隠しを外してよ!!」
初めて私の願いは叶い、目隠しが外された。
私は仰向けに縛られ頭上高くに鋭い刃を持つ物が浮いている。
刃の上部はロープに括られ、そのロープを視線で追うと騎士が握り込んでいた。
「あなたを生かしておくことは危険だと判断された。ご両親の嘆願と王の命令により断首を行う」
「嘘!いや!なんで!私が何をしたっていうのよ?!」
「あなたは人を操って好きに弄んだでしょう。酷いことをした自覚がないの?」
「私は何もしてないわ、ちょっと遊んだだけじゃない!」
ロープを握っていた人が手を離した。
Fin