第九章 オルデスト大陸
目を開けると、とても広い大地が広がっていた。
「どこだ…ここ」
見渡す限りが大地と岩の塊の集まりだった。
「お兄、あれ!」
振り向くと、神殿があった。
神殿というよりは、現世でいう教会のようなものだ。
その神殿は、遠くからみた感じではどこか古臭いような気がした。
「……ここは、オルデスト大陸だ」
「!知ってるのかよ」
「ああ、1000年ぶりだ」
ということは、前世の俺と来た場所なのだろうか。
「でも、何でお前はそんなに昔から…」
俺が質問しようとすると、悪魔が静かにしろと言った。
そして岩の塊に隠れさせられた。
「あれを見ろ、この大陸のある王の、右腕と呼ばれている」
ゴクリと生唾を飲んでしまった。
その王の右腕とやらは、馬に乗り、鉄仮面をしていて、おまけに後ろに100人はくだらないというほどの騎兵を連れていた。
「この大陸は、外界との関わりを断っている」
「そのため、見つかると厄介だ」
俺はこの世界がどういったものか、何となくわかった気がした。
「何で、武装してるの?」
妹が珍しく話した。いつも黙って考察する性格だった。
「…この大陸は同じ大陸内で二つの国が戦争をしているからだ」
この世界は、戦争中なのか…と俺は恐怖を覚えた。妹もそのようだった。
「でも、1000年もたったんだろ?なのに何で支配者の王だとか右腕だとかわかるんだ?」
「あの鉄仮面の男のことを俺は知っている、1000年前から、それだけだ」
「1000年間以上生きてるのか!?あの鉄仮面…人間じゃないのか?」
1000年以上生きているなんて悪い冗談だ。悪魔でもないと…
「あいつは、悪魔と人間のハーフだ、悪魔の生命力を持っている」
「悪魔と人間で、子供ができるんだ…」
妹はそう言って、けげんな顔をしていた。
「…この世界の鍵は何なんだろう」
頭の中で思ったつもりが、声になって出てしまった。
「とりあえずこの国の王に会う必要があるな、戦争に巻き込まれる暇はない」
空気が読めないのかという目で見られると思ったら、意外とまともな返答がかえってきて驚いた。
「この国の王って…そいつも1000年以上生きてる…とか?」
「正式には、この国の魔王だ」
何気ない顔で悪魔はそう言った。
「え!?魔王って最後の世界で…え?」
混乱する。どういうことかわからない。
「あらゆる世界に魔王は居る、大陸にも、それだけだ」
すぐ納得してしまった俺は、もう現実じゃまともに生きていけない気がした。
……いや、もとからまともではなかったのかもしれない。
「みてみたいなぁ、その国の王に会いにいこう?」
妹はほとんど語尾疑問形にする。
「ああ、だがその前に神殿に入るぞ」
俺が言いたかったことを悪魔は言ってくれた。
そして、神殿の扉を開けた、中は古びた教会のようなものだった。
しかし、人気もなく、何もないようだった。
その時だった。
「誰だ、貴様らは!」
振り向くと、あの鉄仮面だった。
短い人生だったな…とふと思ってしまった。
「…久しいな、黒騎士」
「!!…貴様、カオスか、なぜこのような場所にいる!」
やはり知り合いだったのか。と思った。
前の会話からわかっていたことだったが。
「1000年に一度の時が、今日でな」
きっと、悪魔がこの大陸に一緒にきてくれてなければ俺と妹は死んでいただろう。
黒騎士という鉄仮面の男は、今にも人を斬りそうな殺気を放っている気がした。
「わかっていると思うがこの大陸は戦争中だ、御遊びに付き合う暇はない!」
何という台詞だろうか、遊びなんかじゃない。
悪魔の言うことが本当なら、最後の世界で魔王を倒さないと世界は滅びる。
「さっさと、用を済ましたい、王に会わせてくれないか」
悪魔が本題にきりだしてくれた。こういうときは本当に助かる。
「……王に何の用があるというのだ」
「戦争に巻き込まれない為にも早急に用事を済ませたい」
「これは、大変急ぎの用であり、部外者に話すわけにはいかない」
悪魔がそう言った時だった、黒騎士が悪魔に斬りかかろうとした。
「貴様!我を侮辱しておるのか!!」
その時、後ろから銃声が鳴り響いた。
誰もが、背後を見た。
「…巻き込まれるのは嫌だったんだがな」
「冗談じゃねえよ…何だよあれ…!」
200メートル先ほどに、騎兵の大群が1000人はくだらないほど居た。