第七章 前世の自分と世界の地図、そして…
「こいつが…俺の前世…?」
俺は動揺を隠しきれなかった。
冷や汗がでる、目が震える。
「…久しいな、天野 猛」
「…そうか、ここは現世か」
俺の前世の人間、天野 猛は言った。
「久しぶりだな、カオス…と、俺か?」
前世の俺は、俺とは比べようにならないほど冷静そうだった。
「前世の…俺……」
続きを言おうとすると、前世の俺は言った
「何で此処にいま、呼び出した?カオスの術は一度しか使えないはず」
「緊迫した場面でもない、……どういうことだ」
悪魔は答えた。
「地図の在処だ、それ以外で頼ることは許されないからな」
俺には意味がわからなかった。しかし黙ってきいていた。
「なるほど、そういやそうだったな」
そう言って、前世の俺は微笑した
「俺が持ってるぜ、ホラよ」
そういって俺に巻物を投げ渡した。
「これが…地図…?」
俺は巻物を開けた。
「探す手間が省けたな」
悪魔が初めて微笑したのをみた。
巻物を開けると、地図がはりつけてあった。
「何だ、コレ?」
地図には1つの大陸が記されていただけだった。それも右端に。
「コレは世界の地図だ、パラレルワールドで別世界に移動するための場所の在処さ」
前世の俺はすらすらと言った。
「1つの大陸が記してあるだけだけど…」
おそるおそる言った。
「冒険して、鍵を集めるたびに地図に大陸が増えていく」
悪魔が答えた。
その時、前世の俺の身体が透けていっていた。
「何だ、もう時間か…」
前世の俺は悲しげな表情をしていた。
「いいか、仲間を探して、最後の世界へたどりつけ」
「困難な冒険になる、しかし、自分の力を見出していけ」
そう言って、前世の俺は完全に消えさった。
「…俺は…違う……俺の使命……」
前世の自分にまで言われて、気がついた。
俺は、絶対に最後の世界へたどりつかなければいけない。
…でないと、世界が崩壊する。
「その地図に記されている大陸に行く方法を教える」
悪魔は急に言ってきた。
「大陸の上に手をかざし、意識しろ、自分の存在を、世界を」
そんなことを言われても…といつもなら思っていただろう。
でも、今はなぜかわかる。
「地図を使わなければパラレルワールドの能力は真の力を発揮しない」
「意味のわからない世界へ飛ぶことを避けるために、地図を先人がつくった」
その時だった。
妹が、目覚めていたことに気付かなかった。
…あれだけまばゆい閃光がはしって、あれだけ話していたんだ、当然のことかもしれない。
「…カオス……」
妹は確かにそう言った。
さっきの話をきいていた?違う、今のは…確実に
悪魔を知っているかのようだった。
「…俺が目視できるのか、お前は…」
悪魔は驚いているかのようだった。
「後回しにしようと思ってたが、これは好都合だ」
「どうやら、前世の記憶が目覚め、理解できたらしいな」
「!? どういうことだよ、悪魔!」
俺は…もうわかっていた。
でも、直視したくなかった。 まさか…
――――妹が、選ばれし7人のうちの、一人だなんて。
「少し、ね、」
ありえない、信じれない。
選ばれし7人、つまり妹も…
――――パラレルワールドの能力者
「凪…いつから…」
俺はその時、ものすごく背筋が寒かった。
「さっき、閃光がはしったときに…前世の映像みたいなのが頭にはいってきて…」
「話をきいてて確信できた、自分がどういう人間なのかを…」
「これで2人、後の5人は別世界だ」
悪魔は知っているかのように…いや、知っていた。
…最悪だった。
冒険をする覚悟が少しできていた。
なのに、妹が…選ばれし7人のうちの一人
つまり、俺は自分の妹を巻き込む形に…してしまったのか?
避けられぬ運命だったのか、俺は、一緒に寝ようとしたことを後悔した。
これ以上の後悔と、災難が、これからどんどんやってくるかもしれない。
そう考えると、俺は絶望感にうちひしがれた気がした。
「お兄、どうしたの?」
妹にそう言われて気がついた
俺は、涙を流していた。