第四十四章 真の目的!?個別指導へ
俺はただただ目を見開いた。
術師を飛ばしたのは、ウェルデルトだった。
「てめぇ…!何のつもり――――」
遮るようにウェルデルトは言った。
「こうも早く真の目的を理解されるとは思わなかった」
「フン、俺からしたらやっと気付いたかというところだが…もう小一時間は過ぎた」
背後からカオスの声がした。
「死の行軍の真の目的は、蓮の種を飲んで体力が減り続ける中で丸一日限界の状態までの個別指導をするということだ」
「限界ギリギリを味わうとき、人間は予想外の力を発揮する…それをコントロールできるように身体に染み込ませるのが死の行軍」
まだ俺にはその言葉の意味が理解できていなかった。
「ならなんで…こんな遠まわしなやり方に!」
「お前達の知能をはかることも兼ねようと思っただけだ、もしあのまま続けていれば死ぬことになっていたが」
「じゃあ本題へ行こうか」
「本題…?」
「個別指導、悪魔神カオスが君を鍛える、あの術師は私…」
「勿論命懸けの全力勝負を限界までしてもらうよ、1日耐えるまで蓮の種は炎を出させ続ける」
それから少しして、本当に個別指導…一対一の戦いが続くことになった。
「言っておくが、俺は始めから全力で行く…お前も全力を出せ」
「俺は武器無しなんだぞ!?冗談じゃねぇって」
「――――そうか、ならイメージしてつくりだせ」
そう言ってカオスは白光している槍を構えた。
「行くぞ、構えろ」
そう言われて、俺が気付いた時にはもう目の前まで槍がきていた。
「――――ッ!!」
ギリギリで避けたが、頬が少し切れたのが自分でもわかった。
俺はとっさにイメージした、漆黒の剣を。
「!!槍に剣で挑む気か…面白い」
漆黒の剣はうまくつくれたほうだが、黒刀よりは短くて頼りがいを感じれなかった。
「全力でって言われたんだから、全力で行くぜ!」
俺は剣でカオスに頭から斬りかかったがあっさりと避けられ蹴り飛ばされた。
「全力がその程度ではないだろう?…使っていいんだぞ」
「…?何をだよ……!」
さっきからダメージをくらい過ぎたのもあるが、蓮の種のせいもあって体力がもう尽きかけていた。
「地獄の指輪…はっきり言うが、それはお前の主力の力に成り得る」
「大魔王の力を使いこなせるようになるのもこれからの戦いには必須だ」
飲まれるかもしれないし嫌だった。
それだけじゃない、自分から使う方法なんて俺は知らなかった。
その時、俺は油断していた。
「…興醒めだ」
カオスの白光した槍は俺のわき腹を貫いていた。
「嘘…だろ……?」
――――意識が遠のいていく。
――――その時、声がきこえたんだ。
――――――(俺の力を使わないといけないんだろう?)
――――――(安心しろ、俺はお前に死なれると困るからな…フハハハハ)
「ウガア゛アァ゛ァァ゛!!」
意識が乗っ取られたのか?
身体が乗っ取られたのか?
…どうやら後者のようだった。
「大魔王…目覚めたか!」
「俺を呼んだのは貴様だ…遊んでやるぞ」
大魔王はわき腹に刺さった槍を一瞬で抜き、その槍でカオスの左胸を貫いた。
「フハハハハ!!いいぞこの身体!久々に楽しめそうだ!」
大魔王はすかさず手に持っていた漆黒の剣でカオスの喉を貫いた。
「もう終わりか!?フハハハハ!」
大魔王は左手で光線を放った。
俺は何も感じないが、これは相当な一撃なのだろう。
――――地面が真っ二つに割れていた。
くそっ、もういいから身体戻れよ!
俺はそう思ってどうすれば飲み返せるか考えていた。
「…成程、左腕だけでそこまでの力とはな」
カオスの声がした。
カオスは完全に傷が再生していた。
「貴様…超速再生か、俺と同じ能力を持っているとはな!」
「――――だが左腕だけでは、不便だろう?」
何かが、大魔王の右腕を切断した。
正確には…俺の腕だった。
「…!この男…雄地の肉体を無くしたがるのか、力を増幅させる為に…!」
「雄地がお前の力を操れるようになれば問題ないだろう」
「……両腕でいいだろう、雄地に飲み返される前に精々俺が遊んでやる」
「貴様…今までで最高に面白い奴だ!!」
大魔王の右腕が再生した。
俺の身体…一体どうなるのか。
いよいよ、大魔王の力を知る事になる。