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第四十三章 死の行軍、開始

この種を飲め、飲んだ瞬間…開始ね」

俺と術師には蓮の種が渡された。

リングは勿論、前もって指にはめていた。

後はこの蓮の種を飲むだけで全ての準備ができる。

俺と術師は躊躇(ためら)いなく蓮の種を飲んだ。

すると身体が少しずつ暖かくなったような、温もりを感じた。

「開始だ、お互い全力でし合うことだ」

そう言って、ウェルデルトは消えた。


「…死して自身に残るモノは、肉体の残り粕だけだ」

カオスはそう言って、翼を広げた。

…微かに見える気がした、全力で突っ込んでくる様が。

俺はリングに炎を灯したが、そこであることに気がついた。

「な…!俺って武器持ってないんだった!」

「少し下がっててください!」

術師が俺の前に出るが、術師はうまく炎が扱えないようだった。

その証拠に、術師が炎でつくりだそうとした槍は、ぐねぐねに曲がっていた。

「炎が放出されたままだから…うまく扱えないようです……!」

炎を使いすぎるのは命取りであり、失敗は最も危険な行為だとわかった。


その時カオスが俺に向かって突っ込んできた。

予想通りとはいえ、あまりのスピードには絶句した。

カオスは俺の一歩手前で、少し回転して蹴りを俺の顔面に向かってしてきた。

早すぎて、俺自身が反応できたのは…左腕でその蹴りを止めてからだった。

「…!魔王の左腕をそこまで扱えるとはな」

「反射神経が良かったみたいだ!」

俺は左腕を動かしたつもりはなかった。

しかし反射条件のようなモノだと…その時は思っていた。

俺はなんとか炎をさらに放出するイメージをし、それを右手に溜めた。

その瞬間に術師が背後からカオス腹をぐねぐねの槍で貫いた。

「フン…肉を切らせて骨を断つという」

カオスはそう言い放った後、左翼で術師を吹っ飛ばした。

俺は驚いて、炎を放つという動作を忘れていた。

「この程度で動揺するのではまだまだだ」

悪魔は左腕に掴まれていた足を離し、俺を更なる蹴りで吹っ飛ばした。


「くそっ…!」

俺は吹っ飛ばされている最中にカオスに向かって炎を放った。

レーザーのようなものをイメージしたつもりが、炎の玉といった形だった。

その炎の玉を、カオスは右翼だけでかき消した。

そこで術師が言った。

「今の…幾ら風圧が強かろうと炎をかき消すなんて事はありえません」

「目視はできませんが…おそらく鎮静力(ちんせいりょく)を持った炎を宿しています」

「その証拠に…身体の動きが鈍くなっていますしね」

そう言われて俺も気付いた、身体の動作が鈍くなっていることに。

「察しがいいな、だが気付いても…何も抵抗することはできないみたいだな」

カオスの腹をよくみると、術師が槍で刺した傷が完全に癒えていた。

「それだけじゃありません…傷も癒えています、これは幻術ではない……」

「高速再生能力といったところでしょうか…恐ろしい力だ」

術師の察しの鋭さには俺が悲しくなるほどの何かがあった。

「その通りだ、不死とまではいかないが…かなり再生能力が優れている、臓器も再生する…肉体の再生速度よりは遅いが」

再生能力は反則としかいいようがない。

俺達の攻撃力じゃおそらく…傷を与えても、すぐに回復される程度だろう。


「そろそろ茶番は止めるか、お前達も全力で来ていいんだぞ」

カオスはそう言って、白光した槍のようなものをつくりだした。

「……己の内なる力に気付かなければ本当に死ぬぞ」

俺に向かって全速力で低空飛行してきた。

俺はすかさず動こうとしたが、身体が言う事をきかなくなっていた。

カオスは有無を言わず俺の心臓を目掛けて槍を突き刺そうとしてきた。

後数センチ…それだけの距離というところで、その攻撃を俺の左腕が止めた。

そこでようやく分かった。

この左腕は俺の言う事をきいていない、独自で動いていると。

「…どこまで動く!」

カオスは右翼で更なる攻撃をしようとしてきた。

流石に終わったかと思った時、身体が僅かに動けるようになっている事を感じた。

右翼で薙ぎ払おうとした攻撃を、俺はギリギリで避けた。

その時、カオスの動きが止まりだした。

左腕が勝手にカオスの持っていた槍から手を離した事によって、俺はかろうじて立ちあがり動くことができた。

「…どうやら間に合ったようです」

術師が死の指輪(デスリング)に紫色の炎と灯していた。

「もしかして、幻術にはめたのかよ…!?」

「ええ、なんとか…体力はかなり消費してしまいましたが」

「…どんな幻術にかけたんだ?」

「金縛りの幻術と言って、全身が動かなくなる幻術をかけたんです…時間稼ぎをしないと体力が持ちません…3日なんて、ありえないと思いませんか?」

「!…確かに、こんな修行で本当に力がつくのかも謎だけどよ、まさか嘘ってわけじゃ…」

俺の言葉を遮るように術師は言った。

「それです、本来…人間が持てる炎の量…つまり精神的な力ですが、それは限られています、普通の人が1日で尽きるならば、どれだけ持っても3日はいかないでしょう…」

「おそらくこの修行の本来の目的は----」

その時、何者かが術師を吹き飛ばした。


俺は唖然とするしかなかった。

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