第四十章 質問
重いまぶたをゆっくりと開くと、真っ暗な部屋に居た。
身体を動かそうとしたが、何かで手足を括られていて動けなかった。
「何だよ…これっ……!」
全身でモゴモゴと動こうとしても、ほぼまったく動けなかった。
「…起きましたか、やっと」
術師の声が聞こえた。
「デーモンか?ここどこなんだよ…」
「私にわかる事は…敵の隊長に捕まったということです」
7番隊隊長ウェルデレト…だったか。
そこで思い出した、敵の炎の技をくらい…それから意識を失ったことを。
「そうだ!悪魔…カオスは!?」
「…今は別部屋で…向こうの隊長と話し合ってるそうです、拘束されたまま……」
「とりあえず今ここに敵がいないなら…脱出しようぜ!」
俺はそこで気付いた、リングが無いことに。
指にリングをはめている感覚がなかった。
「この部屋…投影術すら使えないようです」
「冗談じゃねぇ…!何が何でも出るっ…」
幾ら力を入れても、手足を括っている何かを外すことはできなかった。
「力尽くで出るしかないですけど…この手足を括っている縄、特殊な魔術で強化されているようで、外すことがままなりません…!」
どうすれば出れるか。
そんなこと、へたれでバカな俺にはまったくわからなかった。
その時、どこかの扉が開いた音がした。
「元気か?…選ばれし者達」
ウェルデレトの声だった。
「身動きが取れないんです…元気なわけがないでしょう」
「随分と反抗的な発言だな、君達の命は私の手中にあるという事を忘れないでくれ」
「殺さず…手足括っておいて、何のつもりなんだよ!」
「君達にも、悪魔神にも、聞きたいことがあった…それだけだよ」
「いや、正確には君達にしかもう聞きたいことはない、質問に答えてもらう」
随分と趣味の悪いことだ。
悪魔ってのは…どいつもこいつもこういう奴なんだろうか。
「暗闇の中で…質問にだけ落ちついて答える事なんて出来ません、せめてあかりを…」
「君は…いや、どちらとも脱出を考えているだろうが、それは無理なことだよ」
そう言って、カチッという音がきこえたと同時に、部屋中が明るくなった。
ウェルデルトは、あの時持っていた白銀の剣を腰につけていた。
…警戒されているのは当然のことだが。
「さて、質問を始める」
「ちょっと待って下さい」
「…何だ?君はさっきから好奇心旺盛だな、何か良い事でもあったのか?」
「……どうせ殺されるのに、質問に答えると思っているのですか?」
術師は喧嘩腰というより、挑発というより…何か、気になることが他にあるようだった。
「大丈夫、質問にだけ…全て正直に答えてくれたら殺しはしない、正確には…まだまだ殺しはしないというだけだが」
「いいから、質問だけ早くしてくれよ…」
思っていた事がつい口に出てしまった。
術師がこいつは…という顔でこっちを見ていた。
ウェルデルトは少し微笑していた。
「なら一つ目の質問だ…最近怪しい組織がとある裏で活動している…知らないか?君の兄も入っている組織なんだが」
その時思わず絶句してしまった。
まさかここで俺の兄貴の話しが出るなんて、一番意外だった。
それに何で俺の兄貴の事を知っているのか…
「なんか…変な組織っぽいのはわかるけど…それが何なんだよ」
「…いや、この質問はいい、次の質問」
「君が持ってた地獄の指輪…これ誰から受け継いだ?」
「…別世界の、とある魔王から」
一体何が本当にききたいことなのか。
いきなり次はリングの話になるなんて…
「じゃあまた次の質問…その左腕、何なんだ?」
「地獄の指輪の…中に居る大魔王の左腕、悪魔の腕らしい」
「…!それいつの大魔王かわかる?」
「知らねぇ、まだ1回しか話したこともないし」
俺がこの腕のことを知りたいぐらいだった。
「フン、じゃあ最後の質問だ…」
随分とウェルデルトは溜めて言い放った。
「…大魔王サタンを…悪魔神ハデスを、倒したいか?」
――――急展開へ。