第三十九章 隊長格の力
外へ出てみると、無惨なことになっていた。
辺りで木々が倒れ、焼け野原になり、その中で戦いをしていた。
「主力部隊とはどこに?」
「南から中心まで…ここまで早く攻め入られているということは、この辺りだということは間違いないだろう」
いつ、敵が自分を狙ってくるかわからない。
辺りを警戒しつつ、少しずつ慎重に足どりを進めた。
「30cmほどしゃがみこめ」
悪魔がそう言った時に、火の塊が飛んでくるのが見えた。
間一髪というところだった、もう少しで顔面に直撃。
「…何で、攻撃がくるってわかったんだよ」
「少しは風の流れをよめ、まだまだくるぞ」
「ハイ……?」
そう言いつつ、横を見るとたくさんの火の塊が飛んできていた。
「あぶねええええ!!」
俺は猛スピードで前方へ走って逃げた。
悪魔と術師は普通にかわしていた、これがまたムカツクことだ。
「何してんだよ!早く逃げねぇと…」
俺がそう言い放った時、ドンッと音をたて俺は何かにぶつかった。
「ん……?」
振り向くと、背丈が2mほど軽くある悪魔がいた。
「此処に人間がいるということは、君が選ばれし者か」
意外と、悠長にそう言い放った。
冷静そうだ、と一目で判断ができた。
「…君に此処まで来た栄誉を称え、私の最高の一撃で屠ろう」
悪魔はそう言って、白銀の剣を空高く翳した。
俺は動けなかった、そいつの眼…まるで俺に金縛りを与えたかのようだった。
「さようなら、来世で平穏に過ごせる事を祈れ」
剣をおろしてきた、猛スピードで。
死の直前になると、ゆっくりに感じるのもわかる、なんて矛盾だろうか。
――――ギンッ!!
ああ、死んだ…
そう思った時には、白銀の剣を悪魔…カオスが素手で止めていた。
「これは…何と懐かしき顔か、悪魔神カオス」
「久しいな、お前が戦場におもむくとは余程のことだな」
そう言って、カオスはその悪魔を蹴り飛ばした。
正確には、相手はギリギリで腕で止めており、少ししか飛ばなかった。
「…私は7番隊隊長ウェルデレト、改めて宜しく頼む…反逆者よ」
相手はそう言い、カオスに斬りかかった。
「冗談にも程がある」
悪魔ウェルデレトと悪魔神カオスは対等の勝負を繰り広げていた。
術師は後方で火の塊を放ってくる敵を遠距離から攻撃していた。
俺はカオスに加勢するしかないと考え、イメージをした。
…相手を拘束するイメージ、鋼の鎖で。
悪魔の指輪に炎を灯し、投影した。
悪魔ウェルデレトの肩や腰や足や、ほとんどの部位が鋼の鎖で止められた。
「…あれは悪魔の指輪!此処まで出来るとは油断した」
「一回目の死亡だな」
カオスは黒炎で相手を攻撃した。
どうなったかはよくわからなかった。
「…隊長って、言ってたけどあんなもんなのか?」
「隊長格は今の俺より皆遥かに強い、それぞれが凄まじい特異能力を持っている」
「ウェルデレトの場合は……」
「覚えてるようだな、私の能力を」
悪魔ウェルデレトの身体が、高速で再生していた。
「選ばれし者よ、覚えておくが良い、私の能力は…不死だ」
「不死身って…!?ありえないだろ…!」
「正確には、自身の炎の力で何度でもよみがえる能力だ」
つまり回復術の中でも、最も優れた能力といったところか。
「さて、修羅場というべきか…今の状態でこいつを倒すことはやはり不可能だ」
「その通り、潔く死を認めることも時には必要なこと」
ウェルデレトは左手を前に翳し、何か力を溜めているようだった。
「まずい!炎でガードしろ!」
「へ……?」
その時ウェルデレトの左手から、莫大な量の炎が出てきた。
これは護りきれるレベルじゃない。
「くそ…!」
悪魔が俺の正面にたって護っているのが少し見えた。
そこからは記憶が途切れていた。