第三十六章 神との面会
「では、神のもとへ参りましょう」
さっきの門番…兵は、力を試すためのものだったのだろうか。
急にふとそんな気がした。
「あの…神なら何でも知ってますか?」
「知りたいことは、神に面会してから直接きいて下さい」
そう言って天使は黙々と歩き続けた。
術師も、悪魔も何か考えにふけっているようだった。
辺りを見回すと、小さな子供から大人まで、皆笑顔だった。
天界は、とても平和な場所なんだと一目でわかる。
とても広大で、端が見えないほど広い土地に
たくさんの人々、家も転々とあった。
「……大魔王サタンが復活しているのは御存知か?」
悪魔がやっと口を開いた。
「…今年で1000年目、今から徐々に力が戻っていくころでしょう」
「そのことで疑問視することがある、大魔王サタンは力が3割戻っているといっていた、現に現世を瞬く間に滅ぼした」
「!…そこまで力が戻っているのですか?予想外に早い回復ですね…」
ここで選ばれし者のことも、大魔王サタンのこともわかるのだろうか。
謎が多すぎるから、少し不安だった。
それに妹のことも…
「今までこのようなことはなかった、それに…復活した姿は完全体のようだった」
「?どういうことですか…完全体は完全に力が戻ってからしか…」
「仮に…本当に3割の力であの姿に戻っているということは、何か新たな力をつけたようだ」
「それに、N人間という新たな人種まで…いや、人間を強化してつくりだしたようだ」
「…厄介ですね、とにかく神にこの事態を知らせることも優先させてもらいます」
「無論だ…それより神は元気なのか?」
なんなのだろうか、この会話は。
術師も俺もついていけない、というか術師は何を考えているのだろうか。
しばらくすると、神がいるという場所についた。
宮殿のようだった、とても広くて綺麗だった。
「少々お待ち下さい」
そう言ってラファエルは宮殿の中へ入っていった。
「なぁ、お前さっきから何考えてんだよ」
「いえ…天界があまりにも素晴らしい場所すぎて、驚いているだけです」
確かに素晴らしい場所だが、術師がそんな事に感心するとは思えなかった。
「先に言っておく、神の前で失礼な態度をとるな、側近達に殺されかけても俺は助けない」
「ええ、わかっています」
…黒騎士の話を思い出した。
神はこの悪魔の愛人だといっていたことを。
それがどうにもひっかかっていた。
その時、ラファエルが戻ってきた。
「大丈夫です、入って下さい、私は半歩後ろからついて参りますので」
俺達は宮殿の中へ入った。
そこも中は真っ白な空間だった。
本当に何も無く、少し不安を覚えた。
「お久しぶりです」
声が聞こえた。
とても美しい声だった。
しかし、どこか幼さを感じた。
「…久しいな、急に訪問して済まない」
「それが貴方達の使命ですから、気にすることはありません」
神の全貌があらわとなった。
術師も俺も目がとびでんとばかりに驚いた。
…神は見た目が12から14歳ほどだろう、子供だった。
白い肌に、美しい黄色と白色が混じった髪。
本当に神なのか、そう疑ってしまうほどだった。
「初めまして、選ばれし者方…どうぞ、気楽になさってください」
神はそう言ったが、少し後方に側近が居るのがわかった。
「では、本題へ参りましょうか」
「相変わらず鋭いな、しかしその前にきかなければならないことがある」
本題が何か気になったのに…そんなこととても言えなかった。
「…そちらの方の、妹さんのことですね?」
「その通りだ、居場所…わかるか?」
どこまで鋭いんだ。
そう思ったが、神ならば…と思ってしまう。
今までの戦いも全て見てきたのだろうか。
なら、この左腕のことも教えてほしいな、なんて…
「別次元にいるようで…私にも探しようがありません、しかし…」
「そちらの方の兄が連れ去った、ということはわかります」
やっぱりそうだったのか。
護れなかったことが悔しくて、後悔の念にかられた。
「…あいつはかなりのつわものだった、何者かわかるか?」
「そうですね…何かの組織が裏で動いているようです」
「私の予言の力でもそこまでしかわかりません…」
予言の力…なんか、物語の定番っていう感じだ。
しかし、これはアニメやドラマじゃない、本当のことなんだ。
「本題へ移ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、本題…言わなくともわかっていると思うが…」
「大魔王サタンについてだ」
いよいよ、大魔王の謎が明かされる。