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第三十三章 飲み返せ

「選ばれし者等といっても、愚かな…人間の集まりだ」

「お前はそれでも俺の弟だ、楽に始末してやる」

兄貴はそう言って、刀を構えた。

白い刀だった、黒刀とは真逆…白刀というべきか?


本当にまずかった。

自分の思い通りに体が動かない。

それだけじゃなかった。

地獄の指輪(ヘルリング)に宿る大魔王に飲まれたらしい。

「…大魔王は目覚めさせてはいけない!飲み返せ…!」

「大魔王…相手にとって不足はない、いくぞ」

飲み返せと気軽にいってくれるが、俺に残った感覚は目視することと聞くこと。

それだけしかなかった。

「武器すら持たぬとは、愚かだ」

兄貴は白刀を振りかざしてきた。

高速といってよかった、目視がギリギリだった。

俺…いや、大魔王は左手一本でそれを止めた。

「…炎を纏っていないとはいえ、この剣を止めるとは…」

大魔王は残った右手で、黒い塊の炎を溜めていた。

「…この程度で俺を止めれたと思っているのか?」

兄貴は刀を持った右手でリングの炎を使いだした。

急に刀は黄色の炎を纏い、たちまち大魔王の左腕は切れた。


しかし、俺には痛みがなかった。

…完璧に俺はコイツの中に居る。

「黄色の炎…雷による硬化か…」

「察しが良いな、珍しいだろ、だが俺の真骨頂は雷じゃない」

大魔王は悪魔と兄貴が話している間にもためらわず右手からレーザーを放った。

「左腕が切れて…動じないのか…いや」

悪魔がそう言った途端、大魔王に新しく左腕が生えた。

しかし、それは…まるで悪魔の腕だった。

俺の腕じゃない、途端に俺は恐怖を覚えた。


レーザーが放たれた爆炎の中から、兄貴が雷に纏われてでてきた。

「…炎がなかったら死んでいたぞ、やってくれる」

「!!…その腕……大魔王が目覚めてきたか…趣味が悪い」

このままどうなる…俺は?

死ぬのか?

飲まれたら一生このままか?

…コイツを飲み返す方法はないのか?

……悪魔が飲み返せと言っていた。

方法がある…そう言っているようにしかきこえない。

どうやったら飲み返せる?

…あの時俺は体力が限界にも関わらず炎を出そうとした。

普通なら死ぬ場面…そこではめていなかったはずのリングに魂を…


俺は何となくわかった気がした。

地獄の指輪(ヘルリング)を目覚めさせる方法…

それは、自身の魂を受け渡すことじゃないか?


それなら合点がいく。

あの時俺はなんとしても戦いたかった。

力が欲しかった。


ならばどうすれば飲み返せる?

こうして考えているうちにも大魔王と兄貴は戦う。

おまけに俺の体は…左腕がすでに悪魔の腕となっている。

冗談じゃない、早く飲み返さないと俺が俺じゃなくなる。

…どうすればいい…どうすれば……?


その時、声がきこえた。


(力が欲しいと…戦いたいと願ったのは貴様だろう?)

…誰だ?……お前は…?

(貴様が俺にすがってきたも同然、俺はお前の願いをかなえた)

(…この大魔王の力を、貴様が願ったのだ)

…確かに力が欲しかった。

でも、違う。

俺が求めたのは、自身の力。

体力切れとか、そんなくだらないことに屈する自分が嫌だった。

逃げてばかりの自分が嫌だった。

…俺は過去を否定していることになる。

それは今の自身を否定することにもなるだろう。

でも、人が変わるのに遅いことなんてない。

強くなりたい、人間として…そう思ったんだ。

(…貴様にいくら覚悟があろうと、力がないだろう)

…そうだ。

でも、違うだろ?…違うんだ。

仲間がやられてる、その相手に勝てない。

だからって見捨てるのか?

どうせ他の人がやるだろ。

そうやって逃げるのか?逃げていいのか?

それが…人間の在る姿でいいのか?

男に生まれたからには、やらなきゃいけない時がある。

俺は、たとえ自分がいくら弱かろうと…

護るべき者…使命の為なら戦う。

(…覚悟は立派だ……俺はこのリングの中にずっと宿ってきた)

(お前のような奴に巡り合えるとはな…面白い)

(男なら!自分で命懸けで戦え!…だろう……じゃあな)


気付くと、自分の体に意識があった。

…ありがとう。



兄貴は俺にむけて雷の玉を放つところだった。

…体力が戻ってる。

左腕は…まぁ、仕方ないだろう。


今の力なら、勝てる。

…俺はイメージした。

黒い塊の炎。

あれなら勝てる。


「…さよなら、兄貴」


ドオオオオオオオオオオオン!


爆風爆炎で、たちまち周りは火の海になった。


俺の体を悪魔が抱擁してくれた。

「…飲み返せたのか、よくやった」

「……妹は…?」

「今デーモンが探知してる…ここから離れるぞ」


兄貴はどうなったか。

もう気にしないことにした。

…兄貴は敵だった。

それだけ。


妹探しに戻る。



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