第二十九章 油断禁物
「悪魔、天叢雲剣に！」
「…いや、こいつ相手に剣は相性が悪い」
どういう意味なのかきく前に、相手が襲ってきた。
「おほほほほ！隙あり！」
相手は拳に炎を纏い、殴りかかってきた。
「しまっ…！」
ギンッ！と高い音が鳴り響いた。
反射的に目を閉じていた俺は、目をあけた。
すると術師が槍に炎を纏い、拳を防いでいた。
「お前…」
「戦い中に目をそらしてはいけませんよ！」
「邪魔をするな！」
魔王は拳で次々と術師を攻撃していった。
槍には少しずつヒビが入っていった。
「くっ…！」
とうとう槍が折れた。
「これでお前はお終いだ」
術師は魔王に左頬を殴られて吹きとんでいった。
しかし、妹のバリアのおかげで少し衝撃がマシになったようだった。
「拳相手では…速さが段違いのようですね」
「拳には拳が一番だろう」
悪魔が俺を呼び寄せた。
「何だよ！俺は素手でなんてゴメンだって！」
「案ずるな、俺が拳になる」
まだ、その時は理解できていなかった。
「ほらほら！油断するんじゃない！」
魔王はまたもや殴りかかってきた。
「悪魔！何か武器、武器！」
すると悪魔は手袋サイズのグローブに変身した。
「え…？……何コレ」
「俺を手に装着して炎を纏わせて戦え！」
魔王はもうすぐそこまできていた。
「お終いだ！！おほほほほ！！」
ドーン！と爆発音がなった。
「…何だ？」
俺は本能的に相手の攻撃を受け止めていた。
（今が隙だ！叩きこめ！）
「いい加減っ…邪魔なんだよ！」
俺の右手に少し痛みがはしった。
俺は、拳に炎を纏わせ相手を殴りとばしていた。
「見事です！」
「お兄、後ろ！」
なんとなく、後ろから殴りかかってくるとわかった。
俺はすかさずしゃがみこみ、殴りをかわされた反動で少し前へいく魔王の腹に
左手で一撃をくらわした。
「ガハッ…！」
（いいぞ、もう一発いけ）
相変わらず悪魔は鬼だ。
しかし妥協する暇もない。
「じゃあな！」
ドーン！と衝撃が鳴り響く。
手ごたえはあった。
煙が邪魔で、何も見えなかった。
（気をぬくな、まだ終わっていない可能性もある）
「…やりましたか？」
「わかんねぇ…煙が邪魔で何も……」
その時、俺は腹に背中に激痛を感じた。
気付くと吹っ飛んでいた。
「くそっ…！」
口から血が漏れた。
初めて…だった。
「お兄！」
「おほほほほ！！油断してはいけないと言ったでしょう！」
吹きとんだ俺は、何とか着地し、声がきこえた方向を見た。
すると、10mはあるんじゃないかという巨人がいた。
「な…なんだよ…こいつ変身できたのか…！？」
「ありえない大きさです…！これは……」
（…忘れていた、こいつは巨大化ができるんだった）
忘れてた…そんな言葉ですまされる問題じゃない。
おかげで背骨がいかれたんじゃないかと思った。
「久々に！楽しめそうです！おほほほほ！」
（…！いかん！元に戻る！）
悪魔はグローブから通常の状態に戻った。
「今度こそ本当のお終いだ！」
魔王は口に炎を溜めこんでいた。
「…あれは！何か撃つようですね…！」
「何かなんてレベルじゃない、あれを相殺する…バリアを張っていろ！」
悪魔は右手にとてつもなく邪悪な波動を溜めていた。
なんて禍々しい波動だ、もちろん魔王のほうも…
「はあああああっ！」
魔王が口からレーザーのようなものを放った。
「どうなるか…！」
悪魔はレーザーに向かって手からレーザーのようなものを放った。
ドオオオオオオオオオオオオオン！
とてつもない爆音が鳴り響く。
自分の身体が吹き飛んでいくのを感じた。
