第二十七章 北へ
「結局、キーは何なんだよー…あー腹減った」
街にむかって歩いていた。
お腹がすきすぎて、ぼやくことと歩くことだけしかできなかった。
「鍵となる部分、私にも予想はできませんね」
「この大陸は今は平和なほうですし、支配者がいるわけでもありませんから」
結局この術師は選ばれし者なだけであって、何か答えを知っているわけでもない。
「おそらく昔のことと何か関係があるのだろう」
「…そういえば!この地図はともかく、誰がキーなんていう面倒なことを…」
さえぎるように悪魔は言った。
「神だ、神が与えし試練といってもいい」
「……腹減った」
神とは結局何なのか、とりあえず腹ごしらえが先か。
「そろそろ街につきます、お金を準備しましょう」
「…幻術でつくるって言ってたっけ?」
「その通りです、少しのお金ぐらいなら、実体化させるのはたやすいです」
便利なものだ。でもこれは現世じゃ使ってはいけない魔法っていうか…
術師は見事にこの世界の通貨をつくってみせた。
「…ここまでリアルとはな、俺でも幻覚と見破れんが」
「このリングはそれほど強力なもののようです」
しばらくして、街へついた。
「飯屋どこ~…」
「あそこの店に入りましょう」
読めない文字の店だった。
腹が減っていたので気にせずに入った。
「……4名様ですね、こちらの席へどうぞ」
店員は、悪魔を見て少し困っていたが。
なぜかすんなり通してくれた感じでもあった。
「…その姿じゃある意味不便だな」
「現世以外ならほとんどの世界で悪魔が存在する、大丈夫だ」
…現世以外のほとんどってことは、現世はよほど珍しいのか。
飯を食べ終わった俺達は、外に出た。
「さて、これからどうしましょうか…」
「キー探ししないといけないんじゃないかな…?」
「その通りだ、大体キーの予想はついた」
「え!?なになに!」
「……1000年前のこの大陸でのキーを思い出してな」
「1000年前のキーは、支配者である魔王を退けることだった」
「……だからなに?」
察しが悪いといった目で皆が見てきた。
「その魔王は退けたということですね?しかしまだ生きている…とか?」
「その通りだ、おそらく生きている、この大陸のどこかで…探してみる価値はあるだろう」
「え!1000年もこの大陸にいて、んで…復旧してきたのに、まだ支配されてないってことは…」
「…お前の言いたいことは、この大陸にはもういない可能性が高いということだろう」
「しかし、それ以外に何も思いつかない、とりあえず探してからだ」
…冗談じゃなかった。
魔王を倒すことがキーだとしよう、これほど面倒なことはない。
「この大陸は広い、どこにいるか…そんなことの予想はまだつかない」
「つまり情報収集ですね」
「その通りだ」
…さっきから術師ばっかりが答えてる気がした。
俺の察しが悪すぎるのだろうか。
「では、その魔王の容姿…昔のでいいです、わかりますか?」
「…わかるが、何が目的だ?紙に描いて探すことはさすがに無理だぞ」
「念写します」
「え…ネンシャ?無理だろ!そんなんで位置わかったら…」
しばらくして呆気なくできたのであった。
「………」
「位置はこれでわかるのか?」
「ええ、まかせてください…とりあえず北ですね」
「北へ10kmほどです!近いですね…クク」
近くない、こいつは10kmを何だと思っている。
そう言おうとしたときに妹は言った。
「飛んでいったらすぐだね~」
…まさにその通りだった。
「行くぞ、この大陸でちまちまするわけにもいかないからな」
おそらく悪魔も現世が少し気になっているのだろう。
リングに炎を灯し、翼をつくった。
「よし!前よりうまくなってる」
…言った途端にしらけた。
「で、では北へ飛びましょう、私についてきて下さい」
北へ、北へ、魔王を探し出すために飛ぶのであった。