第二十四章 ユーノス・レディル街
「どこだ、ここ?…予想外に平和そうな場所だな」
「…現世どうなったんだろ?」
妹はただただ不安だったようだ。
「…今は、大丈夫と思うしかない」
あの時、空間が滅びる感覚がわかった。
おそらく、宇宙の中から地球という惑星が
跡形もなく消えたのだろう。
理解したくはなかったけど…
「ここは俺も知らんな」
「!!悪魔、何であの時逃げ…」
さえぎるように言った。
「あのままだと空間ごと俺達が滅びていた」
現世が滅んだ、そう言っているのと同じだった。
「…そんな…家族も…友達も…みんな……?」
「今は無駄な事を考えるな、あれを見ろ」
悪魔が指をさしたところを見てみると、遠くの方に
かすかに街のようなものが見えた。
「とりあえずいこうよ、ここがどんな場所か知るためにも…?」
「……わかった、あそこに向かっていこう」
数時間ほど歩くと、確実に街が見えた。
「スゲー…意外とでかい!」
「綺麗な場所だなーここ…」
「ここまで平和そうな世界は見たことがない、おそらく何か影があるな」
「そこまで深く考えなくても…街についたら一休みしよう」
そして、街についた。
沢山の行商人や、子供が居た。
綺麗な土地とは裏腹に、子供たちは貧しそうだった。
「…あ、あの、すみません、ここってなんていう街なんですか?」
「ん?ここはユーノス・レディル街だよ」
「ここを知らないとは変わってるなー嬢ちゃん」
そう言って、行商人は歩いていった。
「…とりあえず、宿か何か探そうか」
「……」
悪魔はずっと無言だった。
というか、この街は悪魔が歩いていても何も思わないのか。
その時だった。
「止まれ!!そこの貴様、何者だ!」
一人の…兵士だろうか、鎧をまとった男が悪魔に槍をつきつけた。
「通りすがりの悪魔だが、いきなり槍を向けるとは物騒だな」
「通りすがりの悪魔…!?ふざけているのか!」
やっぱり悪魔は特殊だったようだ。
兵士以外は気にしていなかったようだった。
「何だ?この街は…城も何もないようだが、何故兵士が居る」
「当たり前だろう!街を護るのが警察のつとめ!」
…これが警察か、と思った。
確実に妹も思っていたのだろう、表情は何か衝撃的なものを見たようだった。
「警察…?警察がそこまで武装とは、あいにく俺はこの街に初めてくる、悪さを犯すつもりはない」
「口では何でも言える!貴様…どこから来た!」
「遠い世界からだ、先を急ぎたい、邪魔をするな」
「ふざけた事を…!署まで――――」
ドスッ!と鈍い音がたった。
悪魔が気絶させたようだ。
「面倒だ、こういう輩には眠っていてもらうのが一番だ」
「ははは…」
苦笑いが止まらなかった。
「ぁ、あれ宿じゃない?」
「ん、おお!休んでいこう!」
「…この世界の通貨を知らん」
それは言っちゃダメだよ…
そう思いながら、ため息をついた。
「そろそろ暗くなってきたな、野宿する場所を探すぞ」
仕方が無かった。
「はー…結局何なんだよこの大陸…」
それから歩いても歩いても、同じ場所に戻ってきた。
「んー?…何だ、さっきからループしてる気が…」
「おかしいねー、まっすぐ歩いてるのに?」
「…平和そうだからと油断していたな、まんまと幻術にかかっていたようだ」
「え…!?誰が…?」
「相当なレベルの術師だ、油断していたとはいえ、ここまで惑わすとは」
「ごめいとうですね、貴方達にはここで消えてもらいます」
「!!…誰だ!?」
振り向くと、長髪で、冷酷な眼をした人間が居た。
「名乗る程の者ではありませんよ」
そう言って、リングから紫色の炎を出していた。
「…あのリングは…まさかな」
「やるっていうのかよ…こんな街中で!」
新たな戦いが幕をあける。