第二十二章 悪魔の力
「幾ら貴様が悪魔神でも、俺にかなうことは無い!」
そう言って、N人間はどこからか
リングを出し、右手人差指にはめた。
「…ほう、死の指輪か」
「実は俺は幻術師が嫌いでな…」
さえぎるようにN人間は言った。
「さっさと始めるぞ!」
そしてリングに黒い炎を灯した。
「…術師は殺したくなる」
悪魔はそう言って左手をN人間にむけてかざした。
「何をしようとしているのかしらんが、俺に貴様の攻撃が届くことは無い!」
その時悪魔はかすかに微笑した。
「…悪いな、もう攻撃は届いている」
「!?何を言っている…!まだ何も――――」
N人間がそう言った瞬間だった。
N人間の身体が何かに吹き飛ばされた。
「な…何だこれは…!」
「…俺を甘く見たな、俺の能力をきかされていないのか」
N人間は別世界の魔王より強いと言っていた。
…ハッタリだったのだろうか、悪魔が圧倒的だった。
「能力だと…!」
N人間はリングから炎を噴出し、見えない何かから逃れたようだった。
「俺にもイメージを具現化する力がある、考えたらわかることだろう」
N人間は幻術で5人に分身した。
どれが本当のN人間か、リングの炎で少し調べようとしたが
俺とN人間は距離があきすぎていて無理だった。
何より、悪魔とN人間の戦いに手を出すことは
俺にはまだまだはやいように感じた。
「…中々の術師のようだな、5人の分身を容易くあやつっているようにうかがえる」
「N人間をなめるな…!」
5人のうち3人が悪魔に向かって突進していった。
残りの2人は手を手を合わせ、何か黒い塊をつくっていた。
「片腕で十分だ、お前こそ俺をなめるな」
そう言って悪魔も左手から黒い塊をつくった。
――――死を味わえ
悪魔がそう言った瞬間に
悪魔の左手から黒い光線のようなものがでた。
とても禍々しいものだった。
「これ…は……!!うおおおおおおおおおお!!」
N人間5人に直撃したようだった。
「すげぇ…こんなに強かったのかよ…」
「当たり前だ、悪魔は人間とレベルが違いすぎる」
「…といっても、最後の力を振り絞って逃げたようだな」
「!?完全に直撃してただろ?」
「後ろの2人がつくっていた黒い塊を瞬時にあてて少し軌道をそらしたようだ」
…俺とは見解のレベルすら違った。
なんて遠い距離なんだろう。
「へえ、やっぱり強いな、これはもう俺が手を下そう」
大魔王サタンの声だった。
「!…力も戻っていない魔王に何ができる」
「そうかっかすんなよ、すぐ終わらせてやるからさ」
「…この程度の世界なら、容易く滅ぼせる」
大魔王サタンが黒い空間から出てきた。
…ホログラムではなかった、完全に本体だとすぐわかった。
とても禍々しい殺気、オーラが出ていた。
目を合わせていないのに、自分が狙われるような感覚。
一歩でも動くと殺されるような…そんな気がした。
「俺の力も3割は出せる、悪魔神といえどその力には逆らえない」
「…何をする気だ」
「言っただろ?すぐ終わらせてやるって、この世界を滅ぼす」
「させると思うか?」
「邪魔できると思うか?」
悪魔が右手を構えた瞬間だった。
――――これから世界は闇へ向かうんだ
――――闇地獄
世界を闇が包むかのように
完全に真っ暗になった。
「くそっ…!全力でリングからバリアを張れ!!」
「!!」
世界は滅亡へむかう。