第十六章 宣戦布告
「うっ…」
目を覚ますと、修行の間で倒れていた。
「…ようやく目が覚めたか」
黒騎士の声だった。
「……俺は…?どうなったんだ…」
「黒壁から抜け出すが為に全精力を使ったのだろう」
「…もう少しで、我も貴様も死ぬところだった」
思い出した。
リングに全ての力を込めた。
全ての力を使いきるということは、死ぬ可能性があることだった。
「…そうだ!悪魔は…凪、俺の妹は!?」
周囲をうかがっても見当たらなかった。
「安心しろ、魔王様のところへ戻っている」
「我らも戻るぞ、いつ戦争が始まってもおかしくはない」
それから、数十分で魔王の居る王室へついた。
「やっと帰ってきたか、待ちくたびれたぞ」
魔王は少し御立腹のようだ、それほど長く眠っていたのだろうか。
「申し訳ございません、して、戦況は…?」
「未だ始まっておらん、カオスと…凪嬢に今戦場へ向かってもらっている」
「そなたらも、早く向かうことだな」
悪魔と凪はもう行っているのか…
凪の修行の成果が心配だった。本当に大丈夫なのか。
「はっ、行くぞ、雄地とやら」
とやらは余計だっつーの…っと、行くか。
そして数時間ほど馬に乗り、戦場の砂漠へむかった。
幸い、おとなしい馬で、簡単に行くことができた。
「やっとついたか、いよいよだぞ」
「お兄、遅いよー」
…最前線には、敵兵が数十万はいた。おそろしい。
「悪い悪い…何で待機してるんだ?敵と向かい合わせになって」
「今にわかる、戦争がどういうものか」
黒騎士は、敵と同等の数の兵を従えていた。
ブブブッ ブツ
「あーあー、こちら、ゼノン帝国!戦闘指揮官の白騎士である」
「これより、ベネジスト帝国へ宣戦布告をさせてもらう!」
…白騎士?黒騎士…白騎士…何か関係があるのだろうか。
「長きに渡る!因縁の決着をつける時がきたのだ!!」
ぐだぐだ言いやがって、としか思えない。
「…因縁の決着と言ったのは、これで何回目だ?」
「とうに100回を超えている、カオス、貴様といえど無駄口をたたくな!」
いよいよ緊迫した場面、か…魔王はどこにいるのやら。
「ゼノン帝国兵一同!一斉にかかれ!!」
「ベネジスト帝国兵一同!かかれ!!」
何の戦略も無しなのか…?これほど酷い場面はないだろう。
両軍が一斉に突っ込み合う。
「さて、俺達は魔王を探すためにこの戦況を突き進み…」
「ゼノン帝国へ行く、ひたすらまっすぐに進むだけだ」
「早めにくぐりぬけよう」
いよいよ、戦争が始まった。