第十四章 リング
――――頭の中で炎をイメージする。
…いける、今なら。
「うおおおおお!!」
リングに炎が灯されたのがみえた。
「…紅色の炎……?」
このリングにためた力を、放出する。
イメージ通りに……
ドーーーーン!!
炎がうねりをあげ、爆発した。
威力の加減を覚えないといけないのか……
幸い、炎をとばす投影をしたので怪我はなかった。
しかし、思い通りにはいかなかった。
「…炎を調節するにはリングにためた炎を少しずつ放出することが肝心だ」
そう言い残して、悪魔は凪と別の場所に修行へ行った。
それから、何度も何度も
莫大な量の炎をイメージし、リングに炎を灯し
少しずつ放出するように心がけた。
もちろん、簡単にはいかなかった。
戦争が始まるまでに、最低限でも
イメージを具現化する力をマスターしろと言われている。
……リングがなくても投影はできるが、リングがなければ
威力は低くなる。
だが、リングを使っての投影はとても難しい。
「始めからうまくできる奴などおらん、誰もが努力をし、成長するのだ」
あの、鉄仮面の黒騎士だった。
「…努力しても、実らないやつだっている」
俺は悲観的だった。
こんなこと言うつもりはなかった、しかし言ってしまった。
「そのとおりだ」
…慰めなんて、くれるわけはないか、いや、同情が欲しかったわけじゃない。
「しかし、成功していった奴は誰もが努力をしている」
…そのとおりだった。
プロ野球選手で練習をしていなかった人なんて居ない。
サッカー選手だって、バレー選手だって……
「…貴様はまだ若い、うまくいかぬのが人生だ」
「だが、選ばれし7人の使命から逃げることはできない!」
……ちょうど良い機会だった。
「選ばれし7人じゃなきゃいけない理由って何なんだ…?」
「強いやつなんて、山ほどいるだろ?そもそも選ばれし7人ってどういうことだよ」
パラレルワールドの能力なら、あの悪魔も持っている。
それは確信していた。もしかすると他にも持っているやつがいるかもしれない。
「初めて選ばれし7人を選んだのは、全知全能の神だといわれている」
「全知全能の神と対立する魔王を倒すことが、貴様らの最後の目的だ」
答えになっていない。悪魔にきいても教えてくれない。
だから、黒騎士にとことん追求しようと思っている。
「全知全能の神じゃ魔王を倒せないのか?」
「不可能だ、互角の戦いが三日三晩続いたと言われている」
「だったら…」
俺が次の質問をしようとすると
「ここから続きは我からは言えん、カオスの希望でな」
…くそっ、あの悪魔は何を考えているんだ……
「…ならこれだけでも、あの悪魔は何なんだ?…何で選ばれし7人を導こうと…」
「全知全能の神はカオスの愛人だ」
今まで生きていた中で一番驚いた。
…神が女だったなんて…そこじゃない。
どういうことなのだろう、悪魔と神が…?
その時、あの悪魔がきた。
「…調子はどうだ、リングの力を扱えるか?」
「……一応、後は放出をうまくするだけで」
黒騎士は去っていた。
…続きが気になったが、きいてはならない気がしていた。
「リングを通しての具現化は1日や2日でマスターできるものではない」
「しかし、お前の妹はもうできるようになっている」
…驚きが続く日だ、今日は……
「マジかよ…コツとかあるのかよ?いい加減一人じゃ無理だ」
「これは才能だ、お前には説明のしようがない」
つまり俺は才能無しで、説明しても、どうせ理解できないばか扱いなのだろうか。
「お前は実戦で理解するのが一番早いと俺は判断した」
「これから黒騎士を呼んでくる、お前には黒騎士との実戦でマスターしてもらう」
「は!?無理無理無理無理無理だって!!」
冗談じゃない、あんな怖い鉄仮面と実戦だなんて!
「命の危機に達したとき、嫌でも目覚めるだろう、文句をたれるな」
…つまり俺は死ぬ気で戦えと言われているのか。
「このままではリングを使いこなせないだろう、黒騎士を呼んでくる」
そういって、悪魔はすぐさま消えた。
「はー…俺は死ぬのかな……」
口にでてしまう、震えが止まらないほどだ。
実戦でリングを使いこなせないと魔王になんて勝てっこない。
俺は、嫌でも覚悟を決めざるをえなかった。
黒騎士との戦いが、始まろうとしている。