第十二章 王都ベネジスト
目を開けると、どこかの寝室にいた。
どれくらい眠っていたのだろうか。頭が重たい。
「お兄、だいじょうぶ?」
まるでずっと看病していたかのような顔だった。
「…ここは?」
「王都、ベネジストってところ」
眠っている間についているとは、思ってもいなかった。
「…あの悪魔は?」
「カオスなら、王に面会しにいってる」
…妹はよくカオスと名前で呼べる。
妹に少しよみがえった前世の記憶とはどんなものだったのだろうか。
「…なぁ、何で選ばれし7人が最後の世界に辿りつかないといけないかわかるか?」
ぶしつけな質問だったのだろう。妹は少し戸惑っていた。
「7人が最後の世界で魔王を倒さないと…世界が滅びる…から?」
本当に語尾疑問形が好きだな。と言いたかったが小学生にはわからないだろう。
「その7人じゃなきゃいけない理由ってのがな…」
その時、寝室のドアが開いた。
「目が覚めたか、王がお呼びだ」
鉄仮面の男、黒騎士だった。
今思うと、この大陸の魔王の右腕と称されるほどなら
あの時一人でも勝てたんじゃないか。と思う。
……ふとここの王は弱いのかと判断してしまう。
「わかった、今行く、それと…」
王都へ連れてきてありがとうと言おうとしたが
黒騎士は察したのかすぐさま去って行った。
「んじゃ、行くか」
「只今、連れてきました、王様」
鉄仮面でおじぎをすると、どうも怖い。
「うむ、よくぞきたな、選ばれし者達よ」
遠すぎて顔がよくみえなかった。
それほど、広かった。
「面をあげいっ!黒騎士よ、外の警備へあたれ」
「ッハ!ただちに!」
流石に王と言ったところか…雰囲気はあった。
でも、どうにも迫力が無かった。まるで…子供みたいだった。
「さて、本題へうつる」
悪魔、カオスの声だった。
「貴殿らは、鍵を探しておるのだな」
王は、既に悪魔から話をきいていたのだろう。
スムーズに事が進みそうで、少し安心した。
「フン、この大陸の鍵はおそらく…戦争だな」
「1000年前もそうだったな、ククク…」
いやらしい笑い声だ。
1000年前の鍵は戦争だった…?
悪魔からはまったくきいていない情報。
それどころか、戦争に巻き込まれるのは嫌がっていた。
「やはりか、大体の察しはついていたがな」
冗談じゃない、悪魔の、あの微笑な顔は、知っていたとしか思えない。
「面倒なんだがな、ここの戦争はどうも」
「仕方なかろう、他に鍵はありえんな、1000年前と同じだ」
「むこうの国の魔王を倒せばいいだけの話だ、簡単だろう?」
…魔王を倒す?何なんだ一体、はじめの大陸でそんな…
おまけに戦争だなんて、山あり山ありまた山ありといったところか。
「確かに仕方がないな、全面戦争まで後何日あるかわからないが…」
「その間に、修行だな」
悪魔はなぜか嬉しそうだった。
「自由にしろ、世界が滅びるわけにはいかん、お前らに懸っている」
「期待しておるぞ、選ばれし者達よ…ククク」
どちらにせよ、最後の世界へ辿り着くまでの道は長いだろう。
その間に戦闘スキルをあげなければいけないのは事実だ。
「ならばさっそく、修行の間で修業だ」
休む間もなく、地獄の修行が幕を開ける。