第十章 覚醒
ドーン!
大きな銃声が空へはなたれる。
空気が振動して、音が伝わってくる。
「動くな、お前らは完全に包囲されている」
向こう側の指揮官だろうか、身の丈ほどある銃を持っている。
「包囲だと…まさか、なぜ貴様らがこの国の領土へ入れた!?」
「おい、戦争だぞ?ヨーイドンで始めるとでも思ってんのか?」
向こう側の指揮官のような男と黒騎士がやり取りをしている間
他の騎兵達は一歩も動かない。俺は震えが止まらないっていうのに。
「くそう…この砂漠で、この戦力の差、万事休すか!」
黒騎士が言わずとも、皆がわかっていたようだった。
100数人Vs1000人近く、冗談の度を超えている。
「おい悪魔!このままじゃ巻き込まれるって!」
俺は死ぬなんてゴメンだった。もちろん、妹だって。
でも…違う…巻き込まれるとかじゃない。
「…この戦争に俺は関わるわけにはいかない」
俺と悪魔がこんなやり取りをしている間にも、戦が今にも始まりそうな
雰囲気を漂わせていた。
「俺はあくまでも、お前を生かすこととを優先する」
「戦争でいつ死ぬか、それとも、逃げるか」
悪魔がこんなやつだとは思っていなかった。
「俺は…へたれだ、俺は弱い、でも…!」
「目の前の災難から、逃げ出すほどへたれに育てられた覚えはねぇよ…!」
こんなこと言うつもりはなかった。でも言葉に出てしまう。
「ここで詰まるようじゃ…最後の世界で魔王を倒すなんて無理だろ!」
…言ってしまった。
本当は怖い。でも、なぜか言ってしまったんだ。
悪魔は無表情で俺を見ていた。何を感じているのか。
「…お前は、勝ちたいのか?」
「……へ?」
「お前は、強くなりたいのか?」
「…俺は……」
どうなんだ…俺は、このまま逃げ出すのか?
でも…こんな場所で逃げるようじゃダメなんだ…
「…ちたい…なりたい……」
俺は…俺は……!
「勝ちたい!強くならなきゃいけねぇんだよ!!」
その時、俺の身体をまばゆい光が包んだ。
――――暖かい、優しい…何だろう。
俺は……いつまでも弱虫じゃいけないんだ。
飛びたつ時がきたんだ、成長する時が…
「何だ!?あの光は!!」
「何者だこいつ…!?」
「……ようやく、目覚めたか」
――--己の力、選ばれし者には、覚悟の分だけ無限に力が上がる。
…見える、わかる。
力を感じる、自分から。
「撃て!あいつを撃て!!」
敵の指揮官だ、この声は…俺を狙っているのか。
当然だ、目立ちすぎた。
まさか全身から光が出るなんてな。
ドンドン!
銃声が鳴り響く…何だろう、銃の玉がゆっくりこっちに向かってきている。
――--違う、周りがみんな遅く感じる。これは…
キュンキュン! 何かが銃弾をはじいた。
あれは…漆黒の翼……悪魔か。
「俺を武器に使え、念じろ、想像しろ」
俺の…想う武器……武器なんて何があるか知らない…
ドンドン!!
銃声が鳴り響く
「時間が無い、早くしろ!」
「くっそおおおお!!」
自発的にだろうか、俺は銃弾を斬っていた。
――――これは…日本刀?
そうか、これは…
全てを洗礼する力…
--―――天叢雲剣!!