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Thank you for changing my sex  作者: 藤川
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第6話  普通とはなんだろう。

長嶺(ながみね)さんって美人だよね!髪サラサラだし、特別なシャンプーとか使ってるの?」


「ううん、普通に市販のを使ってるよ」


「えぇ、なのにこの髪質!やば」


「ながみっちはさぁスタイル維持のためにやってることとかある?」


「例を挙げるなら、ランニングをしてるかな」


「わぉ。めっちゃ健康的じゃん!」


 教室内は女子達の黄色い歓声で埋め尽くされている。次から次へと飛んでくる質問の数々に女子高生らしく答えていく。ボロが出たらいけないので言葉選びは慎重に行う。


「なぁ、俺天使に出会ってしまったかもしれねぇ」


「安心しろ、長嶺さんは紛れもない天使だ」


「彼女と同じ教師で良かった。神に感謝だな」


 男子達は天啓でも降りてきたのか、天に向かって拝んでいる。私はいつの間にか天使認定されていた。


「なぁあの子だよな、挨拶してた子、すげぇ美人だな」


「俺あの子朝見たわ、堂々と進んでいく姿が凛々しくて良かったぜ」


 先生達は今職員会議で呼び出されており、数分は戻ってこない。そのせいでか、自分のクラス外の生徒まで私見たさに集まってきている。新入生だけでなく上級生もちらほら混じっているな。


「凄い人気だな心。俺こういうキラッキラな空間は馴染めないから、ちょっと萎縮しちまうぜ」


 あはは……西園さん私も馴染めないよ。

 さっきからズキズキと胃が痛む。一歩間違えてしまえば怒りを買ってしまうのでないかと思ってしまい、精神的にきている。


「にしても長嶺さん、胸大きいよね。ちょっと揉ませてくれない?」


「え、ああ……良いよ……」


 ここで断ってしまったら嫌な感じになってしまうのでは、頭の中でそんなことが頭を支配して、嫌とは言えなかった。


「マジで、ありがとう」


 あぁ、やばいやばすぎる。また息が荒くなってきた。


「これは凄い、もっと触っていい?」


 いや、これ以上はもう。


「そろそろやめてやれ」


 限界まじかだったところを西園さんが助けてくれた。

私の胸を触っていた女子生徒は西園さんに止められると

驚いた様子で心配してくる。


「ごめんなさい、長嶺さん、大丈夫?」


 怯えた顔でこちらの様子を伺っている。ちゃんと答えないと不安にさせてしまうな。


「大丈夫。大丈夫。」


「そっか、ならよかったぁ、ごめんねもうちょい気を使うべきだった」


 悪気はないのだろう。純粋な好奇心でやってしまったのだ。別に彼女は悪くない。

 私は自分の容姿を触られるのはあまり好きではない。

この体は女性になってしまった。けど、私の心は男であるつもりでいる。そんな中途半端な状態のせいか、私は自身の体を弄れると、嫌な感覚に襲われて、息が荒くなってしまう。触られるてるのは自分の体のはずなのに言われる感想は誰か別の人の体なんじゃないかと思わせてくる。曖昧で不気味な感覚が全身を這いまわってきて気持ち悪くて仕方がない。

 

男の口調で過ごせば良いんじゃないかと思う人もいるかもしれない。それだけは絶対にダメだ。

 体は女性になってしまったのだ。なら口調も女性でなくてはならないだろう。


「ヤベ、先生来たっぽいわ、教室に戻らないと」


「急げ!急げ!怒られる前に席につかないと」


 どうやら、先生達の職員会議が終わって、戻ってきたみたいだ。

 生徒達の会話を聞き、私の周りにいた女子達も自分の席に帰っていく。ようやく休憩できる。


「皆さん、こんにちは、今日から皆さんの担任になります。矢島仁志(やじまひとし)です。これから1年間宜しくお願いします」


 入ってきたのは20代ぐらいの若い先生だった。髪はボサボサで、きっちりとしたスーツがまるで似合っていない。


「今日は最初の日ということで教材の配布と軽い自己紹介をしてちょっと話をしたら解散となる運びみたいです、それでは教材配っていきま〜す」


 自己紹介か、ん、待てよこれはチャンスだな。

 私の目的、目立つ学校生活を送る事。それはもう入学式で木っ端微塵に粉砕された。今の状況とは真逆のこと。しかしだ、仮に自己紹介で普通のことを言ってみれば、生徒の間で普通の女子という地位が確立されるかもしれない。


「よし、教材は行き渡ったな。余りとかはないな、それじゃあ自己紹介を始めようか、まずは首席番号男子の1番から」


 私の首席番号は23番、十分に時間はある。私の番が来る前に考えればいけるな。


「はい、僕の名前は愛原翔平です。趣味はバスケをやっています。よろしくお願いします」


 よし、最初の挨拶で大体何を言うかが固定される。このまま行けば私は自己紹介で趣味を答えれば良いのだな。


 次々と発表されていき、ざっくりではあるが理解してきた。色んなのがあったが、私が発表できるのは音楽か料理に絞られる。しかし、皆んなが知っているアイドルグループを私は誰一人として知らなかった、それは今後に不利すぎる。そういう事で料理で行こう。


 さて、私の番だ、焦らずに普通にやっていこう。


「私の名前は長嶺心です。趣味は料理。これから1年間よろしくお願いします」


 どうだ。普通だろう。さて席に着き、次の人に行ってもらおう。


「ねぇ……」


「いや、わかる」


 あれ、なぜざわつき始める。パッとしない普通の自己紹介だったが。


「趣味が料理って、家庭的なところもあるのか、長嶺さん」


 ちょっと待て女子達よ。


「しかも、今の動作見た。淑女だよ、あれは。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正。完璧じゃんか、すご」


 さっきから耳に入ってくるこの会話。全部が称賛だ。これはまたやってしまったのか。ざわつきがどんどん広がっていく。


「あんまり、うるさくしないようにな、はい、次の人」


 まぁ人の自己紹介なんてこんなもんだしょ。ちょっとざわつくぐらいが良いはず。うんうん普通だったな。


 その後は順調に進んでいき、全員の自己紹介が終わり、

 今後の事について、5.6分の話を聞いたら、解散となった。

 生徒達は帰り支度の準備をし、次々と帰っていく。

 中には早く終わったので同じ中学同士で遊びにいく生徒もいた。


「西園さん、また明日ね」


「おう!心もまた明日な」


 西園さんと軽く別れの挨拶をして、私も帰る事にした。帰る際にも視線はたくさん向けられてきた。



 2


 学校から帰宅して、夕食を摂った後。俺は両親と今日の事について話し合っていた。家に着いたら偽る必要はないが学校でボロが出ないよう家族の前でも口調は女性のままでいく。けど一人称は家族だけの前では俺にしている。


「もうビックリしたわ。まさか新入生代表として出てくるなんて」


 俺もビックリでしたよ。まさか頼まれるなんて。


「そうか、それは父さんも見てみたかったな。悪いな仕事で入学式いけなくて」


「良いんだよ。お父さん、まだまだ行事はたくさんあるんだから」


 体育祭に文化祭。学校生活はまだ始まったばかりなのだ。


「それでどう、学校生活はうまくやれそう?」


「まぁそれなりにはやっていけるんじゃないかな」


 目立たないことはできなかったが、友達ができたのだ

プラマイゼロだろう。


「そう……それじゃあ明日も早いし、早く寝るのよ」


 時計を見ると時刻は9時過ぎ。寝るのにはちょっと早いが疲れているし、今日はすぐ寝むってもいいだろう。


「うん、おやすみお母さん、お父さん」


「おやすみ、心」


「ああ、おやすみ、心」


 まだ学校生活は始まったばかり、これからうまくやっていこう。

 私はベットの中でこれからのことについて考えていた。ある程度纏まってきたのでそれからしばらくして眠りについた。





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