第4話 予想外
教師のドアを開けて中の様子を確認する、中は騒然としていた。
「お前も、一緒のクラスか!荷物置いたら別のクラスも見に行こうぜ」
「やった!私さらちゃんとまた一緒のクラス!」
「よっしゃ!このクラス編成は徳しかないわ」
色んな人の会話が耳に入ってくる、それと同時にどうして入学式だったのに教室内が騒然としているのか、分かった。
ここはマンモス高だ、当然中学が一緒だった生徒は何人もいる。
確かに普通に考えれば当たり前のことであった。
けど、幸にしてほとんどが会話に夢中で私には気づいてない様子だ。気づいてしまう前に席に座ってしまおう。
私は目立たないようにひっそりと黒板の前に貼ってある座席表を見て、席に移動した。
席に着き、ひとまず休むことにした。
「人が多いなぁ」
口から独り言がポロッと出た、人が多いのはあんまりいい気分はしない、
けど、それを抜きにしても一番都合が良いのはここだった。
まぁ想定外のことが起きなければ大丈夫である。
――ちょっとフラグっぽい気がするなぁ。
「なぁ、お前」
「は、はい!」
ビックリしたァァァァ!!え、誰?私さっそくなんかやってしまった?
いやいや、落ち着け、落ち着け私。
ちゃんと返事できていたはず。大丈夫だよな?
まずは体の向きを変えて、相手が誰なのか確認しよう。
「悪いな、急に話しかけちまって」
「いやいえ、大丈夫ですよ、それで私に何か用でしょうか?」
焦りすぎて、なんか令嬢みたいになったんだけど、まぁ男の口調が出るよりまだましだな。
体制を整えて、相手の事をみる。
相手は女性だった。身長は私よりちょっと高くて、髪は私と同じ黒だが髪型はポニーテール。
肌は少し焼けていて健康的。けど振る舞いや口調は男っぽい。
なるほど、俗にいうボーイッシュというやつなのか?
「俺、最近ここに引っ越してきて、中学の友達がいないんだよ、やっぱり高校生活には友達が必要じゃん、だから良かったら友達になってくれないか?」
なんと、友達へのお誘いであった。普通に嬉しいな
私も友達は作りたい、けどあんまり軽い気持ちで決めたくない。
あれ、でも待てよ、この人は男っぽい動作や口調をしている、なら、私は男と会話できる気分になれちゃったりして、しかもだ、さっきから向けてくる。
まるでビー玉のようにキラキラと反射する青い目や屈託のない笑顔。
よし、友達になろう!
「もしかして、ダメだったか?」
「いや、そんな事ないない、友達になろう!」
「やった!ありがとな!俺の名前は西園真琴よろしくな」
西園さんは手を差し出してきた。私も手を握り返して自己紹介をする。
「よろしく西園さん、私の名前は長嶺心よろしくね」
西園さん、名前も男っぽいね。
そこからは他愛もない会話を続けた。
「にしても、心は凄い綺麗だよな、教室に入ってきた時から凄えなぁって思ってたんだよ、ほら、俺ってあんまり女っぽくないだろ。」
西園さんは大きく口を開けて、笑っていた。
「だから、さぁ俺、心のこと女性としてのお手本として
師匠って呼んでいいか?」
やぁ流石にそれは、あと女性のお手本と言われましても
全部男が頑張って女の演技をしているだけだし。
「ちょっと、それは無理かなぁ……」
「あはは、まぁそうだよな、けど心を女性としてはお手本だと思うぜ。やっぱり中学ではモテたんだろう?」
「まぁ、モテたね、うん」
ここはあまり謙遜しない方がいい。自分を卑下しすぎると不快になる人もいる。
「やっぱりかぁぁ、まぁそりゃ心は美人だしな」
「いや、西園さんも美人だと思うよ」
西園さんは美人だ。元男の私からみれば恋に落ちてもおかしくはない。
「はは!!ありがとな、心から言われると自信が持てるよ」
他愛もない会話をずっと続けていた。けど西園さんと話していると普通に笑っていた気がする。
「いやぁ、けど初日に友達が出来て嬉しいなぁ」
「私も西園さんのような友達ができて嬉しい」
友達になってよかった。理由は最低かもだけど。
けど西園さんのおかげで私が求めていた高校生活ができている。この時間が至福だ。ずっとこのままで行きたいな。
「長嶺さんには入学式で新入生代表として、挨拶をしてもらいたい」
はい?
ちょっと待て、私が代表? なぜだ?
なんでこうなった?
私はさっきまで至福の時を西園さんと過ごしていた。
しかしだ、急に先生に呼び止められて、今私がいるのは入学式が行なわれる大講堂。今から10分後には入学式が始まる。
それが終わってしまえばその後はは平和になるはずだったのに……………
まさか起きてしまった、予想外のことがだぁぁぁぁ。