第1話 美少女
初めてまして!この作品に目を留めてくださり、本当にありがとうございます。
ピピピピ……ピピピピ……
午前6時に設定していた目覚まし時計が鳴っている。ぼんやりとした感覚で停止ボタンを押す。
いつもはこのまま二度寝してしまうが今日はそんなことできない。
体を起こし、だいぶ意識がはっきりしてきた状態でカレンダーのある方向に向かった。
「4月8日、遂にこの日がきた」
カレンダーには入学式と赤文字でデカデカと書かれている。
とうとうきてしまった。
俺は覚悟を決めた表情で洗面台へと歩く。
階段を降りて1階にある洗面台へ到着した。蛇口を捻り水がぬるま湯になるまで待つ。
「おはよう!」
急に挨拶され俺は体が一瞬ビクッとし、後ろを振り返った。
「お母さんおはよう、元気だね」
「だって今日は娘の入学式ですもの!!」
さっきからお母さんの声は弾んでいて、楽しみだったのがよくわかる。
「……ありがとう」
親バカかもしれないが、俺も両親は好きだ
毎回お世話になりっぱなしで、感謝してもしきれない。俺は子バカなんだと思う。
「それじゃあ朝ごはんできているから、食べてね」
お母さんは台所の方へと消えていった。トーストのいい匂いがする。
水がぬるま湯になり、顔を洗っていく。
そしたら、眠気はもう無くなっていた。
長い黒髪に寝癖がないかチェックをしたら、歯を磨き始める。
ミントの爽やかさが口の中で広がっている。
俺は朝の身支度を終わらせて、朝食を摂るためにリビングへ向かった。リビングの中央にあるテーブルには皿が2枚あった。
1枚は俺がいつも使っている皿、こっちには料理がのっている。
もう1枚はお父さんの使っている皿だ。既に食べ終えた後だった。
朝早くから仕事があるのだろう。起きて洗面台に行った時に姿は見なかった。仕事熱心なお父さんである。
さて、今日のメニューはトーストにサラダとベーコンエッグ
そして俺の大好きなプルーベリーのジャムがあった。
「いただきます」
トーストにジャムを塗り、パクパクと食べていく。
焼き立てのため胃袋に染み渡る。
「今日は頑張ってね!お母さんはちゃんと見ておくから!!」
お母さんはカメラを片手に持ち、やる気マンマンの顔で話しかけてくる。
「あはは……気合充分だね」
俺よりも気合が入っているのじゃないだろうかと思う。
朝食を食べ終えると制服に着替えるため、再び2階に上がる。
新しい制服に着替えると、俺の部屋には鏡がないた め、
1階に戻り玄関にある鏡で念入りにチェックをするという面倒くさい行程が入る。
ついでに荷物も全部下に持って行ってしまおう。中身があまり入ってないバッグを肩にかけ、降りていく。バックを鏡の近くに置き、違和感がないか自分と睨めっこし確認する。
「よし、これでOKかな」
俺の姿は汚れひとつない真っ白なシャツをボタン最後まで止め、その上に紺色の肌触りのいいブレザーを羽織っている、赤色のネクタイもキッチリと結んである。
下はブレザーよりちょっと暗めな色のスカートを膝が隠れるぐらいの長さで履く。
襟の名前記入欄にはマイネームで長嶺心と書かれている。
俺の高校の制服は基本着崩しが許されていてるが今日は入学式のため服装は全員ちゃんとしてくださいと説明会の時に言われていた。
ちょっとスカートにシワがあるかな。
スカートの調節を行う為に俺は下を向き体をを少しかがみながら整えていると。
「うんうん。似合っているわよ」
今度もお母さんは急に現れて、手を肩に置きながら感想を告げられる。
「お母さん、話すときは声をかけてからにしてよ」
「身長は私を追い越して160ぐらいで、カップは制服でもわかるFカップ 顔のパーツも整っている、本当に凄い美人さん」
お母さんは俺の身体を触りながら報告して来る。
やめてくれ、身体的特徴をあんまり言わんでくれ、やばい少し息が荒くなってきたな。
「お母さんそろそろしんどい」
俺は耐えきれ無くなってきたので、弄られている手をどけ、ちょっと離れる。
「あ、ごめんなさいごめんなさい、私入学式でテンション上がっていたからつい……」
お母さんは「やっててしまった」と言わんばかりな顔をしてちょっと笑顔が曇ってしまった。
こういう表情はあんまり見たくない。
「大丈夫、大丈夫 いきなりすぎてちょっと焦った」
息はもう上がってないし、平気平気。
「なら、よかった。それじゃあもう出発するの?」
「あ……うん、もう行こうかな」
時刻は7時きっかり。
学校へ向かうにはちょっと早いが、ゆっくりと行きたいし、このぐらいがちょうどいいだろう。
「わかった、はい、バッグ」
お母さんは足元に置いてあったスクールバッグを屈んで両手に取り、渡してくれる。
俺は受け取ったバッグを肩にかけ握りしめた。ここから大変な1日が始まるるんだな。
中身はほとんど何も入っていないため軽いはずだが今はやたらと重く感じる。
ふぅーーと息を吐き、精神を統一する。
新品の革靴に履き替え、玄関の扉を開く。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
俺は後ろを振り向き手を左右に振る。今、俺の顔は笑っているだろうか。
お母さんは純粋にただ真っ直ぐ俺の方を見て手を振り返してくれる。
いつもの優しい笑顔。俺はあの笑顔が大好きだ。
気合を引き締めていこう。
俺は、いいやここから私は気合を入れるため頬を両手で叩く。
2
私、長嶺心は高校一年生という人生の最高潮とも
言える高校生になるために私立星河高校に向かっている。
「今日から高校生活か…」
私の向かっている私立星河高校は
学力に関しては中の上ぐらいだか、この高校は生徒数が圧倒的に他と比べて多い、いわゆるマンモス高だ。
そのため、生徒の教育という名目でかなり色んな施設が整っている。
全校生徒約1000人が入ることができる大講堂や各部活が自由に使えるコートとグラウンド、食堂もかなり良いものが揃っているらしいので楽しみで胸が躍る。
そんなことを考えながら15分ほど歩いていたら、いつも乗っているバス停に着いた
バスに乗って駅へ向かう。人はおらず、私一人だけである。
駅はあまり人が乗っていない電車に優先的に乗り、座席に座りながら移動して30分ほど揺られていく。着いた駅から歩いて10分ほどで目的地に到着した。
「何回見ても、でかいなぁ」
受験や説明会などで数回は来ているがやはり、いつ見てもでかい。
さっきいた駅からでも見えていた。
校門を目の前にして校舎の広さに驚き呆然としていたが、人が多くなっきたためあまり気がつかいないようにしていた視線がやはり目立ってきた。
まぁ当たり前か、こんな美少女さんが歩いていたらほとんど人は見てしまう。
こういう時は気付かないふりをして進もうと決めている。何事もないかのように前を見ながら歩いていく。段々と足取りは重くなってきた。
男女問わず向けられてくる宝石でも見るかのような、驚きと期待の視線が痛い。
けどもう向けられすぎて慣れてしまった。嬉しくもなければ悲しくもない。
はっきり言おう、私は美少女だ、肌は透き通っていてシミひとつない。
顔は目、鼻各パーツが最大限にまで綺麗を引き出している。
整っていて、脂肪はあまりついていないスラットしたスタイル。
自意識過剰だって? 玄関の鏡で何度も確認した、間違えようがない。
モテモテになれるじゃん、良かったなと感想を持つかもしれない。なら、代わってくれ。
私はこの体大嫌いだ。
毎日鬱陶しいほどの視線を感じ、理想と期待で埋もれそうになる。
だからこそ、私は普通の学園ライフを送るために、覚悟を決めここにやってきたのだ。
私はサラサラの黒髪を持ち、雪のように真っ白な足で進んでいく美少女。
いいや違う。
俺は髪はボサボサで足には毛が生えていた、普通の元男だ。
何故こんな姿になり、こんな嫌な生活になってしまったのか。
全てはあの日、あの女に仕組まれてしまった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話はどうやって美少女になってしまったのかを書いていきます。
感想や評価よろしくお願いします!