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運命の相手は自分で探しましょう  作者: ぶくでん
フェザント城大忙し編
94/119

94.ポポロと薬

「先輩!できたぞい!!」

 

 ポポロが弾む声を隠し切れずに、宿屋の私の元へやって来たのはまだ夜更けと言える頃だった。

 私はというと、寝ぼけたのか何なのか、起きたらいなくなってたウィルを尋ね人の魔法で見つけて、隣の部屋から転移で連れ帰ったところだ。

 ほんとに世話が焼ける。


「ポポロ、おつかれさま。さすがの手際だね!」

「まぁの。昔は薬作りは村の貴重な財源だったんじゃ。今は治癒魔法が発達したからのぉ。さっぱり売れんようになって作るのをやめたんじゃ」

「…そっか」

「…あ、儂、空気読めるいい後輩じゃから、日が昇る頃にまた来るぞい」

「え…あぁ、うん。まだ村の人寝てるもんね」


 そっとベッドに戻って、ウィルの寝顔を見る。

 …顔色が少しは良くなるといいんだけど。

 そう願いながら、彼に少しだけ睡眠魔法をかける。


「(シャロン起きてる?)」

 頭の中にテリーの声が響く。

「(起きてるよ!)」

「(起きてるならドア開けて!もう…限界。眠い)」

 はいはい。

 ウィルを起こさないように、そっと部屋の入り口を開ける。

「(…シャロンもう起きたの?眠れない?昼間けっこう魔法使ったのに…げっ!!)」

 ベッドによじ登ったお猿が、変な声を上げる。

「(…げって何よ)」

「(ウィル…ここで何してるの?)」

「(はぁ!?見たらわかるでしょ!寝てるのよ!)」

「(…一人で?)」

「(……ちょっとちょっとテリー、そういう見えないお客さんの話は二人の時にしてよね!気になるじゃない!あー!水晶玉持ってくればよかった!!)」

「(…察した。じゃおやすみ)」

 …何を察したっていうのよ。



 朝、太陽が姿をはっきり見せた頃、再びポポロが風呂敷包みにたくさんの薬を入れてやって来た。

「最初は大工のとこじゃ!先輩、はよ来んか!」

「はいはい!ちょっと待って!」


 やはり私の感じた通り、〝クレインの薬〟は、抵抗なく村に受け入れられている。

 ポポロは薬と交換に村の様々なものを手に入れられて、終始ご機嫌だった。

「ポポロ、種を持ってる農家さんのとこ行こうか?」

「そうじゃな!それが一番の目的じゃ!」

 最後に村を見て回りたいというウィルと、ウィルの護衛のバートさんと別れ、私たちは村の外れの農家を目指す。

「農家さんには何の薬を頼まれたの?」

「魔女の湿布薬じゃ!儂…男じゃが、そこは愛嬌ってことで……」

「あはは!私の師匠も男だけど、湿布薬作ってたから!」

 …心はもしかしたら違うかも。美しいものが好きだし…。

「(お師匠に聞いてみようか?)」

「(やめて)」

 師匠がお父さんってだけでもうんざりするのに、その上お母さんまで兼ねられたら頭が混乱する。


 やはり農家さんもポポロの湿布薬を大変喜んでいた。

「先輩のおかげで儂の村もしばらくは安泰じゃ!見てみい!こんなにたくさんの種!!風呂敷に入り切れるかのぉ!」

 ポポロはホクホク顔である。

「…いや、大丈夫でしょ」

 ディノが小さく呟くが、魔法の風呂敷が膨らむなんてすごいことなんだからね!

「よかったね、ポポロ。…本当は勝手にフェザントに来るのはダメらしいんだけど……」

 そう言葉をかけると、ポポロが首をかしげる。

「それなんじゃが、やっぱりどう考えても納得いかん。儂の村にはちゃーんと言い伝えが残っておる!『困った時には湖を渡れ』ちゅーて、子々孫々書き付けを大事に残しておるんじゃ!」

「…え?」

「フェザントの王様がくれた書き付けじゃ!王様がいいっちゅうもんを、何でイケメンがダメって言うんじゃ!おかしいじゃろ!」

 ポポロの発した言葉に、私とディノは顔を見合わせる。

 王様が…?

「…シャロン様、この件は後で殿下に確認しますので」

「…うん」

 ドレイク村には…何か秘密があるみたいだ。



 ウィルと合流した私たちは、湖のほとりでポポロの船出を見送る。

「…あの船で、この湖を渡れるのか…?」

 皆がそう思うのも仕方がない。ポポロの船は、帆をかけただけのイカダにしか見えないのだから。

「…人形とボートを交換した方が良かったんじゃないの?」

 テリーまでが声を出して心配している。

「大丈夫よ。風の羽渡したし。あ、いや、師匠の宝物庫から…借りた…けど返す予定無いし。見てて、ポポロならちゃんと使えるから!」


 ボートがこぶしぐらいの大きさになるまで岸から離れた時、ポポロがこちらに大きく手を振り出した。

 私も両手を大きく振ってそれに応えた。

「気をつけてねー!!」

 私の叫びに応えるように、湖に突風と渦が起こる。

 そしてボートが水面を離れ…

「「「飛んだ!!」」」

 ウィルたちの驚きの声を残して、ボートはそのまま見えなくなった。

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