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運命の相手は自分で探しましょう  作者: ぶくでん
フェザント城大忙し編
91/119

91.種

「…これはまた、ブサ…奇天烈な商品ですね」

 ウィルが何かを包み隠して言葉を発する。

「…なんじゃ、これはクレインでは最高級品なんじゃぞ。何せ手作りじゃからの!」

「……なるほど」


 確かに、どれもこれもクレインで手に入れるには〝待たなければ〟いけない。

 …そっか、手作りか…。

 フェザントに来るまで知ろうとしなかったこと、物を手に入れるために払う対価…。


「あなた、クレインではこれを何と交換してたの?」

 白い魔法使いに話しかける。

「…そうじゃなぁ、時と場合によるが、一番人気は火種の魔法じゃな。あれがあると煮炊きも風呂も早いでな」

 火種の魔法…。

「ああ、だから種を求めてここに?」

 ウィルの質問に、白い魔法使いが明らかに見下した顔をする。

「なんじゃ、イケメンなのは顔だけかい。…お主3日で飽きられるぞい」

「……………。」

「火種が欲しいならクレインで手に入れるわい。儂らが欲しいのは作物の種に決まっておろうが!このままじゃ儂らの村は来年には飢え死にじゃ!」

 飢え死に…?

「最近の首都の人間は贅沢なんじゃ!ホイホイ取り寄せしよるから、儂らは種籾までみーんな使うてしもうた。種は大事なんじゃ。…クレインで分けてくれるものなどおらん」


「…(シャロン、この人の言うことよく聞いて。君がフェザントで出来る事のヒントが隠されてる)」

「…(テリー…)」

 私が知ろうとしなかった魔法のこと。

 取り寄せは…誰かのものを、手に入れること…?


「…お爺さん、厳しい話をするんだけど、多分、この品物じゃ……種は手に入らないと思う。…親父もそう思うだろ?」

 ディノが重そうに口を開く。

「…そうだな。よくて手の平分の麦ぐらいか…」

「なっ……!!」

 白い魔法使いはあからさまにショックを受けている。

「なんでじゃ…!これらは最高級の…!」

「…この村には、必要がないからです」

 ディノが…すごく申し訳なさそうだ。

「なんと、なんと…儂は種を持って帰らんと、村が……うおーんおんおん、おーいおいおいおい………」

「!!」

 泣き出した老人に、一同驚愕している。


「…ウィル、ちょっといい…?」

 私はコソコソとウィルを呼ぶ。

「…なに?」

「あのね、私…フェザントの決まりとかよくわからないんだけど、あの人…逮捕するの?」

 ウィルがちょっと困った顔をする。

「…悩ましいところだね。法律に則るなら逮捕して取調べが済んだら強制送還…だけど……」

「…だけど?」

「取調べは済んだからね。あとはクレインに帰ってもらえれば、別にいいかなって…」

「!! じゃあ、じゃあ、あの人に一晩だけちょうだい!私がちゃんと見張るから、一晩だけ…!」

 一晩あれば、彼ならきっと作れる。

「…まさかあの老人と一晩過ごすつもりじゃないよね」

「え?必要なら……」

「却下」

「え゛」

「…遠くから見張るだけなら、考えなくも無い」

「ウィル〜〜!!」

 今日は何だか優しいウィルに、ぎゅっと抱きつく。


「…殿下方は本当に仲が良くてらっしゃるな」

「……時と場合を選んで頂きたいけど」


 ディノとバートさんの呟きは無視して、おいおい泣き続ける白い魔法使いに話しかける。

「ねぇあなた…あー、えっと、名前なんだっけ?」

「…儂?…ポポロ」

「「!!」」

「ポポロ?いい名前ね。ねぇポポロ、私にいい考えがある。この村の人が今一番欲しいもの、あなたなら用意できるわよ」

「…儂に?儂はこれ以上の呪い人形は作れん」

「あー確かに。これは最高に可愛いもんね」

「「!?」」

「これは私があとでもらう。…風の羽10個と交換っていうのはどう?」

「そんなに…?」

「最高級品でしょ?少ないくらいじゃない?」

「…先輩……!!」


 うむうむ。後輩は大事にしないとね!

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