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運命の相手は自分で探しましょう  作者: ぶくでん
フェザント城大忙し編
85/119

85.お忍び

「どうしてもこれだけは避けられないから最初に言うね。君とウィルには一人ずつ護衛が付く。お忍びだから、影の方」

「影………」

「…ディノだよ」

「え!!あぁディノ!!え、影?ディノ見えてるよ?」

「…もう無視するね。ディノは今は君の影護衛なの。妥当な判断だと思う。ディノは君の事情を全部わかってるから」

「…普通の護衛とは違うの?」

「違う。それについてはまた今度。とりあえず君にはディノが付く。それでウィルには…影の頭領が付くんだ。一番上の人」

「……あー……なるほど、分かってきた。その人の前で転移しても大丈夫なのかな」

「うーん、そこなんだよ。何度もウィルに聞いたんだけどね、笑いながら大丈夫だよって言うんだ。何でもディノのお父さんらしくて」

 へー…………。





 ずっとずっとライ師匠に会いたかった。

 ウィルの奥さんになる事にちょっとだけ自信がなくなったことも、眠れなくなったことも、ライさんに相談してみたかった。

 宮殿のみんなは優しいけれど、私に気をつかっていることぐらいわかってる。

 …普通の人間の女の人なら、ライさんなら、怒ったり笑い飛ばしてくれそうな気がしたんだ。


 でも、こんな大事になるなんて…。




「「殿下、シャロン姫、いってらっしゃいませ」」

 

 大勢の見送りがずら〜っと並ぶ中、私たち5人を乗せた馬車は王太子宮を出発した。あ、5人じゃなくて4人と一匹。

『僕だって羽を伸ばす権利はあるでしょ?』なんてお猿が言ったから。

 テリーに羽……可愛いかもしれない。


「…(お忍びじゃなかったの?見送りたくさんいたんだけど)」

「(お忍びじゃん。非公式訪問なんだから)」

「…(非公式)」

「フフ、シャロン心配しないで。本当のお忍びはここからだよ」

 少し顔色の悪いウィルが言う。

 …無理したんだろうな。いや待て、最近ウィル思念読んでる?

「顔見たらわかるよ」

「!!」

 やっぱり…読んでる!!


「フハハ!殿下と姫は仲が良くてらっしゃる。いやはや、ディノの言う通りですな!」

「しーっ!!親父しーっ!!」

「…へぇ、バートに情報は筒抜けなんだね」

「で、でんか、いえ、そのぉ……」

「…嘘だよ。シャロン、紹介が遅くなったね。彼らは王家…正式にはロストラム家に代々仕える、バンティングの一族だ」

「バンティング?」

「さよう。私はヒューバート・バンティング。今のところ一族の頭領をしております。シャロン姫、息子に誰か紹介してやってください」

「親父…ほんとやめて。あーもうだから一緒に仕事なんて嫌なんだよ!!」

「何を言う。フラフラしていつも振られてばかりおるだろうが。殿下が身を固められたら次はお前だ!殿下にお子が産まれたら影を増やさねばならん!ワシはもうさすがに無理だ!」

「「………………。」」


 バートさんがドーンと胸を叩く。

「とにかく、我らヒューバートとランディーノ、しっかり影に徹しますので、遠慮なく過ごしてくだされ!」

 二人はお揃いの黒髪に焦茶色の目。バートさんはディノより少し大人びていて、顔つきも精悍だ。

「なんか…愉快な人だね」

「僕の親世代は比較的こういう感じの人間が多いんだよね。はぁ……」

「せっかくカッコいいのにね」

「かっこいい…?バートが?」

「うん。強そうだし、髭もないし、かっこいい男の人って感じ」

「…バート、覆面。顔出さないで」

「なんですと!?」

「…(シャロン、怪物から小悪魔に成長中?)」

「(えー?どうせなら高位悪魔がいい!すっごく強いよ!)」

「(………小悪魔も無理か)」




 わいわいと騒がしく馬車で走ること二時間あまり。

 窓の外に森と瀟洒なヴィラが見えて来た。

「ああ見えたね。一応あそこが今回の目的地…ってことになってる。…無人だけど」

「…ああ!作戦その1!」

「そう。あそこを中継にしてドレイクまで行くよ。腕の見せどころだね。楽しみだな」


 よーし!ウィルを本当のお忍びに連れて行くからね!


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