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13.容疑者は、君

「君のおかげで一応解決した7名の女性の拉致事件、この件について君が犯人の候補に上がったのには理由がある」

 

 ウィルがディノと目線で何やら会話をすると、ディノが一枚の紙を読み出した。


「時系列で説明します。最初の行方不明者の報告は約半年前です。そこから月に1人から2人…同じ職業の女性が失踪するという事件が発生するようになりました」

「同じ職業の女性…?」

 私の呟きにウィルが頷く。

「彼女たちは、いわゆる……娼婦だね」

「しょうふ…しょうふ、ああ娼婦!なるほど。この国の冬は長いですもんね。彼女たちはこの国の…魔女的な存在ですか?」

 ふはは、これがメモライズ効果だ!『暮らしと民俗』の149ページ!娼婦は春を売る!どうだ、賢くなっただろう!

「「…………………。」」

 …あれ?

「確かに魔女と言われれば……」

「やめろ、ディノ。…フフッ」

「あ!あるじ笑ったでしょ!?僕だって…クッ腹筋が…!」

 ……多分やらかしたな、これ。


「ゴホッ、あーあー…んん!ええと、その女性たちの捜査と並行して、今度は六区でとある美少女の捜索願が複数箇所から届け出られまして……」

 ディノがチラッと私を見る。

 ふーん、今度は美少女。なかなか盛り沢山なことで。

「その美少女が最後に目撃されたのが君の占い屋だった…というわけだ」

 ……ん?どういうこと?

 ウィルの言葉に私は首を傾げる。

「美少女が私の占い屋に来たって事ですか?」

「うーん……そうだね」

「覚えてるかなぁ……。どんな姿の子ですか?」

 

 ウィルとディノが息ピッタリに交互に喋る。

「身長は160センチぐらい?」

「ですね。髪は長くてだいたい緩く後ろでお団子」

「そうだね、変わった色だね。薄い…青銀?」

「変わってると言えばやはり瞳ですね。薄い…紫」

 青銀の髪…別に珍しくもなんともない。

 紫の瞳もけっこういる。何なら故郷には金目も銀目も虹色なんてのもいる。


「ふんふん、なるほど。聞く限りでは見覚えありません。お役に立てなくて申し訳ないです。あ、でもよく似た特徴の顔なら毎朝鏡で見ます」

「…だろうね」

 ウィルとディノがじ〜〜っと私の頭の先から爪先までを観察する。

「………えっ!?私!?」

 ディノがヤレヤレといった声を出す。

「…中身は…とても残念ですけど、恐らく、街中であなたの事を見ていた人間が大勢いて、ある日を境にいなくなったと憲兵事務所に届けが出たんだと思います。あまりにも届け出数が多いため、もう一つの誘拐事件として捜査を始めたんです」

 

 はー……そうだったのか。

 まさか御年百数十歳の私が少女のカテゴリーに入っているとは…。人間とはなんて目が悪いんだ!!

 それにしたって私の占い屋で誘拐事件……


「はっ!……わかりましたよ犯人が!お猿でしょう!?怪しいお猿が美少女を誘拐したっていう容疑ですね!!それなら大丈夫です!あのお猿は服を着ているものが大っ嫌いなんです!服着た犬に石投げるぐらい!!だから美少女は無事だって報告して下さい!」

「ブフォッ!ゴフッゴホッ!あ…あるじ、僕はもうダメです…。代わってください!!」

「…フフ…フッフフ…自信ない……」

「…なんか違いますか?」

「ち…違うね。だから、容疑者は、君、なんだって。お猿じゃなくて、君。老婆の…」

 あーーーー!!!なるほど!!!


 謎は全て解けた。要は、老婆の私が自分を誘拐したというとんでもない言いがかりが原因で、私は憲兵に目をつけられたわけだ。

「二つの事件が微妙に絡まって、7人の行方不明事件の容疑者としても老婆の君が候補に上がった。だから僕はあの日、リーナさんに協力を依頼して君の店に行ったんだ。君が老人に化けている事はすぐにわかったんだよ」

 ウィルが含みのある目をする。

「…変装は完璧だったと思うんですけど」

「声は…見事だったけどね。水晶を触る腕が明らかに若い女性のものだったから。念のためにそれを確認するため憲兵を向かわせたんだけど、色々手違いがあってあの日の取調べに至った…というわけ」


 …手違いだとう?

 わかった…わかったぞ!あの時この二人笑ってたな!!

 必死に老婆の振りする私のことを!!

「むー……」

 唇を尖らせる私にウィルが言う。

「申し訳なかったね。だから二つの事件の内、一つは解決したと君に伝えたんだけど……」

 待て待て、その言い方だと…。

「もう一つの方は報告書を上が認めてくれなくてね。君への疑いを晴らしきれていないんだ」

 ほーら来た!!

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