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運命の相手は自分で探しましょう  作者: ぶくでん
フェザント城大忙し編
108/119

108.ドレス選び

「うーむ……。これもいいけれど、こっちも捨て難いな。シャロン、これを着てみて」

「何を言うのです、ウィルフレッド。これは外せません。姫にはこれが一番似合います」

「あ、アリーはこれとかいいと思います」

「まあ!でしたらマリーはこちらですわ」

「「う〜〜〜む………」」


 今日は結婚披露パーティーで着るドレス選びの日。

 王室お抱えのデザイナーやお針子が大量に王太子宮に押し寄せる中、ドレスの選定は全く進んでいなかった。

 正直私はどうでも良かった。良し悪しが全くわからないし、みんながいいと言うものを着ておけば間違いないから。

 …なーんて言ったのが間違いの元だった。


「あの…殿下方…?そろそろ候補を選んで頂いても……」

 デザイナーさんが困りきった顔で声を出す。

 もうかれこれ3時間この調子だ。

「…だめだ。僕には選べない。全てを着たシャロンを見たい…!」

「妾にもその気持ちはわかります。こうしてはどうでしょう。パーティーを1週間やるのです。そしてお色直しを3回ずつ」

「王妃殿下…!あなたは天才だ…!」

 ちょいちょい待て。殺す気か。

「しかし、現実的に10着に絞るべきでしょうね。本縫いまで進めて、試着を経て決定しましょう。…というわけで、この色とこの色をお願い」

「では僕はこの色とこの色で」

「マリーはこれとこれです」

「アリーはこの2つです!」

「んじゃ儂はこの二つ……」


「「……………陛下!?」」

 おおー、母子の声が揃った。王様ずっとそこにいたのに、みんな気づいてなかったのかな?

「な、何をなさっているのです!!あなたは今日閣僚会議に…!!」

「だってみーんな、後ほど殿下に報告書を提出しておきますって言うんだもん。儂、ヒマなんだもん」

「……………。」

 あ、ウィルが白目になってる。

「冗談じゃよ。ここ最近議会はとてもスムーズに進行しておってな。それもこれも姫の内助の功のおかげじゃ」

「え、私の?」

 私…何かしたかな?

「ウィルフレッドによくおねだりすることじゃ。今なら小島ぐらい貰えるかもしれんぞ?」

「陛下…それはちゃんと僕が考えてますから」

「ほ?そうじゃったか。ならば良い良い」

 ウィル…島も持ってるんだ。王子ってすごい。


 そんなこんなでデザイナーさん達が冷や汗を拭いながら出て行ったあと、王様が少し懐かしそうに話し出した。

「来週からはご先祖巡りじゃのう。若き日の王妃と儂の絆がグッと強まった一大イベントじゃ」

 すかさず王妃様から突っ込みが入る。

「あらそうでした?道中21回ほど喧嘩した記憶しかございませんわね」

「そ、それも愛を深めるスパイスじゃったろ!……ゴホン、シャロン姫、ご先祖の陵墓は遠い場所にもあるから、しっかり体を休めながら頑張るんじゃぞ!」

「はい!」

 ご先祖巡り…?はて……とは思ったが、多分私が誰かの話を聞き逃したのだろう。


「さて陛下、中央宮までご一緒しましょう。妃殿下はまだアクセサリーを選びたいようですので」

「おうおう、女子は光り物が好きよの」

「じゃあシャロン、また夕食で」

 そう言ってウィルがにっこり微笑んで、王様と一緒に宮を出て行った。

 

 

 王妃様はルンルンでネックレスを選んでいる。…表情は全く変わらないけれど、ルンルンしているのはわかる。

 その王妃様に直球で聞いてみた。

「お母さま、ご先祖巡りって何ですか?」

「ああ、フェザントの伝統です。正式に嫁入りする前にその家の先祖の墓を巡るのです。…王家は古い家ですから、ご先祖の数も途方もなくて……」

「国中を巡るんですか?」

「そうですね。国の西端から東端まで、陵墓は各地にあります。とは言え全部を回るなんてとても無理ですから、直近三代と、陛下とウィルフレッドが一つずつ選定します」

「陛下とウィルが……」

「ええ。妾の時は、陛下はなぜか第6代目の王の陵墓…とは言っても何も無い荒野でしたけど、そこを選定されて…」

「されて?」 


 王妃様が珍しく恥ずかしそうな表情をする。

「…これはウィルフレッドには秘密ですよ。陛下はこうおっしゃったのです。『王だなんだと言ってみても、死んでしまえばこんなもんだ。固く考えなくても良い。いつか我らも荒野の塵になる』と」

「荒野のちりに……」

「ええ。妾は…後悔していたのです。陛下の求婚を受けるべきではなかったと」

「えっ…?」

「妾は無役の伯爵家の出身です。強力な後ろ盾など持つはずもなく、役に立てることなど何も無い。王太子妃など務まらないと……」

「……………。」

「昔の話ですよ。今はそういう仕事だと割り切って、気ままにやっています」

  

 王妃様でも悩んだり自信を無くしたりしたんだ…。それでも王妃様はフェザントの文化も常識もちゃんとわかって王様と結婚した。

 …私も自信なんてこれっぽっちも無い。

 自信も常識も何も無い。

 だけど、ウィルのこと諦めきれないからここにいる。


「お母さま、ありがとうございます」

「え?」

「いつも助けてくれてありがとうございます。お母さまがウィルのお母さまでよかった」

「…何を言うのです。妾は娘が欲しかっただけのこと。…あなたが娘になってくれるのだから、息子を産んでよかったと思っていますよ。さ、靴を選んでしまいましょう」


 王妃様、ウィルを産んでくれてありがとう。

 私ほんとに出来が悪いけど、王妃様の娘になれるように頑張るね。

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