表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/119

1.占い屋のおばあさん

 これはよくある物語。

 たまたま生まれついた魔法使いの国。

 古くさい決め事に従って、

 修行に追い出されたのが一年前。

 どうにかこうにか生き延びて来た。

 そう、人間の国で…。



「あ、ここだ〜!このお店の占いすっごく当たるんだってー!ねぇねぇ、私たちも占ってもらおうよ〜」

 

 はい明日の夕食分一名様入りま〜す。


「ここが占い屋…。僕はそういうのあまり信じてないんだけど」


 はい、余計なこと言う男一名…入ってくるのね!


カランカラーン…

 ドアベルの音とともに、古めかしい樫の木の扉が開く。


「うわぁ!雰囲気ある〜!!絶対当たるよ!ここ!」


 そりゃお嬢さん、あなた達人間を研究しまくった成果ってもんですよ。弱いんでしょ?雰囲気に。


「…この仮面、いつの時代のものだろう。流通してるのか…?」


 はい、そこの男、やっぱり余計なこと言うタイプ!


「すみませ〜ん!占って欲しいんですけど〜」


 さてさて出番ですね。さりげなく、さりげなく…。


「…ん゛ん゛、おや、いらっしゃい…かわいいお嬢さん…。うちは特別な占いの館だよ…。お前さんの望みはなんだい…?」

 真っ黒なカーテンをパッと開き、水晶玉を持って登場する。

「きゃー!こわ〜い!!おばあさん本物の魔女??ウィルさま〜!私を守って〜!」

「ははは」

 ったく、エンターテイナーは大変だよ。


「…んん゛…あ゛あ゛…お嬢さん、何を占ってしんぜようか…?」

「あ、じゃあ恋占いで!」

 でしょうね。

「…銅貨一枚だ。そこにお座り…」

 黒い布で覆った机の上、雰囲気を盛り上げつつ水晶玉を台座に置く。

「…名前を」

「リーナです!」

「…歳は…?」

 別にこんな事聞かなくてもいいんだけど、やっぱり研究の結果、雰囲気を高めるのに一役買うらしい。名前とか、年齢が。

「え〜っと…ハタチ…かな?」

 知らんがな。

「…リーナ…では…目を閉じて…思い浮かべるのじゃ…そなたの…思い人を…んんん!!」  


ピカッ!!

 なーんてね。とりあえず水晶玉を光らせてー、思念読み取りーっと。

 んー…うわ、この人…既婚者…?いや、たくさんの…男たち。交代で暮らしてる?え?どういうこと?入れ替わり立ち替わり?

 

ガタンッ!!

「え、おばあさん、どうしたの?」

「…!!…!?あああ…あ゛あ゛あ゛あ゛ーこほっ」

 これは無理だ!これは無理!!

 ふーふー落ち着け落ち着け、ふーーーー…。

「…リーナよ…そなた…体を労るがよい。…さすれば…いずれ…」

「いずれ?」

「いずれ…」

 うわーん、なんて言えばいいの!?このパターンは…初めてだよー!!

「いずれ…は…いずれ…だ。そなたが一番わかっておろう…?」

「おばあさんスゴイッ!!そうなんだー。リーナもわかってるんだけどぉ、なかなか難しくて〜……コソコソ…ちなみにあそこの彼との相性どう?」

「…ヒソ…銅貨一枚じゃ。……見込み無し」

「チッやっぱりか」

「…悩める時はまた来るがよい」

 何とか…うまく誤魔化せた…かな?

 ここで水晶玉を消して…と。


「クスッ」

「!?」

「また寄らせてもらうよ。お ば あ さ ん!」


カランカラーン………

 扉が…閉まる。 

 ギシッギシッと余韻を残して…。



「あーあ、シャロン。今の絶対バレたと思うよ。何なのさ、途中のあ゛あ゛あ゛あ゛ー!は。今までで一番下手だったんだけど」

 客が帰ったと見るや、トコトコトコと使い魔の黒猫…じゃなくて、つぶらな瞳のブッシュベイビーが毒舌を振りまきながら肩の上に乗ってくる。

「テリー…やっぱり今のまずかった!?最後のあれ、あの男…なんか笑ってたよね!?」

「まぁ、おばあさんじゃないのはバレたかもしれないけど、流石に魔女って事はバレてないでしょ」

「バレてたら…バレてたら!?」

「…修行やり直し」

「ノーーッッッ!!ようやく一年経ったのに!!」

「ま、様子見だね。それよりご飯」

「…もう…やだ……!!」


 私は魔女だ。

 誰が何と言おうと、正真正銘の正統派魔女。

 古の理に従い、人の世で修行すること約一年。

 

 私は早く帰りたいのだ。

 この不便で、不自由な、人間の国から…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ