99話 創造魔法(弱)
Dチーム救出メンバーがダンサスの村に辿り着いたのは、夜中だった。
なので、報告は翌日にするという事ですぐ解散した。
ボブも急いで帰宅する、モモが心配して寝ずに待ってると予感したからだ。
案の定、モモは寝ずに待っていた、家に光が灯っていたのだ。
ボブが家のドアを開けると椅子に座っていたモモは立ち上がりボブに何も言わずに抱きつく。
ボブもモモを強く抱きしめた。
「心配かけてごめん。」
ボブが素直に謝った。
「…生きててくれたから大丈夫。」
モモはボブを抱きしめたまま答える。
「…でも…。」
「でも?」
「臭うからまずは汗を流して。」
猫人族は綺麗好きなので、ここ数日身体を拭く事ができなかったボブの汗臭さが気になったモモは泣き笑いながら言うのであった。
翌日の朝。
四人は早速、揃ってギルドにクエスト完了の報告をしに行った。
オーク3体の討伐報酬は貰えたが、昇格には影響がなかった。
通常Dランク帯の討伐対象だからだ。
自分のランクより上の討伐対象は、危険が伴う為、ギルドのルールで昇格判定の審査材料にならない事になっている。
審査材料になると危険を冒す者が増え、死傷率が上がるからだ。
エアリスは不満顔だったが、ルールはルールだ。仕方が無い。
今回は緊急という事で報酬は弾んで貰えたのでシンとルメヤは喜んでいた。
それにE⁻ランク昇格後の初クエストなので、二人には特別なものだった。
「よし、一軒家を借りて彼女を呼び寄せようぜ!」
ルメヤがシンに提案した。
「そうだな。お金もそこそこ貯まったし、Eランク帯の報酬なら呼び寄せてもいいな。」
二人の発言に、タウロとエアリスは目を見合わせた。
「「え?彼女いたの!?」」
「ああ、元いた村に自分もルメヤも彼女がいるよ。ずっと会えてないけどね。」
「…そうだったんだ。僕まだ11歳だけど、なんか負けた気分…。」
「ははは。タウロはまだ子供だからな。俺は19歳にシンは18歳だぞ。いてもおかしくないって。」
ルメヤがタウロの肩を叩く。
「そうそう。タウロはこれからだよ。」
シンも頷く。
「くっ、大人の余裕を感じる!」
タウロはここで初めて年齢差というのを感じるのだった。
シンとルメヤは物件を探す為に、タウロは用事があるという理由で、休みという事にした。
エアリスはタウロについてきた。
「…何でついて来るの、エアリスさん?」
「何かするんでしょ?」
「…うん、だから用事なんだよ?」
「うん、だからついてく。」
エアリスは興味津々という目をしている。
「…えっと。新しい魔法を覚えたからそれを試すだけだから…ね?」
タウロが大した事じゃないよ?と、匂わせてみた。
「そうなの!?タウロのスキルって、クズス…じゃない文字化けスキルでしょ?」
「今、君、クズって言ったよね?」
「…言ってない。」
エアリスはタウロから視線を外した。
「…別にいいけど。」
これを理由にエアリスの追跡を撒けると思ったタウロは、歩き出した。
するとそれでもエアリスはついて来る。
「…わかった。わかったけど、誰にも言わないって誓う?」
タウロが確認した。
「…?うん、誓う。」
一度ため息をつくとタウロは人の気配の無い村の外れまで来るとエアリスの目を忘れて実験する事にした。
今回覚えた『創造魔法(弱)』は、タウロの想像通りならとんでもないもののはずだ。
(弱)が、気になるところだが、それは使ってみればわかる事だ。
「創造魔法…!」
タウロはイメージして、唱える。
シーン
何も起きない…。
「…あれ?」
「…?」
エアリスも何も起きないのでポカンとした。
「無」から、何かを作れる魔法じゃないの?
タウロの予想とは違うようだ。
試しに何度もやってみるが、うんともすんともいわない。
「…大丈夫?」
エアリスが悪戦苦闘するタウロに声をかけた。
もしかして「無」からじゃ駄目なのか?
タウロは何度目かの失敗で違う可能性に賭ける事にした。
マジック収納から木材を出した。
エアリスは「?」だったが、そんなエアリスには構わずタウロは可能性を試す事にした。
「創造魔法…!」
木材を手にタウロはイメージをして唱えた。
すると、まばゆい光と共に木材は継ぎ目のない木製の椅子に変化した。
「え!?」
エアリスは驚く。
「これって、伝説の錬金魔法じゃないの!?」
伝説かどうかは知らないけど、やっと成功した事に喜ぶタウロだった。




