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90話 秘密の箱

コボルト討伐クエストから戻った翌日。

タウロは『憩い亭』で朝食に味噌汁を啜っていた。


「…落ち着くー。」


1人その味に、ほっこりしていた。


数日に一回、朝一番に『憩い亭』で味噌を作る事になっている。

仕込みは料理人達もしてるが、それらは熟成されるには時間がかかる。

今は、タウロの闇魔法で熟成させる事が頼みの綱だった。

なので今日はその日で、多めに作っておいた。


1週間は持つはずだ。

無くなりそうだったら、宿屋に料理人が使いを寄越してくれるだろう。

いつもそういう感じだった。

これも、半年から1年先までの我慢だ。その頃には味噌が熟成されて食べられる様になるだろう。

まぁ、タウロは作る度に手間賃を貰ってるし、食事もタダで食べてるのでウインウインではあった。


「あ、タウロ、ここにいたのね。今日はどうするの?」


エアリスがお店に入ってきてタウロに気づくと声をかけてきた。


「今日は僕は別行動取るから3人はいつも通りでお願い。」


「タウロは何するの?」


エアリスは興味を持ったのか、向かいの席に座ってきた。


「マーチェスさんと商品開発についての相談をね。」


「マーチェスって、すぐ近くの商会の事?」


「そう、そこの代表と木工屋、鍛冶屋さんも交えて話し合いを…」


「私も付いて行っていいわよね?」


エアリスが食い気味に言う。

というか、付いて来る気満々のようだ。


「つまらないと思うけど?」


「なんでよ!それは私が決めるから!」


エアリスの説得に見事に失敗するタウロであった。




マーチェス商会の一室。


マーチェスに木工屋の職人、鍛冶屋の職人が集まっていた。

そこに、子供のタウロとエアリスがいるのは、外部の人間から見ると滑稽な状況だが、当事者達はエアリスを除いて至って真面目である。


「じゃあ、タウロ君、設計図を。」


マーチェスが進行役として、話を切り出した。


「はい、それでは、これです。」


タウロがマジック収納から設計図を取り出して広げた。


「これは?」


一見すると、ただの箱に見えた。

ただ、木と鉄を組み合わせた箱だった。

だが、以前にも自分達が知らない技術提供をしてくれて、この村の発展に協力してくれたタウロの設計図だ。ただの箱ではないだろう。


「箱です。」


「「え?」」


前もって聞いてるマーチェス以外の職人達は声を揃えて聞き返した。


「厳密には、物を冷やす為の箱、冷蔵庫です。」


「「レイゾウコ?」」


「はい。食べ物などを冷やして腐りにくくする為の箱です。冷やす仕組みについては魔道具師から、加工された魔石を買おうかと思ったのですが、ちょっと高くつくので自分で作ってみました。」


タウロはまた、マジック収納から2枚重ねた板を取り出した。


「この板は?」


「この板は張り付けてありますが、内側に、ある魔法陣が描かれています。」


「魔法陣?」


「はい、ここに、魔物が落とす魔石を置くと…」


またも、マジック収納から今度はクズ魔石を数個取り出して板の上に置いた。


すると、合わせた板の隙間から光が一瞬漏れて、魔法陣が魔石に反応して発動したのがわかった。


次の瞬間には魔石から冷気が漏れ出し始めた。


「おお!加工してない魔石から魔力も流してないのに冷気が出るとは凄い!」


通常魔石は加工しなければ、ただの石に過ぎない。

その為、それを加工するのに魔道具師の力がいるのだが、1つ1つ手作業なので、加工済み魔石は良い値段がする。

その為、裕福な家庭にしか普及せず、庶民には手が届く代物ではない。


職人達が驚く中、エアリスもこの光景にびっくりしていた。

魔法陣研究は、正直進んでいるとは言い難い分野だ。

基本的に魔法は魔法陣を描かなくても詠唱で済むのがほとんどで、あまり意味を為さないと思われているからだ。


「この仕組みは一体!?」


職人達、エアリスは興味津々だった。


「この合わせた板の内側に描かれた特殊な魔法陣で、魔石に冷気を出させる細工を施したものです。たまたま僕は魔法陣には詳しかったので作ってみました。」


前世では、魔法陣を研究して、その魔法陣を使って自力でこちらに転生して来ましたとは流石に言えないタウロであった。


「この仕組みは皆さんと契約後、お教えしますが、企業秘密トップシークレットですので取り扱いには気を付けて下さい。それでは、簡単に冷蔵庫の構造について説明します。」


タウロは2重扉にして冷気を逃がさない様にする事や、密閉性が大事なので、職人達の腕が必要になる事を説明した。


職人達は真剣に耳を傾け意見を出し合った。


エアリスもなぜかその話に当然の様に入って来てたので、タウロは内心戸惑っていたが、職人達はタウロが連れてきた子なので、真剣に話を聞いているのだった。

続き読んでもいいかなと思えましたら、

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