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82話 行商人、九死に一生

思考停止して呆けているマーチェスに代わりタウロが一部始終を簡単に話した。


「それはまた…、商人として風上にも置けない行為ですね。」


エドはタウロの説明を聞いて呆れた。


「ですが、取引契約がある以上、うちが不当に横入りすると商業ギルドから厳しい処罰があるので難しいですね。」


「取引はずっと口約束でやってたので、契約書の類はないです!」


マーチェスは二人のやり取りをボーッとして眺めていたが、不意に「あ、自分の話だ!」と正気に戻り二人の会話に割って入った。


「マーチェスさんの言う通り、口約束での取引だったので、取引相手を変更しても問題はありません。あとは、マーチェスさんが扱っている商品を見て判断して下さい。」


タウロがマジック収納から商品を数点出してきた。


「これは…!最近、うちのサイーシ支部で扱っている『刀』の類ですか!?それに、この剣も出来が良い。…この小物のデザインは斬新ですね、この継ぎ目の技術は初めて見ます…。」


エドはダマスキー商会が最近、珍しい良い品質の商品を扱いだした事を噂では聞いていたが、これらがそうなのかと驚いた。


「『刀』はサイーシの物に比べると劣りますが、こちらは大量生産ものだと思って頂いて結構です。でも、品質は悪くないので、十分売れると思いますよ。他の剣や、盾、小物類の木工細工も他所で売ればもっと高い値が付くと思います。」


これは商機だ、エドは確信した。


「それでは早速、商業ギルドに行きましょう。表沙汰にはならないでしょうが、マーチェス殿の被害報告をしましょう。それに伴いうちが正当な理由で支援、取引契約を交わす事をギルドに説明し、後々、ダマスキー商会が文句をつけてこれない様に予防しておきましょう。あちらは横入りされて損害を被ったと商業ギルドに訴えるでしょうから。」


3人はすぐ、馬車に乗ると商業ギルドに行き、一部始終を報告した。

そして、また、戻ってくると商会の貴賓室でガーフィッシュ商会とマーチェスは契約を交わしたのだった。


行商人マーチェスに取って驚きの契約だ。


ダマスキー商会との口約束ではいかに安く買い叩かれていたかガーフィッシュ商会が提示した額を見て気づいたのだ。

それにただでさえ、雲の上の存在である王都に本部を持つ大手のガーフィッシュ商会との契約だった。

自分は夢を見ているのだろうかとフワフワした気分でのサインとなった。




マーチェスは、夢心地のまま、タウロとダンサスの村に戻っていった。


それから、数日が経ち、マーチェスは地主と契約し、支払い期日と決めていた日がきた。


すでにタウロからの支援でマーチェスは支払っているが、この日、ダレーダーの街からの訪問者はその事を知らなかった。


「ここがダンサスの村か。思ったより寂れてないな。新しい建物も多いし、ここに支部を持つ事も悪くない。がはは!」


恰幅のいい、ちょび髭を生やした派手な格好の男は小間使いを引き連れて、村に降り立つと、村の大通りを歩いてきた。


すると、一軒の建物の看板が目に入った。


『マーチェス商会』


「な!なんで、奴の名前が入った看板があるんだ!奴は今日の昼で、破産したはずだぞ!」


ちょび髭の男、ダマスキー商会代表マーマンは、小間使い達にどういうことだと怒った。


「破産なんてしてませんよ。勝手に決めつけないで下さい。」


マーチェスが聞き覚えがある声が表でしたので建物から出てきた。


「マーチェス!何で破産してないんだ!?」


ダマスキー商会代表マーマンは唖然とする。

予定ではマーチェスが独占契約していた鍛冶屋や木工屋、薬剤師などと今日、マーチェスの破産を理由に契約するつもりだったのだ。


「逆になぜ、破産したと思ってるのか理解できないんですけど?」


マーチェスはとぼけてみせた。


「ぐぬぬ…!ワシが意図的に支援を止めたら他に当てがないお前は破産するしかなかったはず…。破産したと言え…!この行商人風情がー!お前の縄張りは今日からワシの物のはずだ!」


マーマンはマーチェスを指さして大声でまくし立てた。


「ほほう、それは興味深いお話ですな。」


ガーフィッシュ商会ダレーダ支部長エドと、商業ギルドダレーダー支部の副支部長がマーチェス商会の建物から出てきた。


それに続いてタウロも出てきた。


「これだけ証人がいると、もう、言い逃れは出来ないですよ?ダマスキー商会代表マーマンさん。」


タウロがマーマンにとって絶望的な状況である事を突き付けた。

マーマンは大手商会の支部長エドと商業ギルドの幹部の顔に気づいて慌てると、


「違う!ただの冗談だ!ははは…、今日はこの後のスケジュールが埋まってるのでこの辺で失礼する!」


そう言い放つと近くにいた小間使いを蹴って急かすと、馬車に駆け戻ってダンサスの村から走り去っていくのであった。

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