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81話 行商人、思考停止する

行商人マーチェスは数少ない人脈であり最大の取引相手を裏切りによって失った。

大量の商品を持っていても売る力が無いのが現状だ。


タウロに借りたお金で、地主に残りを支払う事ができたが、馬車に積んだままの商品を売らないと結局お金が無いし、取引相手がいないのだから今後の商売もままならない。


なのでまただが、今度は自分と一緒に街に行く事をタウロはマーチェスに提案した。




タウロ達が住むダンサスの村の支配者でもあるダレーダー伯爵の領都、ダレーダーの街。


マーチェスを騙したダマスキー商会もここで商売をしている。

決して大きい商会ではないが、ダレーダーの街ではそれなりの商会だ。

一介の行商人の人脈としてはかなり良い方だった。

おかげで行商人を相手にしてくれそうな小さい商会はダマスキー商会の圧力を恐れてマーチェスを相手にしてくれないだろう。


となると、それ以上の商会と人脈を持たないといけない。


ここは、タウロ自身の人脈を利用する事にした。


「マーチェスさん、ガーフィッシュ商会まで、お願いします。」


「ガーフィッシュ商会って、あの!?」


「そのガーフィッシュ商会です。」


「タウロ君、いくらダマスキー商会の圧力に対抗する為とはいえ、あのガーフィッシュ商会は一介の行商人は相手にしてくれないよ…。」


マーチェスは弱音を吐いた。


「とりあえず、行ってみましょう。何もやらずに諦めるのは良くないですよ。」


「そ、そうだね。当たって砕けろだ!」


マーチェスは覚悟を決めるとガーフィッシュ商会ダレーダー支部に向かう事にした。




「これはこれは、タウロ殿、今日はジーロ・シュガー様のお使いでしょうか?」


ガーフィッシュ商会に着くと、タウロに気づいた従業員が、慌ててお店から出てきた。


「それもありますが、今日は支部長に紹介したい人物と商品を持ってきました。」


ちなみにタウロは王都の商会本部が贔屓にしているリバーシ一点物の特別盤制作者の職人、ジーロ・シュガーの弟子という事にして、この支部に一度、特別盤を納めに来ていた。


「わ、わかりました。それでは奥にどうぞ。」


従業員はすぐに奥に二人を招いた。



マーチェスは、店先で断られる事を想定していたので、この対応に「え?」と、思うほかなかった。

完全にマーチェスの思考は停止した。



商会本部からはジーロ・シュガーの弟子のタウロはどの支部も丁重に扱う様、厳しく言い含められている。

何しろ、特別盤を扱ってるのはガーフィッシュ商会だけだ。

一面一面、高額で取引される事はもちろんだが、欲しがる貴族との繋がりが出来る事も大きく、特別盤の価値はガーフィッシュ商会にとってとんでもないものだ。


支部長レベルにはその事をまず、本部に呼ばれた時に理解するように言い渡される。


ダレーダー支部長エドも、ジーロ・シュガー作品を直接王都に届けた際に大いに褒められた。

このジーロ・シュガーという人について商会も行方をちゃんと掴んでいないらしいのだ。

なので、報告すると、特別報奨金まで出た。


それに作品を目にする事が出来るのは役得だった。

何しろ世間では、幻のジーロ・シュガー作品と呼ばれている。

拝むだけでも奇跡だった。

既に自分は1点、目にしたが、その細かい彫刻と斬新なデザインに目を奪われた。

すでに隣の街の支部長には自慢して羨まれていた。

それが、また、弟子のタウロ殿が作品を持ち込んでくれたようだ。

一緒に来ている人物はもしかして、ジーロ・シュガー本人だろうか?

ドキドキしながらダレーダー支部長エドは、二人を貴賓室に迎え入れた。


「それで、今日はどういった御用でしょうか?」


エドが先に話を切りだす。


タウロは挨拶代わりにマジック収納から、一点物である特別盤を1つ取り出すとエドに提出した。


「まずは新作を届けに来ました。」


「こ、これはまた、素晴らしい…!」


エドは新作に、感動した。


「これは、もしかして盤面部分は金属ですか!」


「はい、少し凝ってみました…、と、師匠はおっしゃっていました。」


「発想がまた凄いです!」


エドはまた、隣街の支部長仲間に自慢する話が出来たと笑顔満面だった。


「その話は置いといて、別の話がありまして。」


「ほう、何でしょう?その方と関わりがございますか?」


タウロの連れの人物が雰囲気でジーロ・シュガー本人ではない事はエドは感じていた。


「ダンサスの村と商売する気はありませんか?」


「…ほほう。噂には聞いていますが、あそこの商品はダマスキー商会が取り扱っているはずですが?」


一気に支部長エドは商人の顔になった。


「商品を卸している商人がこちらのマーチェスさんです。」


「…詳しく話を聞きましょう。」


商機を感じたエドはグッと体重を前に移動させた。

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