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78話 この二人…狂ってやがる…

タウロの味噌作りは続く。


こちらの世界で大豆に似た仙豆という豆と、米麹、そして塩を用意する。


まずはこの仙豆を水にひと晩漬ける。

次にその水を吸って大きくなった仙豆を鍋に入れてやわらかくなるまで茹でる。

それを滑らかになるまで潰し冷ます。

そしたらそこに米麹と塩を投入して、すり潰した仙豆を入れて混ぜる。

それを丸めて容器に投げる様に詰める。

魔法『浄化』で雑菌を取り除き、蓋をして仕込みは完了。


ここから半年から1年、冷暗所で保存していれば完成だが、それは時間的に無理なので、タウロは闇の精霊魔法『腐敗』で時間を経過させた。


これで、お味噌の完成だった。


数日間タウロが黙々と何かを作っている事を、シンとルメヤはわかっていたが、完成品が腐ったペースト状の豆と知って、流石にタウロの正気を疑った。


「大丈夫かタウロ君…。『ミソ』というのを手に持って1人笑ってるんだが…。」


「俺も心配になってきた、あれを人に食べさせるって言ってるぞ…!」


二人は正気を失った?タウロに、恐れおののいた。


タウロは料理人を連れてキッチンに入っていくと、1時間が経過し、幾つかの味噌料理を作って食堂に出てきた。


出てきた料理人は笑顔だ、タウロを絶賛している。

二人はその笑顔を見て少し安心した。

料理人が食べて評価したのなら、悪いものではないはずだと。

だが、後日、お腹を壊すこともあるので、やっぱり油断はできない。


二人の前に試食として出されたのは、「味噌汁」「味噌肉」「味噌オニギリ」「味噌野菜炒め」の四品だった。


料理名と、料理にガッツリ味噌が乗ってる事を確認した二人は、お互い視線を交わすと


「絶対明日、お腹壊すじゃん!」


と、確信した。


タウロと料理人は笑顔で勧めてくる。


その笑顔がまた、二人には恐ろしく映った。


この二人…、狂ってやがる…。


絶望するシンとルメヤ。


断れる雰囲気ではない事に覚悟すると、それぞれが料理を口にした。




「「…美味しい…だと!?」」


二人は、美味しさに驚き、感動したが、お腹を壊す可能性を思い出し、二口目には進めないでいた。


「?」


タウロと料理人は二人の表情が明るかったと思ったら、険しい顔になったので疑問に思った。


「口に合わなかったですか?」


タウロが疑問を口にする。


「…あ、いや…。…その、お腹を壊すのが怖くて…。」


その言葉に、タウロと料理人は二人の表情の暗さの原因がわかって笑顔になった。


「これは腐ってるんじゃなく、発酵食品という立派な食べ物ですよ?」


タウロが説明する。


「二人はチーズ好きでしょ?あれと同じ発酵で作られた食品です。なので、お腹を壊す事はないですよ。」


「「そうなの!?」」


「はい♪」


タウロの返事に、安心すると食べ始めた。


「このお肉、味噌で味に深みが出てる気がする!」


「こっちの味噌オニギリ、モチモチしたお米?とあって、美味い!」


料理人も同じ感想だったのか二人に共感して頷いている。


「これは、この『憩い亭』の名物になりますよ!」


料理人は手応えを感じてタウロと握手を交わした。



『憩い亭』には地下がある。前の酒場が使用していたお酒を保存する為に作ったようだが、ここを二部屋にわけ、酒の貯蔵庫と味噌の製造、保存庫にした。

味噌はタウロが闇魔法を使えばすぐできるのだが、自分達でも作れるようになって貰う事が将来的に良い。

なので、料理人達に作り方を指導して、毎日少しずつ作らせている。

半年、一年後にはこの積み重ねが実になっていくはずだ。


そして先に教えたハンバーグも、お客に大好評だった。

やはりただの肉と違って柔らかく肉を感じられる料理なので特に老人には好評だった。

肉は食べたいが固くて食べられないという者もいるのだ。


『憩い亭』は冒険者のたまり場のはずが、味噌料理と相まって、村人も集う交流の場になりつつあった。


だが、これを快く思わず、クレームをつけてきた者がいた。


そう、宿屋の女主人である。


「こっちにも宿屋が出来たらうちはどうすりゃいいのさ!」


生活がかかっているのだから必死である。


聞けば、とんかつを考えてくれたタウロが、プロデュースしたというではないか。

自分の宿が見離されたと思ったようだ。


「女将さん、これを機に宿屋をリフォームしましょう。」


タウロは、それと同時に『憩い亭』との住み分けを提案するのだった。

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