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74話 受付嬢の災難

キラーアント討伐の翌日、騎士爵の配慮で帰りも馬車で送って貰い、4人は昼過ぎにはダンサスの村に戻った。


そのまま、真っ直ぐ、ギルドに報告しに行った。


「あ、みなさん無事でしたか!」


受付嬢のクロエが室内に入ってきた4人を見て、ホッとした顔をした。


「討伐自体は問題なく終えました。」


タウロが代表して報告した。


「…え?キラーアント356匹にクイーン1匹…?」


シンとルメヤが討伐証明の触角と魔石を356匹分と、タウロが回収したクイーンの触角と魔石を提出した。


「…依頼時の数報告の3倍ですね…。それもクイーンって…。」


クロエは目の前に置かれた数と量に呆気に取られていたが、


「本当にみなさん、無事でよかったです。クエスト完了確認しました。魔石も全てこちらで買い取りますね。」


クロエが手続きを始めた。


「あ、手伝います。」


タウロは『真眼』を持っているので鑑定が出来るが、内緒にしている。

今、このギルドに『鑑定』持ちの職員はいない、というかクロエしか職員自体がいないので、買い取り鑑定は一端受付で預かり、クロエとタウロが空き時間に資料を基に査定して処理していた。


「ありがとうタウロ君。明日には『鑑定』持ちの職員と新しい支部長が来る予定だから、今まで手伝ってくれてありがとうね。」


「お、やっと、新しい支部長が来るのか!これで、クロエの仕事が減るな、良かったよ。」


この数か月、1人でギルドを切り盛りしていたクロエの姿を見ているだけに、ボブは素直に喜んだ。


「長かったです…。」


クロエも思い出したのか滝の様な涙を流した。


普段、笑顔が少なく、淡々と振る舞ってる感があったが、やはりプレッシャーはあったようだ。




元々自分は落ち着いた性格というか冷淡というか受付嬢という職業柄、冷静さを持って仕事をこなしていた。


いつ頃からだったか自分でもはっきり冷淡とわかる程、冒険者、特によそ者に対してきつく当たっていた。

それが当時、さも当然という気持ちになっていたのだから怖い。

ダンサスの村全体がそんな雰囲気に包まれ、よそ者は次々にこの村を去っていた。

よそ者だけでなく村の者もこの村に愛想を尽かし去り始めた。


そんなある日、新たな支部長が来たが、すぐに村人達と揉めると辞めていった。

街のギルドから派遣されていた数人の職員も去っていった。

残ったのは地元の薬草採取専門の村人冒険者と自分だけだった。


だが、そこにボブが来た。

自分はいつも通りよそ者に冷淡に対応し、辛辣な言葉を投げかけた。

だが、ボブは去ろうとせず、毎日、クエストを完了させ続けた。


ある日、そこに加えて子供の冒険者タウロがやってきた。

自分はまた冷たく当たったが、その子は礼儀正しくお辞儀をしてお礼を言った。

驚いた。

あまりに久しくそんな態度を取られた記憶が無くなっていたのだ。

その時、少し正気に戻った気がした。

自分は何をしていたのだろうかと。


そのタウロが来てから、ボブと祠の希少種のゴブリン達を討伐してくれると村にかかった呪いが解け、日が経つにつれて長い悪夢から目が覚めた気がしていった。


二人はこの村の悪評を無くす為に動いてくれたり、活気を取り戻す為に村人達に自分の技術を伝授してくれたりして村の再起に貢献してくれた。

おかげでギルドも徐々に活気を取り戻し忙しい日々だったが自分の力不足でタウロに手伝って貰わないとギルドの仕事が回らない日々だった。


クロエはずっと無力な自分に限界を感じていたが、支部長と派遣職員が来てくれればこのギルドも正常に機能してくれるだろう。




…と、思った時期が私にもありました。


クロエは新たに来た『鑑定』持ちの派遣職員には満足していた。

同じ女性で茶色いショートヘアに黒い瞳、スタイルが良く可愛らしいので冒険者受けも良さそうだ。

もう一人支部長の予定の男性は自己紹介で副支部長を名乗った。


自分と同じこの周辺の出身なのか黒髪、黒い瞳、中肉中背の特徴が無い、眼鏡をかけた事務処理が得意と長所をアピールする人だった。


私と同じタイプのようだ、って、違う、そうじゃない!

支部長がいないのに副支部長はいらないでしょ!


と、思っていたら、この男性シロイ・ウフツ(以後シロイ)が、辞令書を持っていた。


「クロエさんに辞令です。今、この辞令書を読むこの時より、冒険者ギルドダンサス支部長に任命する、だそうです。」


えー!


冷静なクロエは声にならない驚きを心の中で上げていた。

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