70話 歓迎会
タウロは、猫人族の女性であり、ボブの彼女のモモを、ボブの家の前まで案内した。
家からは灯りが漏れてきて、窓ガラス越しにボブが部屋の中を歩いてるのが見えた。
「見える通り、ここがボブさんのお家で、モモさんの新居です。それでは、僕は帰りますので後はお二人の時間をお楽しみ下さいね。」
そういうとタウロは、夕暮れを覆う闇に溶け込む様にスーッと立ち去っていった。
「あ、タウロ君ありがとうー!」
闇に消えるタウロにお礼を言った後、モモはドキドキを抑えて玄関の扉の前に立つ。
ノックをした。
こんこん
「はーい!誰だい?」
ボブの声が聞こえて足音が玄関の扉の向こう側に近づいてきた。
ノブを握る音、そして、扉を開ける音。
扉が開くとお互いがお互いを見て感極まり、言葉にならない何かをお互い言って抱きしめ合う、二人とも久しぶりの再会に、言葉らしい言葉は最早必要なかった。
お互いの体温を感じる事で二人ともこれまでの不安を帳消しにし、安心できたのだった。
村を救った冒険者、英雄ボブの家に女性がいる、それも猫人族の美人が。
その噂はすぐに村民の目撃者によってすぐ、村全体に広まった。
聞けばボブが彼女をこの村に呼び寄せたらしいと知った。
それはこの村にずっと住んでくれる意思があるという事だろうと解釈した村人達は大いに喜んだ。
猫人族のモモもすぐに村人達に、この村の家族として大歓迎された。
村長宅でも二人を招いて歓迎会が催された。
「ボブ殿がこの村に定住してくれる事はとても嬉しい事です!」
村長がボブとモモの盃にお酒を注ぎながら興奮気味に言った。
「これからもよろしくお願いします、村長。」
ボブが深々と頭を下げると、モモも追従して頭を下げた。
「ははは、それはこちらの台詞ですよ、ボブ殿。この村はボブ殿の決死の覚悟で行ったゴブリン達討伐のおかげで呪いを解いて貰いました。」
「俺だけの手柄ではないですよ。あそこにはタウロが…
ボブが言いかけたが村長はそれに意図せず言葉を被せて言った。
「モモ殿、あなたの彼氏殿は呪いから我々村人全員の尊厳を取り戻してくれたのです。ありがとうございます。」
「この人が1人で行った事ではないと、本人からは聞いてます。一緒に呪いを解いたタウロ君にも同じように褒めて上げて下さいな。」
「もちろんですよ。その本人がボブ殿は謙遜される方だと言ってましたが、本当にその通りの謙虚な方ですね。そんな方だからこそ村人達もボブ殿を慕うのです。」
「あ、いや、だから、タウロが…
「ボブさんちゃんと飲んでますか!」
ボブはまた訂正しようとするがお酒の入ってきた他の村人達の声にかき消されてしまった。
タウロは末席に座ってボブ達のやり取りを眺めていたが、ホッと安心した。
自分はあくまでもサポートした子供という設定で、英雄はボブなのだ。
じゃないと、自分が目立つと後々厄介な事にもなりかねない。
この村は確かダレーダー伯爵領の一部だ。
王都でリバーシの指導の時に、生徒としてダレーダー伯爵は参加してた記憶がある。
こちらはよく覚えてないがあちらが覚えてた場合、ここでの噂が広まり伯爵の耳に入って気づかれたらまた、リバーシの指南をお願いされたりしそうだ。
リバーシは散々やったから、当分はごめんだ。
というか貴族と関わりたくない。
これだけは絶対だった。
皆、お酒が入り無礼講に為ってきた。
ボブがタウロの席にやってきた。
「すまない、タウロ。俺が手柄を独り占めした状態になってるみたいだ。」
ボブは申し訳なさそうにしていた。
「いえ、逆に子供が活躍する方が不自然だから、ボブさんが主役だと誰でも思いますよ。僕も運良くナイトを倒しましたけど、実際ソーサラーを倒して呪いを解いたのはボブさんですから。」
タウロはボブの背後に控えるモモに説明する様に話した。
「なので、堅苦しいかもしれませんが、この村の救世主はボブさんなんです。胸を張って下さい。」
「お、おう。」
「ありがとう…ね、タウロ君。」
二人に感謝されたがこちらもこちらの事情でボブに手柄を押し付けたので申し訳ない気持ちになるタウロだった。
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