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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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番外編 帝国、襲撃未遂の後日談

 ジーロシュガー領に侵入していた帝国関係者である幻の特殊部隊『金獅子』、北の竜人族の組織『北竜』、帝国の諜報部隊『金狼』は竜人族が領内に張った結界によって全員察知され、一人の兵も逃すことなく駆逐されることになった。


 その為、領外で作戦成功の報告を待っていた『金狼』の諜報部隊は、期間を過ぎても誰一人戻ってこないことを不審に思い、連絡を取るべく随時ジーロシュガー領に侵入するのだが、その度に誰一人として戻ってこない。


 そしてついに残された一人の諜報員は、これを異常事態と判断し、一か月の道のりを急いで駆けて帝国へ報告の為に帰還することになるのであった。


 そして、その報告を受けた『金狼』の総隊長は、判断に悩むことになる。


 連絡がないということは全滅を意味するのだろう。


 しかし、あの『金獅子』に人外の能力を持つ『北竜』、そして、自分の部下の精鋭『金狼』が全滅することが想定できないことなので、その事実を認めることは難しすぎた。


 なにより、その確認を諜報部隊である『金狼』がしないといけないのに、ジーロシュガー領に確認に入った者達は一人も戻ってこないというのだから、それも不可能ときている。


「……『金狼』の諜報員、一人を除いて全滅……と責任者である私が認め、帝室にご報告することにする。なお、この情報は最重要機密であるから、貴様は誰にも漏らすことを禁ずる。……よいな?」


「……はい」


 一人だけ生きて戻った『金狼』の諜報員は、同僚全員の全滅に心を痛め、この数日後『金狼』から脱退後、消息を絶つことになる。


 そして、『金狼』の総隊長は帝室に報告後、責任を取って辞任した。


「ただの一領主のはずだろう!? なぜ『金獅子』どころか『北竜』の四十名まで全滅するのだ……! ──ジーロシュガー領、あの地で何が起きたというのだ……」


 皇太子はこの報告に大きな衝撃を受けていた。


 なにより、『北竜』はこの帝国の影の守護者であるから、それが四十名も全滅することなどあってはならない。


 それどころか『北竜』側からもどうなったのかと説明を求められている。


 帝室は『北竜』から力を貸してもらっている立場だから、力関係も微妙なのだ。


 それだけに、派遣した先で「全滅したと思われます」という、いい加減な報告もできようはずがない。


 だが、事実は事実だ。


 連絡が途絶え、誰一人戻ってこない、それだけを伝えるしかないのであった。


 このことにより、『北竜』は帝室と少し、距離を取ることになる。


 表の理由は、「帝室からしっかりとした事実を聞けない為」であったが、実際は全滅した四十名が精鋭であったから、想像以上に『北竜』のダメージが大きく、帝国への協力どころではなかったのだ。


 つまり面子が保てないくらいに疲弊したので回復するまでは、帝室からの依頼に応えられない状況、というのが本音であった。


 こうして、帝国の強みであった裏工作専門の精鋭達を失った帝国は斜陽の時を迎える。


 その陰に帝国から遠く離れたジーロシュガー伯爵領が、大きく影響を及ぼしていることなど誰も想像することは出来ないのであった。



「タウロ殿、遺体の鑑定からやはり、帝国の関係者だったようです。世間で言うところの幻の特殊部隊『金獅子』、北の竜人族の集まり『北竜』、帝国の諜報部隊『金狼』ということがわかりました」


「……やっぱり、絡んでいたかぁ……。うん? 『金狼』は初めて聞くなぁ。諜報部隊というからには作戦実行の後方支援的な存在だったのかな? ──それにしても、そんな連中を良く見つけることができましたね? 普通、領民に紛れて遠巻きに観察するような相手でしょう?」


 タウロは大勇者の報告に、驚いて聞き返す。


「神域結界師の領分なので詳しくは説明できませんが、彼の結界の中には簡易鑑定してそこから所属判定で警告を発するものがあるので、帝国出身者、もしくは帝国軍所属の括りなどで探知することもできるようです」


 大勇者も仲間の能力の全てを理解しているわけではないので、ざっくりと説明する。


「それはまた、凄いレベルの結界があるんですね……。お陰で僕は帝国の暗殺から逃れることが出来ました。本当にありがとうございます」


 タウロは改めて竜人族の凄さを実感しつつ、感謝を述べる。


「いえ、恩返しとしてはまだ、軽いものですよ。──それで、どうしますか? 帝国が関わっているのなら、こちらから警告することもやぶさかではありませんが」


 大勇者は笑顔でとんでもないことを提案する。


「いやいや、こちらからの警告は宣戦布告になりかねないので、止めておきましょう! ──ちなみにどんなことを考えていました……?」


 タウロは国家間の戦争になりそうな事案なので慌てて却下しつつ、少し興味で聞き返した。


「そうですね……。あちらの帝都の皇帝宮を焼け野原にする……、とかでしょうか? タウロ殿の命を狙うということはそれくらいの警告でも良いかと思うのですが……」


 大勇者は少し考えこむと、そう口にする。


 セーフ! 止めて良かった!


 タウロは思わず内心でそう叫んでいた。


 軽くOKでも出していたら、両国間の戦争待ったなしだ。


 タウロは改めて大勇者に「報復は無しでお願いします」とお願いすると、この話はなかったことにするのであった。

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