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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第677話 新商品を大量生産

 ジーロシュガー領に戻ったタウロと一行は、王都での大騒ぎを知らないまま、領内の発展に勤しんでいた。


 主な街道は子供型自律思考人形(ゴーレム)セトが指揮する岩人形ロックシリーズ十体でかなりの部分整備が進んでいる。


 これなら、ひと月後の領主就任パーティーに間に合うだろう。


 各自治区や貴族には招待状を出しており、参加するとの返信も届き始めている。


 その中にはまだ、交流が再開されていない自治区のものもあるから、参加という事は前向きに受け取ってよさそうだ。


「そう言えば、タウロ。以前カレー屋さんの新商品を考えているって言ってなかったかしら? 思い出してからそれがずっと気になるのだけど……」

 ※662話参照


 エアリスが、執務室で事務処理を終えて昼休憩に入るタウロに声を掛けた。


「ああ、そう言えば、色々あったから忘れてた! それじゃあ、お昼は新商品をみんなに振舞おうかな」


 タウロは、エアリスの指摘で思い出して頷くと、食堂に移動する事にした。


 領主であるタウロが食堂の厨房にやってきたので、料理長以下使用人達は何かミスをしたのかと大慌てである。


「あ、料理長さん、ちょっと厨房を借りていいですか?」


「え? いいですが……、何か作るのですか?」


 料理長は上司であるタウロについては、上級貴族の子息で冒険者をやっていた変わり者としか聞いていなかったので、少し困惑して聞き返す。


「ちょっと、料理をしようと思いまして……。たくさん作るので手伝ってもらえると助かります」


「も、もちろんです。領主様のお手伝いは当然させてもらいます」


 料理長は、貴族が作る料理に少し興味を惹かれたのか頷く。


「では──」


 タウロはそう言うと、マジック収納から材料を次々に出していく。


 その材料を見て、


「これは白パン作りですか?」


 と料理長はいち早く気づく。


「さすが、鋭い。ええ、まずはパンのタネを作ります」


 そう言うと使用人達を指導しながら、タウロ流のパンの材料を混ぜ合わせ、コネていく。


 その量は膨大で、料理長以下、全員が沢山の材料をタウロに指示されながら真似していく。


 それを厨房にある何台もの魔道具オーブンで三十分ほど温め発酵させる事にした。


 その間に、タウロはまた、マジック収納から大量の材料を出す。


 これもかなりの量で、ニンジン、ジャガモー、玉ねぎなどの野菜が厨房に山盛りで積まれ、それを全員で、下ごしらえをお願いする。


 下ごしらえしたものはすぐに、他の料理人達が炒めていく。


 同様にお肉も炒めるのだが、その間にタウロが薬草を含む香辛料の数々をマジック収納から出して、配合していく。


 料理長はこの段階でタウロが何を作ろうしているのか、わからなくなった。


 だが、配合していく事で独特のスパイシーな香りが部屋に充満してくるとハッとする。


 それは料理長が最近、必死に真似しようと通っているお店の料理の香りにそっくりだったからだ。


 料理長は領都の大通りに出来た大きな飲食店にここのところ通い詰めていたのだが、その『カレー』という王都で大人気らしい料理を真似できずにいたのである。


「これはもしかして、カレーですか!?」


 料理長は興奮気味にタウロへ聞く。


「え、ええ……。本当はカレールーがあるのでそれを使おうかと思ったんですが、料理人も揃っていますし、今日は一から仕込んで作っておこうかなと」


 タウロは料理長が目を輝かせて迫るように聞いてくるのでそれに驚きつつ、答えた。


 その間もタウロの手は止まらず、大量のカレー粉が完成、いくつもの寸胴を用意してもらい、そこに調理済みの野菜やお肉を入れ、水とカレー粉を入れて煮詰めていく。


 水分が飛んで本来のカレーではない事に、料理長も気づいた。


「これは、大通りにある『カレー』とはまた、少し違う気がするのですが?」


 料理長は隣でタウロの真似をしてカレーを煮詰めながら、疑問を口にする。


「ええ。今回は、カレーパンを作っているので」


「「「カレーパン?」」」


 料理長と手伝っていたエアリス達も初めての名前に首を傾げた。


「ふふふっ! 完成品を見てもらえればわかりますよ」


 タウロは不敵な笑みを浮かべて応じると、発酵させたパン生地を手のひらで軽く押さえてガス抜きをする。


 そして、それを小さく切り分け、それを濡れ布巾を被せ、さらに発酵の為十分ほど放置だ。


 これも、タウロの指示で全員で同じ要領でやっていく。


 そして、時間が経過すると、パン生地を手のひらで押して再度ガス抜きをし、それを伸ばして、先程作ったカレーを乗せて包んでいく。


「あ、これを焼くと『カレーパン』になるのね!」


 エアリスがようやくそこで完成品が想像できたのか指摘する。


「惜しい! これは焼かないで揚げるんだ」


 タウロはそう言うと、再度、カレーパンの形に生成したものを魔道具オーブンで再度、しばらく温め、発酵させてから取り出し、溶き卵に一つ一つ潜らせ、用意したパン粉をつけていく。


 そして、温めた油にそれを入れ、揚げていくのであった。



 作っていくカレーパンは大量で、まだ、料理人達が次から次に揚げている。


 それをタウロが完成したらすぐにマジック収納に入れて保存していく。


 出来立てを維持する為だ。


 そして、みんなに手が汚れないように一つ一つ紙に包んだカレーパンを配っていく。


「……それじゃあ、頂こうか?」


 タウロは、みんなから早く食べさせろという視線を感じていたので、苦笑するとそう告げる。


「「「頂きます!」」」


 エアリス達を中心に音頭を取ると、全員がカレーパンに被りつく。


 サクッという小気味よい音が厨房の至る所で鳴る。


 そして、


「はふはふ……、熱い! でもすごく美味しい!」


 という声がみんなから聞こえてきた。


「表面がサクサクで中がふわふわ生地のパンとカレーの調和が素晴らしい!」


 料理長は絶賛すると一口一口を味わうように、噛み締める。


「これなら、お持ち帰りもできるし、とてもいいわね」


 エアリスもタウロの考えた新商品を絶賛する。


「さすが、タウロ様です!」


 シオンもいつも通り、絶賛した。


「これは、竜人族の先輩達も食べたがるな」


 ラグーネも恍惚の表情で、サクサクと音を立てながら、頬張る。


「こいつは美味い! 領兵達にも差し入れしたいな」


 アンクも熱さにはふはふ言いながら、食べる。


 そこへカレーの匂いを嗅ぎ分けてきたのか、竜人族の英雄達が食堂にやってきた。


「あ、タウロ殿、今晩はカレーですか!?」


 と嬉しそうに英雄の一人である大勇者がみんなを代表して聞く。


「ふふふっ! みんなにもびっくりしてもらおうかな!」


 タウロはそう言うと、英雄達にもカレーパンを配っていくのであった。

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