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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第673話 王都の冒険者ギルドにて

 タウロ一行と竜人族の英雄達がジーロシュガー領に移動している頃。


 報告の為に残っていた竜人族の英雄達(サポート組)は、王都の冒険者ギルドに赴くと、普段通りに魔物討伐から出た素材、魔石、ダンジョンで得たアイテム、宝物(選別したもの)を、買い取りしてもらう。


 特別室で対応する職員達は、いつも通り、この『黒金の翼』の働きにホクホク顔で鑑定をしていく。


「今回も素晴らしい品質のものばかりですね! これならまた、オークションが盛り上がると思いますよ!」


 職員は鑑定結果に今回も驚きながら、計算していく。


 ……いつもの事ながら、本当に良い品質のものはこちら側で全て回収して我々の村に保存しているんだがな……。


 実際にはそうとは言えず、竜人族のサポートメンバー達は、内心苦笑する。


「それでは、いつも通り、手数料などを差し引いた残りの半分はみなさんの報酬に。残り半分は『黒金の翼』の口座に入れておきますね」


 職員は慣れた様子で大金をこの『黒金の翼』のメンバーに渡す。


「ありがとう」


 サポートメンバーもいつも通り、それを受け取って『マジック収納』に一瞬で収納し受取証にサインする。


 これもいつも通りの流れだ。


 そして、用件が済んだので立ち去ろうとした時、サポート組の一人が思い出したように、一言、職員に告げた。


「あ、そうだ。ダンジョン『バビロン』は最深部まで攻略したので、そのあとの事はよろしくお願いします」


「はい、それはお疲れ様でした。あとの処理はお任せ…………、うん?」


 職員は条件反射で労を労う言葉を告げたが、その内容が頭の中で処理できず、一瞬フリーズする。


「え? ちょ、ちょっと待ってください。 帰るの待ってもらえますか? 今、何ておっしゃいました?」


 すぐに正気に戻った職員は自分の聞き間違えかと思って、聞き返す。


「あとのことはお任せします、ですか?」


「いや、その前ですよ!」


「攻略したので?」


「何を?」


「『バビロン』を」


「……え? あの……、難攻不落の地下迷宮、サート王国建国以前から存在し人類の前に立ちはだかる、あの『バビロン』の事……、ですか?」


 職員は冷静さを保つ事に注力しながら再度聞き返した。


「ええ」


「いつ?」


「数時間前ですかね?」


「……階層の一つを攻略したわけでなく?」


「ええ。最深部に到達して、『黒金の翼』のリーダー立会いの下、無事、迷宮核を破壊し、完全攻略しました」


「えぇぇぇぇー!!?」


 職員はここでようやく、自分の抑え込んでいた感情を爆発させて驚いた。


 特別室には他にも一流の冒険者達も受付で手続きをしていたから、この職員の声にビクッと驚く。


「なんだ?」


「何かあったのか?」


「相手は『黒金の翼』か……。また、凄いアイテムでも持ち込まれたのか?」


 室内にいた者達は、声を上げた職員に注目しつつ、その対面にいるのが『黒金の翼』のメンバーとわかって、勝手に納得する者もいた。


「……こ、この事は、バビロンの街の責任者に報告しましたか?」


 職員はハッとして声を落とすと、聞き返した。


「そちらにも必要でしたか?」


「……そちらにはうちの方から連絡しておきます。……でも、本当ですか? これが本当なら王都をひっくり返すような騒ぎになるかもしれないですよ?」


「そうなのか? いや、そうか……。──我々も長年の時を経て攻略した時、その嬉しさに大騒ぎになったから、こちらでも一緒か……」


 サポート組の竜人族は、普段から落ち着いているタイプなのか、感情の起伏がほとんどなかったが、職員が慌てふためいている姿に、思い直してなんとなく納得した様子だった。


「……そ、それで『黒金の翼』リーダーであるタウロ・ジーロシュガー子爵は?」


 職員は迷宮攻略したチームのリーダーであり、迷宮核を砕いたという本人であるタウロの居所を確認した。


「すでに、自領に帰ってしまったな」


「えぇぇぇぇ!!?」


 職員は二度目の驚きに声をまた出してしまう。


 今度は、周囲の注目をすでに浴びていたので、驚かせる事はなかったが、それでも何やら大事になっているようだと、周囲の者達も理解した。


「……問題か?」


 竜人族の者も、職員の驚きように首を傾げてそう口にする。


「……だ、だって、ダンジョン攻略ですよ……!?」


 職員はまた、すぐに声を落として相手の耳にのみ聞こえるように言う。


「それはわかったが、タウロ殿がいないと問題なのか? ダンジョンは攻略され、その脅威はなくなった。良い事ではないか?」


「……だ・か・らー、ですよ……! この事はすぐにでも王家に報告しないといけません。そうなったら、タウロ殿とみなさんはその絶大な功績の為に、王城に召喚される事になると思います。そして、国を挙げてタウロ殿の功績を称える事になると思いますよ!」


「……タウロ殿はあまり、そういう事は喜ばない方だと思うのだが……」


 竜人族の男は、困ったとばかりに考え込む。


「とにかく、タウロ殿が自領に帰ってしまったのなら、王家が王都に呼び戻す事になるかと思います。攻略したみなさんも一緒ですが……」


「それも困るな。攻略組の者達はすでに休暇の為にジーロシュガー領に赴いている。我々も報告が済んだら各自一時的に休暇を取ることになっているし。強制的な召喚はみんな不満を覚えると思うぞ?」


 竜人族の男は、自分達が国に縛られない一族だから、その事を表明した。


「うっ……。それは勘弁してください……。とにかくジーロシュガー子爵だけでも連絡を取って確認をお願いします」


 職員は相手が難攻不落のダンジョン攻略を成し遂げた冒険者達だから、怒らせると危険なのは素人でもわかる。


 だから穏便に済ませられるよう、タウロへの連絡をお願いするのであった。


「わかった。タウロ殿へはこちらからも連絡をしよう」


 竜人族のサポート組リーダーであるサポは、いつもよくしてくれる職員の願いを承諾するのであった。



「あれ? 何か忘れているような気が……」


 タウロは竜人族の英雄達とダンジョン攻略での苦労話などについて談笑していると、ふと思いついたようにそれを口にした。


「どうしたの? それより、階層最深部の領域守護者のドロップアイテムの扱いに困るわね」


 エアリスがタウロの独り言に聞き返す。


「……いや、迷宮攻略で大事な事を忘れている気がしてね? 何だったかなぁ……」


 タウロは腕を組んで頭を捻る。


「……大事な事? ……あ! ダンジョン攻略した事をフルーエ王子殿下には真っ先に報告しておいた方がいいんじゃない? きっと『親友の僕への報告は後回しなのか!』って、駄々をこねるかもよ? それに王族だからきっと、王宮でも騒ぎに……、って、ああっ!」


 エアリスが冗談交じりに応じていたが、王家が頭に浮かんで、肝心な事を先に思い出したようだ。


「王宮? あっ! そうだった……! ダンジョン攻略は国の事業だったから、攻略報告したら、当然大騒ぎになるのに、その報告を王都残留組のみんなに任せちゃったんだ! ──明日、また王都に向かおう。騒ぎになる前に、フルーエ王子殿下に報告しないと!」


 タウロはようやく肝心な事を思い出すのであったが、王宮ではすでに冒険者ギルドから密かに王家に報告がなされ、騒然となっているのであった。

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