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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第667話 新たな発明品

 タウロ達が小人族自治区、蜥蜴人自治区に交渉に行って、ジーロシュガー領を留守にしていた間、エルフの部下であるグラスローは、ドワーフの職人達を城館に招いて、あるものの開発を進めていた。


 それはタウロが提案していた馬車の馬無しである『クルマ』である。


 しかし、タウロから構造を聞いたとはいえ技術的にかなり無理がある部分も多いから、難航すると思っていたのだが、グラスローはその発想とドワーフ職人達の技術で実現可能な形で作り出そうとしていた。


 それが、『魔力車』である。


 構造はいたって簡単で、ある一定の幅に溝を掘ってそれに沿って動く車で、前世で言うところの路面電車だ。


 グラスローにはタウロも電車について話した事はなかったのだが、タウロの案を基に独自に思いついたらしい。


 種族的に仲の悪いはずのドワーフ達と、構造についても意見を出し合い、かなり練り上げたらしく、すでにトロッコのような形の実験車で試し運転も行って成功したようだ。


 あまりの開発速度にタウロも驚くのであったが、タウロが構造を説明し、それを独自の解釈で昇華させたグラスローがドワーフの技術で作れるものにしたという感じであった。


 すでに、タウロが帰ってきて一週間ほど経っているが、ドワーフ自治区の領境から北部鉱山とシュガー領都の分岐点までの直線に線路を敷く作業をすでに始めている。


「……凄いなぁ。構造が完全に路面電車じゃん……」


 タウロはドワーフ達が街道沿いに石畳を引いて地面を慣らし、そこに鉄の溝を作って同じく鉄の車輪を持った大きな箱の形をした魔力車が走る予定だ。


 動力はクズ魔石。


 後部の箱に石炭でも入れるかのように、クズ魔石を入れるとその魔力で底に描いている魔法陣が発動、力を生み出して車輪を動かすのだが、タウロから教わった歯車を最大限利用して小さい魔力で動くように工夫がしてある。


 当然、ブレーキも付いている。


 構造は簡単で、御者席のレバーを手前に引くと、車輪に留め具が当たって摩擦で止めると同時に、底に魔法陣を描いた箱とクズ魔石の箱が離れる仕組みにする事で動力を失う。


 レバーを戻すと箱同士がまた、接触して動力を得る。


 逆に言うと、レバーをそのままにしておくと、クズ魔石の魔力を失わない限り、ずっと進み続けるという事だ。


 魔法陣に関してはタウロが考えたものが利用されているが、それにしてもグラスローとドワーフの職人達だけで形にしたのはとても凄い事であった。


「タウロ様の発想と歯車や魔法陣の技術があってこそ可能になったものです。残念ながら整備された平坦なレールの上だけをようやく走れるレベルな上に速度も馬車とあまり変わらないのでタウロ様の言う自動車なる動きには程遠いですが……」


 グラスローはタウロに褒められても、恐縮して謙遜した。


「いや、ここまで形にしただけでも凄いよ。少なくともドワーフ自治区領境から鉱山とシュガー領の分岐まで移動できるようにしているだけでも十分だよ」


 タウロはそう言ってグラスロー、ドワーフ職人達を褒める。


 まだ、人を乗せる魔力車の形が不格好で、お客が地べたに座る形だから、その辺はタウロが新たに路面電車の客室の構造を教えた。


「……なるほど。両端に対面型の椅子ですか! 荷物を運ぶついでに人が乗れる形を想像していたのでそれは思いつきませんでした。……確かにそれなら人も楽ですね」


 グラスローはタウロからまた、知識を吸収すると早速、ドワーフ職人達と相談を始める。


 ドワーフ職人達も、


「おお! それはいいな!」


「領主様の発想はすげぇ!」


「座席を両際に設置し、真ん中を空ける形か! いいんじゃないか?」


 と感心してすぐにでも導入しそうな勢いだ。


「タウロ様、これがうまくいったら、分岐点から、領都シュガー領までの道も整備したいのですが、よろしいでしょうか?」


 グラスローは手応えを感じているのか、タウロに相談する。


 なにしろ予算というものがある。


 元々、タウロがロビンとグラスローにはある程度自由な裁量権で動かせる予算を出しているが、領都まで線路を敷くとなったら、お金もかかるというものだ。


「うん、ドワーフ自治区との物流がスムーズになるからいいよ。──そうだな、線路の数を二本にし、線路の切り替えで往復が楽になるようにするといいね」


 タウロはそう言うと、路面電車の線路の切り替え部分を説明する。


「……なるほど。一つの路線だと魔力車が増やせなくて困っていたのですが、これならいくつも増やせますね!」


 グラスローはすぐに理解してまた、ドワーフ職人達との話し合いを始める。


 タウロは一を聞いて十を理解し形にする事に長けているグラスローと、その予算を具体的に計算し、無駄を省くロビンの二人はいい関係だなと思うのだった。


「でも、グラスローさんが最近、領主代理の仕事内容をほとんど覚えたみたいだから、ロビンさんはグラスローに任せて商人に戻るのか……。いいコンビだったから、もったいないけど仕方ないかぁ……」


 タウロはロビンが領主代理の座を退き、コンビが解消される事が残念だったが、約束は約束である仕方がない。


「それにしても、ロビンさんとグラスローさんがいい雰囲気だと思うのは僕だけ?」


 タウロは傍にいたエアリスにこっそりつぶやいた。


「ふふふっ。タウロもようやく気付いたのね? 私とラグーネ、シオンはすでにそうじゃないかなと話していたわよ」


 エアリスが楽しそうに笑みを浮かべて、タウロの憶測に答えた。


「やっぱり!? 二人が結ばれたら、それはそれでいいか。ロビンさんとグラスローさんはいいコンビだから」


 タウロは意外なところでカップルが生まれそうなので、嬉しくなるのであった。

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