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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第663話 神鉄の扱い

 タウロはせっかく採掘したオリハルコンを市場に出さないと宣言した。


 これには一同も驚いて聞き返す。


「タウロ様、それではこの領地の一番の収入源が無くなる事になるのです!」


 領主代理のロビンが真っ先に意見した。


 ロビンはこの領地の現状を一番わかっているはずだから、この収入源は当然必要だと考えている。


「ロビン殿、落ち着いてください。……タウロ様は《《市場には》》とおっしゃっているんですよ。──そうですよね?」


 グラスローはこの数週間ロビンの下で助手を務めてきたから、ロビンの次に領地の事を把握していた。


 そして、タウロが考えもなしにそんな事を言うとも思っていなかったので、一つの推察をもってタウロに聞き返した。


「お? グラスローさんは僕の考えがわかったかな? そう、その指摘通り市場に出さないだけで、売りはするつもりだよ」


 タウロは意味あり気に答えた。


「あ、……そういう事ね」


 エアリスもタウロの考えが理解できたのか一人頷いた。


「なんだ、なんだ? 夫婦でわかり合ってるんじゃないよ。俺達にもわかるように教えてくれ」


 アンクがタウロとエアリスに茶々を入れて詳しく知りたがった。


 ラグーネとシオンもアンクに同調して頷く。


「……それはね? オリハルコンは、宰相閣下を通して王家に買ってもらう事にしようかなと」


 これにはほぼ全員が「あっ!そういう事か!」と声を上げた。


 現在の高騰している相場を考えると、市場に出した方が絶対いいだろう。


 オークションに出せばさらに高値が付く事も予想できる。


 しかし、王家や宰相閣下に売るとなったら、相場より安くなる、いや、タウロならあえて安く売るかもしれない。


 だが、それも計算だとしたら……。


「……なるほどな。リーダーも悪いな。そんな腹芸どこで覚えたんだよ」


 アンクが理解したのかタウロに呆れた。


「え? どういう事ですか? ボクにもわかるように教えてください!」


 シオンがタウロの意図がわからなくてアンクに聞き返した。


「リーダーが言いたいのはな? 王家や宰相閣下に優先してオリハルコンを適正価格で売る事で、その差額を合法的に賄賂として贈るつもりなんだよ」


 アンクが悪い顔をして見せてシオンにそううそぶいた。


「え!? そうなんですか!?」


 シオンはアンクの言う事を素直に信じて驚く。


「ちょっと、アンク! 人聞きの悪い冗談をシオンに言わないの。──シオン。タウロはね? オリハルコンの市場を王家に譲る事でそれを背景に王家の威光を強くしようと考えたの。もちろん、結果的には王家とこのジーロシュガー領の結びつきも強くなることにはなるから、アンクの言っている事もあながち嘘ではないけどね」


 エアリスがシオンに丁寧に説明する。


「なぜ、王家の威光を強くしようと思ったのですが?」


 シオンが、タウロに素朴な疑問を口にした。


「現在、王家は廃嫡した元王太子殿下の不祥事や貴族の最大派閥であったハラグーラ元侯爵問題、そして、帝国の王国への侵攻未遂問題など、国家を揺るがすトラブルが国内外で起きて、多少足元が揺らいでいるんだ。だから、王家の威光を保つ為にもオリハルコンの市場を押さえてもらい、王家にはまだ力がある事を示してもらうのが一番だと考えたんだよ。そして、結果的に王家もこのジーロシュガー領を重要視してくれれば、新参貴族であるうちも無難に過ごせそうでしょ?」


「「「なるほど(でしゅ)!」」」


 ラグーネとシオン、シャルそしてロビンはタウロの説明で全てを理解して納得した。


「……ところで、リーダー。この小人族は誰だ?」


 アンクが、一同が納得している中、ずっと気になっていた事をタウロに聞いた。


「あ! ごめん、紹介がまだだったね! こちらは──」


 タウロは初対面のシャルを紹介して新しい仲間である事を説明した。


「小人族の戦士か……。──リーダー。ちょっとシャルの腕試ししていいか? 今は領兵隊を率いる奴が欲しいし、俺もちょっと考えるところがあってな」


「別にいいけど……、──シャルは、大丈夫?」


「自分でしゅか? いいでしゅよ。実力を示して仲間と認めてもらうというのは戦士同士でよくある事でしゅ」


 シャルは素直に頷くと、腰につけている小さい鞄から、その大きさに不釣り合いな長い木剣を出す。


「え? シャルのその腰の鞄、マジック収納付きだったんだ?」


 タウロが軽く驚いて聞いた。


「そうでしゅ。友人の魔道具師からもらった大切な魔道具アイテムでしゅ」


「へー、そうなんだ? ……そう言えばそのデザイン、どこかで見た事ある気がするなぁ……」


 タウロが思い出せず、首を傾げる。


「そうでしゅか? 友人のジャン・フェローは最近自作の魔道具は市場に出していないはずでしゅけど……」


 シャルは友人の名を口にして首を傾げる。


「ジャン・フェロー……? どこかで聞いた気が……。──あ! 王都の魔道具専門店で僕が以前、大金を払って購入した『マジック収納(大)リュック型』の制作者の名前だ!」※37話参照


 タウロは数年前、マジック収納の能力を覚えるきっかけになった時の事を思い出した。


「そうなんでしゅか? よく知らないでしゅけど、ジャン・フェローは全く表に出ないので無名かと思っていたでしゅが、王都で取引されているでしゅか?」


 シャルは感心して、少し嬉しそうだ。


 ちなみにその魔道具のリュックはガーフィッシュ商会の会長、マーダイ・ガーフィッシュに六割引きで売った経緯がある。


「シャル、そのジャン・フェローを紹介してくれないかな? うちの街で働いてくれると、なお良いのだけど?」


 タウロは商売っ気を出して、交渉する。


 なにしろ特殊魔法を付与できる魔道具界伝説の製作者だ。


 できる事なら教えを乞うて、その技術も学びたい。


「紹介するのはいいでしゅよ。ただ、ここで働くかは本人次第でしゅ」


 シャルも快く応じた。


「ごほん! リーダー、盛り上がっているところ悪いんだが……、そろそろ表に出てシャルの腕試ししたいんだが?」


 アンクが忘れ去られているので間に入って聞く。


「あ、ごめん! それじゃあ、表に出て腕試ししてもらおうか!」


 タウロはアンクに謝るとみんなを連れて、中庭の方へと移動するのであった。

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