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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第658話 蜥蜴人自治区の検問所

 タウロ一行はそのまま、小人族自治区から領境を接する蜥蜴人自治区に向かう事にした。


 案内役は新たに仲間になった小人族最強の戦士シャルことシャルル・ペローである。


 シャルは狼型人形(ゴーレム)ガロの後頭部辺りを特等席にして、進むべき道を指示した。


「ガロ殿、次は右の道でしゅ」


「がう!」


 ガロはシャルの指示に従うと小人仕様の細い街道を進んでいく。


 何気にこの一人と一匹? は、気が合うらしく、シャルがガロの乗り心地を絶賛するとガロもご機嫌で加速するから、領境に到着するのもあっという間であった。


 領境に到着すると、蜥蜴人族の検問所が現れる。


 この辺りの領境は湿地が一帯に広がっており、検問所はその湿地を突っ切るようにある道を塞いで存在していた。


「検問所の門番殿、元イッスン派のシャルでしゅ。これが、許可証でしゅ」


 シャルは検問所の見た目がそのまま蜥蜴である蜥蜴人族にそう言うと許可証を提示した。


「ああ、あのイッスン派のシャル殿ですか! 存じ上げております。確か我が自治区自慢の三尾戦士達相手に、当時、勝ち越した小人族最強の戦士ですよね? うん? その乗り物も珍しいですが……、後ろに乗っている小人族はやたら大きいですね?」


 蜥蜴人族の門番は小人族は人間嫌いが多い事はよく理解している。


 だから、未成年のタウロと女性であるエアリスを大きめの小人族だと解釈したようだ。


 そして、ラグーネは普段、視覚阻害系魔法で人の肌に少し浮かんでいる鱗と頭に生える角は消しており、竜人族である事はわからないようにしているが、今は、解除しているので見た目は同族の血が少し流れる蜥蜴人族に見えなくもない。


 シオンは人族の姿に猫耳と尻尾というこちらも珍しい容姿ではあるが、人族とは思われていないようだ。


 あとはセトとタウロの肩に乗るスライムエンペラーのぺらが珍しいが、それを言ったらタウロ達全員の組み合わせの段階で珍しすぎて、蜥蜴人の門番は違和感しかないのだが、その先頭にいるのがシャルである。


 きっと、珍しい種族の部下を引き連れてきたと勝手に脳内補完して解釈したようであった。


「ああ、こちらは、ジーロシュガー領の領主、タウロ様とその婚約者エアリス様、あとはそのお仲間達でしゅ。自分はその案内役でしゅ」


 シャルは堂々と人であるタウロ達を紹介する。


 ジーロシュガー領? どこかで聞いたような……。──でも小人族最強の戦士シャル殿が案内役なら、どこか他所の自治区のお偉いさんという事か? 許可証は問題ないし、通していいだろう。


 蜥蜴人族の門番はそう考えると、


「了解しました。シャル殿のご来訪を歓迎します」


 蜥蜴人族の門番はそう言うと、最初から開いている検問所の通過を許可するのであった。



「今までで一番すんなり通過できたんだけど……、門番さん何か勘違いしていなかった?」


 タウロは小人族のシャルがジーロシュガー領の領主としてタウロをちゃんと紹介してくれたにも拘らず、あまりにすんなりなのでちょっと疑った。


「もしかしたら、旧ルネスク領の新領主と言った方がわかりやすかったのかも?」


 エアリスもタウロの心配を理解してそう指摘する。


「それもだが、もしかして私は、蜥蜴人族扱いされたのではないか? それはそれで竜人族としての自尊心が傷つくのだが……」


 ラグーネも全くトラブルなく通れた事に別の疑いを口にした。


「ボクはすんなり通れて嬉しいですよ?」


 シオンは半獣人族として珍しい姿だから、いつも正体を見せると珍獣扱いされるので、それに触れられない事を喜んでいた。


「蜥蜴人族は他の種族の区別があまりついていないところがあるでしゅ。もしかしたら、タウロ様達は他所の自治区の異種族扱いされたのかもしれないでしゅ」


 シャルは苦笑して答えた。


「今回は問題が起きず、運よく通れたと思っておこうかな。ジーロシュガー領方面から行ってたら、中に入れたかもわからないわけだし。──それよりも、今、通っている道って、大丈夫なのかな?」


 タウロはガロがある音を立てながら道を進んでいる事の方を気にした。


 その音とは、水の上を跳ねる音だ。


 そう、現在、湿地の真ん中を突っ切る道を進んでいるのだが、その道が水没しているのである。


 ガロは浅いところを軽やかに飛ぶように進んでいるからほとんど気にならないが、バシャバシャという小さい音は鳴っていた。


「……こんなところ馬車で来てたら、馬が嫌がってたわね」


 エアリスもタウロの指摘で気づいて下を見た感想を述べた。


「以前来たときは、水没していなかったでしゅが、雨が降ったのかもしれないでしゅね。でも、道を示す石の棒が水の中から伸びて並んでいるので、道の上を通っているのは確かでしゅ」


 シャルは冷静に両脇の石の棒を指さして答えた。


「……こんな調子で、村や街まで水没しているとかないよね?」


 タウロは湿気で湿度が高い事に気づいてちょっと嫌な顔をした。


「水没しているところは多いでしゅ。小さい村などは湿地の上に足場を組んで存在する感じでしゅね」


「そうなの!? 食料とかどうしているんだろう……」


 タウロは蜥蜴人族の生態系が思わず気になった。


「蜥蜴人族は、魚の養殖や湿地で育つ野菜の栽培や稲作が中心で、稲などは自治区外に家畜用の餌として売って生計を立てていると聞いた事があるでしゅ」


「え、じゃあ、王国内で出回っているお米の元ってここなの!?」


 タウロは驚いてシャルに聞き返す。


「どうでしゅかね? でも、旧ルネスク伯爵領の時は、伯爵が家畜の餌として大量に仕入れ、買い叩いていた時期があったのは覚えているでしゅ」


「……それを知っていたら、最初にこの自治区に交流再開の使者として訪れていたのに……!」


 お米大好き元日本人としては、自治区間の食糧不足問題解決の種が近くにあった事を知って、後回しにしなければ良かったと思うのであった。

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