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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第626話 ドワーフ自治区からの帰途

 鉱山の鉱夫であり、ドワーフ円卓会議の議長の末弟であるローガスは翌日の朝にタウロと再び会うと、すぐに鉱夫仲間達に一声かけた。


 すると余程信頼が厚いのかすぐに腕利きの鉱夫達が集まってくる。


 その者達に、新たな仕事先が隣領の人族の土地だと説明すると、眉を寄せる者はいたが、


「今度の領主の人柄はうちの姉兄達のお墨付きだから大丈夫だ!」


 とローガスが保証してみせた。


「ローガスだけでなく議長達もか!? それなら大丈夫か」


「俺はローガスを信じるぞ!」


「俺もだ!」


「それにここにいても仕事は減るばかりだからな。わははっ!」


「違いない! わははっ!」


 ドワーフ達は不景気で失業しかけているとは思えない陽気さで笑い合うとローガスに従ってジーロシュガー子爵領に赴く事に賛同するのであった。


「じゃあ、俺が一足先に領主殿達と一緒に向かうから、お前達は一か月以内に引っ越す準備を整えてから来てくれ」


 ローガスはそう仲間達に告げると、翌日の朝にはタウロ一行の帰郷に同伴する事になった。


「ローガスさんも一緒に来るの? 準備してあとからでもいいですよ?」


「俺が現場を下見して、みんなの住むところなんかも整えないといけないだろ? わははっ!」


 ローガスは兄達の面影がある笑い方で応じるとタウロの背中をバンバン叩く。


 その太い腕で叩かれると、一発一発がずっしり背中に響く。


「ゴホゴホ……! わ、わかりました。それでは旅立つ準備をしてきてください」


「それならすでに済んでるぞ?」


 そういうローガスの格好は上着はシャツに厚手のオーバーオール、丈夫そうな革靴、腰には工具入れポーチなどがいくつか下がっているだけだ。


 それ以外は身の回りの品は一切なく、リュックなど大きな入れ物もない。


 それに、肝心の鉱夫の必需品と思われるトンカチやツルハシ、スコップなどは見受けられなかった。


 まあ、それらはこちらで配給するつもりではいるが、ドワーフなら拘りの道具とかありそうだと思っていただけに意外である。


「え? そんな軽装で大丈夫ですか?」


 タウロは一応確認する。


「ああ、そういう事か。俺はマジック収納持ちだからな。──ほれ」


 ローガスはそう言うとマジック収納から、大きな戦斧を取り出して見せた。


「なるほど、それじゃあ、大丈夫そうですね」


 タウロはローガスの軽装に納得すると、自分達の滞在する宿屋へと狼型人形(ゴーレム)ガロの背中に跨って一緒に戻る事にした。


 そこにブサーセン商会の面々が待っているからだ。


「これは乗り心地が良いな! これは誰の作品だい?」


 ガロの背中でローガスは楽しそうに聞く。


「あ、これは僕が作製したものです。意思のある人形なんです、ね、ガロ?」


 ガロは「がう!」と答えて大きく飛翔する。


「おお! こいつは凄い! 兄貴達の手紙ではこのガロについては書かれていなかったが、タウロ殿はとんでもない職人だな!」


 ローガスはドワーフらしく一流職人への尊敬の念が強いからタウロに改めて尊敬の念を伝える。


「そこは職人というか創造力というか……」


 タウロは褒められ過ぎて恐縮するのであった。



 宿屋に戻った一行はブサーセン商会の面々と合流すると、早速、岩窟の街をあとにする事にした。


 すでに準備は出来ており、道案内役であるドワーフのボーゼも待機していた。


「あ、ローガスの旦那? どうしたんです? お見送りですか?」


 ボーゼはローガスがタウロ達と一緒なので、聞く。


「一緒にジーロシュガー領の鉱山に行くんだよ」


 ローガスは愚問とばかりに応える。


「旦那、マジですか!? こっちの鉱山長の一人でしょ! 急にいなくなって大丈夫なんで?」


 ボーゼは呆れて指摘した。


「え、そうなの? ローガスさん、それなら後日でもいいですよ?」


 ローガスがお偉いさんと初めて知って驚くタウロであった。


「大丈夫だって! 姉貴には、ジーロシュガー領に行ってくるって断り入れておいたし、副長にあとは丸投げしてきた! わははっ!」


 ローガスはそう言うと、馬車ではなく、ガロに跨る。


 どう考えても大丈夫だとは思えないが、最近仕事は減っていると言っていたから、意外に引継ぎは簡単だったのかもしれない。


 いや、そうだと信じたい。


 そして、ローガスはどうやらガロに乗るのが気に入ったようだ。


 先頭にはアンクが乗っているのだが、その後ろにピタッと引っ付いている。


「……おっさんに密着されたくないぞ? ちゃんとベルトで固定できるから、離れて座ってくれ」


 おっさんのアンクがそうぼやくのであったが、ローガスは気にする素振りもなく、


「さあ、いこうか!」


 と出発を促すのであった。


 こうして、タウロ一行はブサーセン商会の護衛任務と、ドワーフ円卓会議との会談によって、交流の再開と交易所の再設置による交易再開、そして、労働力の確保と大成功と言える結果を持って帰郷する事になるのであった。


 帰路は高速路を数日かけてゆっくり移動し、検問所に到着した。


 そこで道案内役のドワーフのボーゼと別れる事になった。


「タウロ殿、それではお元気で。いつか遊びに行きますよ」


 ボーゼは名残惜しそうであった。


「ええ。いつでもお越しください。ボーゼさんなら大歓迎ですよ」


 二人は握手を交わすと検問所をあとにするのであった。


 その後、タウロ一行は途中、来る時に立ち寄った山村に再び寄ると、村長や村人達にドワーフ自治区との交流が再開される事になった事を報告して大喜びされた。


 また、山村が活気づくと考えたからだろう。


 さらにそこでタウロが新領主である事も知って、山村全体で歓迎の宴会を開く事になり、その日は一晩飲めや歌えのどんちゃん騒ぎになる。と言っても、食事の提供は、タウロ達であったが。


 ブサーセン商会のブサーセンも山村の現状を知っている一人だったから、一緒に盛り上がり、タウロもその気持ちが少なからずわかったので珍しく一緒に騒ぐのであった。

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