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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第622話 ドワーフ円卓会議議長

 岩窟の街の中央にそびえる大円柱に沿って伸びる道はのぼり用と下り用で別になっている。


 タウロを乗せた馬車は当然のぼり用の道を通って上部へと移動していく。


 その馬車の窓から岩窟の街を見降ろせるわけだが、改めてその光景にタウロは感銘を受けた。


 これが、何世代ものドワーフの手によって山と地中の内部をくり抜いてできたものなのだ。


 初めて見る者は圧倒されてもおかしくないだろう。


 だが、ふと気づく事もある。


 街の一部には灯りが灯っていない区画もあるのだ。


 その部分はさびれて人がいないように見える。


 いかに偉大な街でも、景気の好不調はあるのだろうと、タウロは気づくのであった。


 しばらく町全体を眺めながら大円柱を上がっていくと、道の終点に到着した。


 そこは、大円柱を中心に広場ができており、隅には馬車が何台も並んでいる。


 それに他のスペースには公園や屋台が並ぶ場所などもあり、どうやらドワーフ円卓会議の関係者が仕事ができる環境が、出来上がっているようだ。


 タウロの馬車は、大円柱に大きな両開きの扉がある玄関の前に止まる。


「……到着しました。ようこそ、岩窟の街の中枢、ドワーフ円卓会議庁舎へ」


 一緒に馬車に乗っていた眼鏡をかけたドワーフがそう言うと馬車から先に降りてタウロを先導する。


「大きな扉ですね……!」


 タウロが素直な感想を漏らす。


「ええ、ここは巨人族の代表が訪れた事もあるので、それに対応した作りになっています」


「巨人族!? 僕は見た事ないですが、こんなに大きいのですか?」


「巨人族の族長が昔、訪れた時に合わせて庁舎の全面工事を行い、巨人族より大きな作りになりましたから、この大きさよりは小さいですよ」


 眼鏡のドワーフは少し誇らしげに応じた。


 巨人族なんているんだ……。大きさからすると岩人形ゴーレムのロックシリーズより少し小さいサイズ、三メートル半くらいかな?


 タウロはまだ出会っていない種族がいる事に夢が膨らむのであったが、今はまず、面会である。


 気を引き締め直すと、開かれた扉を潜って中に入るのであった。


 狼型人形(ゴーレム)ガロに跨って同行していたエアリス達も後に続く。


 ぺらは相変わらず、タウロの肩の上に乗っているが、ドワーフから止められないから、問題はなさそうだ。


 ガロはさすがに中には入れられないという事で、駐馬車場で一緒に待機してもらう。


 ドワーフ円卓会議庁舎内は、巨人族に配慮した作りの為、天井がひと際高い。


 正面には大階段があって、両脇には庁舎の職員が並ぶ受付で、領民相手に手続きなどを行っているようだ。


 領民達の待合席もあり、ドワーフだけでなく、あらゆる種族の者が手続きの為に待っている。


 奥には沢山の机や棚が並んでおり、そこでも職員のドワーフ達が忙しく動いていた。


 タウロ達は正面の大階段を上がって奥に進み、扉で仕切った廊下を何度か通過すると豪華な扉の前で止まる。


「ジーロシュガー子爵の使者様がお出でになりました!」


 眼鏡のドワーフが扉の前でそう大きな声で告げる。


「……入れ!」


 扉の向こうで一言許可する声が聞こえると扉が開く。


 そこには文字通り大きな円卓を囲んで座る威厳のあるドワーフ達が待っているのであった。



 タウロ達は室内に通されると、多分この円卓会議の議長と思われるドワーフの女性が座っている、正面の空いた席に座るように促される。


 タウロは席の横に立ってお辞儀をした。


 エアリス達は離れた壁際の席に座ってその様子を見ている。


 正面に座る議長である女性ドワーフは、起立してタウロの挨拶に応じて頷き、歓迎の言葉を告げた。


「私はドワーフ円卓会議議長を務めています、ガスラという者です。そして、この円卓に集う者達は民によって選ばれたドワーフを代表する議員達です。ジーロシュガー子爵の使者殿、ようこそお出でになりました。どうぞ、お座りください」


 ガスラと名乗った茶色い髪と目をしたドワーフにしては身長が高い女性は、自己紹介と共に席に座るように促す。


 タウロが着席すると、議長のガスラが改めて口を開く。


「今日の目的は交流の再開でしょうか?」


 議長ガスラは早速本題に入った。


「はい。新領主は余所者なので過去に前領主とドワーフのみなさんとの間に起きた確執については詳しく存じ上げておりません。しかし、多少の事情は聴いています。その上で、交流を再開させお互いの益になる話し合いが出来ればと考えております」


 タウロは話が通じそうな議長ガスラに、本題について駆け引きなく答える。


「ふざけるな! 前領主ルネスク伯爵が過去に行った事を新領主が知らないだと!? そんな無知な人間の使者如きと話し合いなど出来ようはずがない! 我々と話し合いをしたいならちゃんとした使者を立てるべきだろう!」


 ドワーフの議員の一人が、タウロの言葉に食って掛かった。


「そうだ!」


 他にも賛同する者がいたので、ドワーフ円卓会議は混乱しそうな雰囲気になろうとした。


 しかし、次の瞬間。


「お静かに! ここはドワーフ円卓会議の場です。議論を戦わせるのならともかく、感情論はもってのほかです。喧嘩がしたいのであれば出て行きなさい!」


 ガスラ議長が叱責するとドワーフの議員は不満げだが、静かになる。


「……それに……、相手も誠意を持ってここに訪れていると思いますよ。ですよね? ジーロシュガー子爵の使者殿。……いえ、ジーロシュガー子爵本人だと私は信じていますがどうですか?」


「「「え?」」」


 ドワーフの議員達だけでなく、言われたタウロとエアリス達もからも声が上がる。


「……気づいていらっしゃいましたか。──はい、僕が新領主のタウロ・ジーロシュガー子爵です」


 タウロはあちらが気付いているなら、とぼけるのは失礼だと考え、正直に本人である事を認めるのであった。

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