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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第618話 続・自治区の検問所

 閉ざされて久しいドワーフ自治区との間にある検問所の大扉が音を立てて開いていく。


「タウロ君、これは一体……!? ──大丈夫なのか、これは……? もし、嘘だとバレたらとんでもない事になるのでは……?」


 タウロ達『黒金の翼』一行の雇い主である商会会長のブサーセンは、タウロがハッタリで検問所の大扉を開かせたと勘違いして動揺した。


 それはそうだろう、偶然雇った冒険者チームのリーダーが突然、新領主の使者を名乗り始めたら、疑って当然である。


 まさか、新領主の使者どころか、領主本人だとは絶対誰も思わないだろう。


 ブサーセン商会の従業員達は、このモーゼの十戒のような光景に何が起きているのか理解出来ていなかった。


 なにしろ時間をかけて信頼関係を築いてきた自分達の主人であるブサーセン会長をもってしても門前払いされそうになっていたのだ。


 それが、雇った少年冒険者の一言で大扉が開くなど想像すらしない出来事であった。


「とりあえず、僕を信じてください。あとは検問所を通してもらい、中で詳しい話をしましょう」


 タウロはそうブサーセンに告げる。


「……そ、そうですな。でも、本当に大丈夫ですかな? 中に入った瞬間捕縛されるのは勘弁なのだが……」


 ブサーセンはまだ、タウロの言葉とこの状況に半信半疑であったが、タウロに促されるまま御者に命じて馬車を動かし、検問所の大扉の中に入っていく。


 二台の馬車に続いて、アンクが跨る狼型人形(ゴーレム)ガロが続いて入っていくのだが、これにはドワーフ兵達も興味深げに視線を送る。


 ドワーフ族はなにしろこういった技術の詰まったものには、職人魂が刺激されるからだ。


 検問所を通り過ぎた山を大きくくり抜いた広場に一度馬車を停車させると、タウロ達よりもガロに注目が集まっていた。


 検問所の中には待機しているドワーフ兵が数十人もいる。


 この大きな広場は天井に開けられた数か所の穴から日差しが入ってきており、鏡を使ってそれらは各所に反射して室内全体を照らしていた。


 そこに、偉そうなドワーフが城壁から降りてくる。


 そして、タウロの証言と証拠を詳しく確認する為、タウロ一人だけ別の部屋に案内する。


「私はこの検問所の隊長です、よろしく。──それでは、先程の証拠品とやらを拝見させてもらいましょうか」


 ドワーフ隊長はそう言うと、タウロのマジック収納から取り出された領主の使者としての証明である書状などの確認を求めた。


 その時に、タウロは新領主使者の証明の一つになるかと思い、小剣『タウロ・改』を示す。


「……書状に封蝋されている家紋はジーロシュガー子爵のもののようですね……」


 ドワーフ隊長は差出人が新領主ジーロシュガー本人を示す封蝋を確認する。


 その家紋は魔道具ランタンと濡れない布を表す反物が紋章になっており、ドワーフ隊長は鑑定能力を持っているのか、一目で本物だと判断した。


「それにこの小剣、製作者はドワーフ族の職人、アンガスのものではないか! これも本物に間違いないな……。──それにしても、ここを出て奴め……、鍛冶師の腕を相当上げたという話は本当だったか……」


 ドワーフ隊長は、製作者であるアンガスを知っているのか、小剣をいろんな角度から眺めて唸ると、タウロに返却する。


「アンガスさんを知っているんですか? 僕は一応、アンガスさんの下で鍛冶について学んでいた時期があるんですよ」


 タウロはアンガスの知り合いらしいとわかって、話のとっかかりとして聞いてみた。


「なんと!? そうか奴の弟子か! あいつは元気にしているのか? 鍛冶師として名を馳せているという噂は聞いていたのだが、まさか、これ程のものを打てるようになっているとはな……。私もうかうかしてられんな……。──これで貴殿らの入国を許可する」


「ありがとうございます! アンガスさんも元気ですが、ランガスさんも元気ですよ」


「弟のランガスの方も知っているのか!? それなら使者を名乗らずとも、二人の名を出してくれた方が早かったぞ? わははっ! ──そうだ。岩窟の街まで、うちから一人、道案内を付けよう。なにしろこの通り、山々に穴を掘って道を繋げているのでな。余所者はその複雑さにすぐに迷ってしまうのだ」


 ドワーフ隊長は懐かしい名に喜ぶと、笑って親切にしてくれる。


 先程までの難しそうな表情が嘘のようだ。


 タウロはドワーフ隊長のお言葉に甘えると、お礼を言ってみんなのいる広場に戻っていくのであった。



「──道案内の者には先々の宿泊先も聞いてくれ。それに道案内の者には、俺から議長にお主らと面会してくれるようにとの言伝を頼んである。だからあとは大丈夫だろう。それに、アンガスとランガスの名を出せば、大概の事はどうにでもなるぞ。──それでは良い旅を」


 ドワーフ隊長は意味ありげに言うと、タウロ達一行の馬車を見送るのであった。



「アンガスさん、ランガスさんって、この自治区の有名人なのかな?」


 タウロはドワーフ隊長の言葉をエアリスに話すと、そうつぶやいた。


「タウロの言うアンガスさんは王家も評価する一流鍛冶師なんでしょ? ランガスさんは竜人族の村でも評判の一流革細工職人だったし。二人共、職人としてドワーフ族の中でも評価が高い人物なんじゃない?」


 エアリスはドワーフが職人を評価する種族である事は、理解していたので当然と思える答えをする。


「確かにそうだね……。それじゃあ、自治区の中心地、岩窟の街まで行こうか!」


 タウロはエアリスの言葉に納得して出発を伝えると、同乗しているブサーセンはタウロに何がどうなっているのか状況説明を求めるのであった。

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