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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第611話 新領主とその代理

 城館内に通されたタウロ一行は執務室に通された。


 応接室でないのは客人ではなく領主だからだろう。


 自ら案内するガーフィッシュ商会から派遣されている犬人族の女性ロビンは、タウロに執務室の椅子を勧めると、自らはその前に立ってタウロに挨拶をする。


「改めまして、私の名はロビンと申しますのです! タウロ様が赴任するまでの間、ガーフィッシュ商会代表マーダイ・ガーフィッシュの命令により、このジーロシュガー子爵領の代理統治を行っておりましたのです。この地は元々前領主の統治が散々で領民の生活は良くなかったので、勝手ながらまずは税の軽減と悪徳官吏の一掃による改善から始め、借金の整理も行いましたのです。さらには領内での収益の為に、各自治区、王家直轄領秘境特区との交渉を開始、秘境特区の一部との交易の再開に伴い、その利益で領内の赤字を埋める事に成功したのです。現在、黒字化しておりますが、それもほぼゼロなのでこれからの運営が大事になって来ると思われるのです!」


 ロビンは新領主であるタウロが大変になる作業を全て行い改善してくれていた。


 なにより、徹底的に無駄を省く為に、多すぎた使用人を一人一人面接してその必要性の有無を判断し怠惰な者、裏で横領していた者などを処罰、クビや領外への追放など大鉈を振るっていたから、見た目とは違うシビアな判断に驚く。


「この半年のロビンさんが行ってきた改革は凄いですね……。領地がこの短期間で健全化されているのが、良くわかります」


 執務室の横にある大きな棚から、ロビンがタウロの前にこの半年間の政策を記した資料を出してくれたので、それに軽く目を通して感心する。


 エアリスもそれを後ろから見ていて驚く。


「タウロがいなくても、ロビンさんに任せておけば、この領地は安泰なんじゃない?」


 エアリスは素直な感想を漏らした。


「いえ! 私はあくまでも商人なのです。効率化の為に色々とやらせてもらいましたが、それ以外では上手くいっていないのです! 特に王家直轄領秘境特区との交易再開以外は上手くいっていないのです……。各自治区の代表達は、前領主ルネスク伯爵の差別政治のせいでこの地の人々を信用しておらず、交易再開の目途が立っていないのです」


 ロビンは領主代理として限界を感じていたのか、後半は元気なく反省する姿を見せた。


「その前領主の赤字体質をわずか半年で黒字にしたのは、大いなる功績ですよ。僕だったらもっと時間が掛かっていたかもしれません。それに、ロビンさんは領民の信頼が厚いとガーフィッシュさんからも聞いています。そのお陰で鉱山の発見にも繋がったと聞いていますよ」


 タウロはこれまでの功績を改めて称賛した。


 実際、これ程の手腕をもった代官はそうそういないだろう。


 大ナタを振るった手腕は、実際非凡なものを感じる。


「ガーフィッシュ会長の命令でタウロ様の代理を務めたまでなのです。領民のみなさんは感謝してくれましたが、私はもとの生活に戻しただけなのです。私はやはり商人としてお店を切り盛りする方が向いていると思ったのです」


 ロビンは見かけがとても美人でスタイルの良い、クールな犬人族の女性に見えるのだが、人が良さそうな話し方に好感が持てた。


「ロビンさんは人を見抜く目も鋭いみたいですね。ここに案内されるまでの間に見かけた、使用人達の動きがテキパキとしていましたから」


 タウロは謙遜するロビンを褒めた。


「犬人族なので人を嗅ぎ分ける嗅覚は鋭いのです!」


 そこは犬人族としての誇りがあるのか、ロビンは大きな胸を張って自慢した。


「これは、ガーフィッシュさんからの伝言なのですが、ロビンさんをこき使って良いと言われているのですが……、どうでしょう? 引き続き僕の代理としてこの土地の統治をお願いできないでしょうか?」


「ええ!? 私はタウロ様に引継ぎ後、この街におけるガーフィッシュ商会の支部を任される事になっているので、困るのです」


 ロビンは慌てて断りを入れる。


「うーん、僕は領地経営は初めてですし、ここ半年で黒字化してくれた経験者であるロビンさんが助けてくれるとありがたいのですが……。それでは、ガーフィッシュさんとの約束通り、次の代理が見つかるまでお願いできますか? 僕も冒険者として色んな所を旅している身なのでそれだけでも助かります」


「うっ……。ガーフィッシュ代表からは、『うちが勝手に購入した領地だから赤字のままは不味い。是が非でも黒字にしておいてくれ!』と命じられていましたのです。それも達成できたので商人に戻りたいのです……。でも、それと同時にこちらもこの領地を勝手に用意した以上、タウロ様の冒険の邪魔をしないようにともこの手紙には書かれているのです。ですから、私に代わる代理が見つかるまでなら大丈夫ですよ?」


 ロビンはタウロの頼みに言葉を詰まらせると、少し考える素振りを見せたが、商会の発展に大きな貢献をしているタウロの頼みである、断るわけにはいかないと代替案を出して承諾した。


「本当ですか! ありがとうございます! それでは今後の領地運営についての展望をお聞かせ願いますか? 参考にしたいので」


 タウロはこの頼りになる犬人族の女性ロビンに感謝すると詳しい話を聞く事にするのであった。

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