61話 呪いのトーテム
意識が戻ったのは、タウロが自分にポーションをかけてくれたからだった。
水浸しになってたのはタウロがそれだけ貴重なポーションを沢山かけてくれたのだろう。
そんな思いの中、タウロはゴブリンソーサラーの気を引いて、自分から地面を転がりながら逆の方向に離れていった。
見ると目の前にはゴブリンナイトの死体があった。
記憶に無いがタウロがやったのか?
首を一突きしたようだ。
あ、そんな事を分析をしてる場合じゃない。
タウロを助けないと。
起き上がると自分に背中をみせてタウロに火魔法を叩き込もうとしているゴブリンソーサラーの首を刎ねていた。
「ボブさん助かりました。」
タウロがボブに駆けつけてくると笑顔でお礼を言った。
「いや、助けられたのは俺だよ。ありがとう。」
疲れた顔をしたボブが疲れた笑顔を浮かべた。
「ボブさんは一端、この2体の右耳と魔石の回収後、ギルドにこの報告をお願いしていいですか?」
「お、おう。タウロはどうするんだ?」
「祠の中を見ておこうと思いまして。」
「1人で大丈夫か?」
「はい、危険があったら逃げるので大丈夫です!無理はしません。」
「そっか、じゃあ、俺は回収後村に戻るよ。」
ボブがそう答えると二人はその場で一旦別れた。
タウロは祠の前に到着した。
「…祠の中には誰もいないようだけど…。」
入口付近から覗くと暗闇に闇の精霊が沢山集まっているのがわかる。
タウロは精霊が視える様になってからこんなに1か所に精霊が集まってるのを視た事が無かったので、『気配察知』には何もかからないが、警戒感は失わないようにした。
タウロは暗いので精霊魔法で光の精霊を召喚して周囲を照らして貰った。
これで、足元を気にせず安全に歩ける。
奥に入って行くと鼻を突く悪臭がした。
動物の死骸がいたる所に散乱している、悪臭の元はこれだろう。
ただ、ボブが嗅ぎ分けたきな臭さはこれではないはずだ。
そして、闇の精霊の数も増え、闇が濃くなっていく。
周囲を照らしてくれる光の精霊の灯りと闇の精霊が空間を押し合う不思議な光景が目の前に展開していたが害はなさそうなのでさらに奥に行くと、行き止まりになっていた。
そこには石の祭壇があり、丸い石が鎮座している。
闇の精霊はその周囲を覆う様に濃くなっていたが、遠巻きに距離を取っているのがわかった。
その手前にはゴブリン達が設置したのだろう色んな骨を組み合わせた呪術を行ったと思われるトーテムが置いてある。
「…とりあえず、汚いし、臭いからまずはこれをキレイにして処分するか。」
タウロはいつも体をキレイにするのに使っている魔法『浄化』をこのトーテムに唱えた。
するとどうだろう、砂が風に飛ばされて霧散する様にそのトーテムは消えてなくなった。
「…もしかして、呪いがかかってた?…触らなくて良かった…!」
タウロは慌てたが、何も起きなかったので安心すると
「動物の死骸なんかでも臭いがきついし祠全体を『浄化』でキレイにしよう。」
そういうと範囲を広げて集中すると『浄化』を唱えた。
するとどうだろう。
祭壇に鎮座する丸い石に闇の精霊達が少し近づいて行くのがわかった。
「?…君達はその石が気になるのかな?」
タウロは闇の精霊に話しかけた。
もちろん返事はないのだが、試しにその石にまた『浄化』を唱える。
すると闇の精霊である黒い光球達はまた少し近づいた。
やはり、精霊達はこの丸い石に近づきたい様だ。
なので、タウロは立て続けに『浄化』を唱え続けた。
が、唱え続け過ぎたタウロは魔力切れを起こし、その場に崩れる様に膝をついた。
「…流石にこれ以上は今日は無理だよ、ごめんね。」
強い疲労感に襲われたタウロは魔力回復ポーションを一瓶飲むと
「明日また来るから。」
と言って、祠を後にし、村に戻る事にした。
流石にこれ以上長居するとボブが心配して探しに来ると思ったのだ。
タウロは入口に向かいながらマジック収納でゴミを回収しながら進み、祠から出ると側にマジック収納から1か所にまとめてゴミを出して置くと、村への帰路に就くのであった。




