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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第608話 新領地への旅路

 バリエーラ公爵領でタウロ達一行は、数日滞在する事にした。


 滞在期間に、バリエーラの街で色々と仕入れたり、この一年の間に出来ていた現地のガーフィッシュ商会の支部長と、とある商品についての打ち合わせをするなどして、忙しく過ごしたが、目的地は自領に向かう事だから、早々にムーサイ子爵に見送られながら旅立つ事にした。


「次来る時は、ジーロシュガー子爵領の商品を売り込みに来る時でしょうかね?」


 ムーサイ子爵は冗談でそう言う。


「はははっ。さすがにそういう仕事はガーフィッシュ商会に任せますよ。それではこれからも宜しくお願いします。それでは、失礼します」


 タウロは改めにムーサイ子爵と握手を交わすと、マジック収納から狼型人形(ゴーレム)ガロを出して全員が乗り込む。


「これは凄い……! 私が知る人形使いとはまるで別物ですね。最後に良いものが拝めました。──タウロ殿、それでは良い旅を!」


 ムーサイ子爵は父であるバリエーラ公爵に代わってそう挨拶すると、タウロ達を送り出すのであった。



「バリエーラ公爵領都はこれで二度目だったが、やはりいい雰囲気の大きな街だったな」


 ラグーネがガロの背中で揺られながら、見る見るうちに小さくなっていく領都を背に感想を漏らした。


「本当だね。新領地がどんな雰囲気の街かわからないけど、あんな街だといいなぁ」


 タウロはそう言うとまだ見ぬ自分の新領地とその領都に思いを馳せる。


「タウロの気持ちはわかるけど、あまり期待しちゃ駄目よ? 赤字続きの領地だったわけだし、経済状況が改善されたのも最近でしょ? 元伯爵領とはいえ、栄えていると楽観視出来ないわよ?」


 エアリスが現実的な指摘をする。


 確かにそうだ。ガーフィッシュ商会が代理で領地経営を行い、建て直したと言ってもまだ、最近の事だ。


 あくまで黒字化しただけであって、領都が栄えているという可能性はあまり期待できないだろう。


 タウロはそのアドバイスに頷くと、これから自分が発展させるのだと言い聞かせるのであった。



 タウロ一行は数日南下してから西へと向かった。


 ジーロシュガー子爵領は南西部に近いからだ。


 その間、いくつかの貴族領を通過する事になるのだが、そこで挨拶の為、面会を求めたが、留守、もしくは急の為にスケジュールが合わないなどの理由でろくに会ってもらえなかった。


「どこも感じが悪かったわね。タウロがバリエーラ公爵と良好な関係である事をまだ、知らないのね」


 エアリスは、南部に影響力を持つバリエーラ宰相閣下の名を出せば、会ってくれた貴族もいたであろう状況でも、タウロが名を出さなかったので静観していたが、新領地手前の貴族領に辿り着いた時点でそう愚痴を漏らした。


 タウロの新領地は一応、元伯爵領だから広い。


 と言っても、領地の多くが山と森に覆われており、一見するとあまり価値がある土地ではないのだが、色んな領地と接している為、交易地としては中々立地が優れている。


 特にあらゆる種族の自治区や王家直轄地の秘境特区と接している為、それらの地の珍しい物産品が流れて来るのだが、それらを交易の品として以前の領主は利益を得られるはずだった。


 しかし、欲をかき過ぎて各自治区からは疎遠になっていき、秘境特区からの品も入って来なくなったのが、赤字の一途を辿った原因の一つであるようだ。


 もちろん、領民に重い税を掛けたりして悪政を布いた事も原因だろうが、前の領主があまりに愚かだったという事は事実だろう。


 そんな前領主を見限って領地を接する領主達も疎遠になっていたと思われるから、新領主であるタウロが現れても旨味を感じず、相手をするだけ時間の無駄と判断されても仕方がなかったのかもしれない。


「で、リーダーどうするんだ? ここはリーダーの新領地と接する貴族領だろ? 今度はさすがに直接会って挨拶しておかないと、ご近所さんになるんだし、マズいと思うんだが?」


 今後、タウロの領地が孤立しないようにアンクが提案する。


「そうよね。私も今回はさすがに通過するにしても、何か挨拶しておいた方が良いと思うわ」


 エアリスもアンクに賛同して粘り強く交渉して面会する事を忠告した。


「ここまで、通過した貴族はみんな会ってくれなかったからなぁ。あまり期待は出来ないけど、今回は粘って面会を求めてみようか」


 タウロもみんなのアドバイスを聞いて、本気を出す事にした。


 それは王都で購入した珍しい品々をお土産として包む事にしたのだ。


 もちろん、その際に交渉する相手にお金を握らせる事も忘れない。


 最初は、城館の門番に、次に取り次いでくれた文官にも同じように握らせる。


 文官はホクホク顔で、領主への取次ぎを約束し、翌日の昼に面会を早速、設定してくれた。


「呆気なく面会が決まったな。何でこれまではこれをしなかったんだ、リーダー」


 タウロが慣れた立ち回りで領主との面会をあっさり決めた事に、呆れて疑問を口にした。


「ここまでは必要性を感じなかったからだよ。それにこちらはちゃんと新領主として名乗って面会を求めて、どう対応してくるか確認もしておきたかったしね。こちらの立ち位置がわかって良かったじゃない」


 タウロはそうあっけらかんと答えて続ける。


「さすがにアンク達が言う通り、隣領の貴族とは会っておいた方が良いかなと思ってお金をばら撒いてみせたけど、これも確認のついでではあるけどね。困った時、緊急の時、ご近所の領主に面会を求めるには何が良いのか。それにどんな相手なのかも確認した方が良いかもと考え直したよ」


 タウロはタウロなりに考えてのことのようであった。


「さすがタウロ様です!」


 シオンはタウロを称賛する。


「でも、賄賂で面会を取り付ける事が出来るって、ちょっと問題じゃない?」


 エアリスが苦笑してこの地の領主について指摘する。


「いや、至極当然の対応じゃない? 自領の利益にならない相手と会っている暇はないと思うのが普通の領主感覚じゃないかな。賄賂を渡して面会を求めてきた時点で、少なくと僕の事を世渡りを理解している相手とわかれば、それなりの対応に変化するのが貴族だと思う。そこでやっと隣領の新領主に対して興味を持ってもらえたんだと思うよ」


 タウロは面会が決まった隣領の領主の思考を少し解説した。


「だが、タウロの名は少なくと王都では有名だから、賄賂を渡さずとも会ってくれても良いと思うのだが?」


 ラグーネが当然の感想を漏らす。


「ここは南部の田舎。王都じゃないからね。それに、僕の発明品は出回っているけど、製作者のジーロ・シュガーより、商品を扱っているガーフィッシュ商会の名の方が浸透している気がしたから、僕の名はこちらでは有名ではない気がするよ」


 タウロは道中の街や村で感じた事を口にする。


「……言われてみれば、確かに……。さすがリーダー。ほとんど宿泊と通過の際にしか町や村の様子を窺う機会がなかったのによく見ているぜ!」


 アンクがタウロを褒めると、エアリス達も素直に賛同して頷くのであった。

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