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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第607話 公爵領での再会

 狼型人形(ゴーレム)ガロに跨ったタウロ達『黒金の翼』一行は、馬車よりもはるかに短い時間で旅程を進め、わずか数日のうちにバリエーラ公爵領に到着した。


 ここでバリエーラ公爵宰相閣下の息子であるムーサイ子爵に挨拶する為である。


 ムーサイ子爵は聖女の一団と訪問した時にお世話になった相手であり、タウロ達と親交を深めた人物であった。


 それに、宰相閣下から、息子と会って今後の話をしておくように書状を渡されていたのだ。


 今後の話とは、タウロのジーロシュガー子爵領についての今後の統治についての事である。


 バリエーラ公爵領からジーロシュガー子爵領ははるかに遠いが、南部地方においてバリエーラ公爵の影響力は結構大きなものがある。


 これからジーロシュガー子爵として近隣とうまく付き合っていく事も大事だから、その時にはバリエーラ公爵領と交易契約を結んでおく事で他の領地を通過する時に邪魔をされ無くしたりもできるのだ。


 バリエーラ公爵は宰相として王都に滞在しているから、領地は息子に一任している。


 だから、そういった契約事をタウロと結ばせる事で、新領主を支援しようと考えたようだった。


 ちなみにバリエーラ宰相閣下はジーロシュガー子爵領で微量ながらオリハルコンが産出する事を王家からまだ聞いていおらず、知らない。


 ただ単に、タウロがお気に入りな事、そして、北部で人形ゴーレムを使って謎の軍団を討伐した事から、王国にとって貴重な人材であると改めて認識している事、さらには聖女の事で息子共々借りを作っている事からそれをお返しする為でもあった。


「お久し振りですね、タウロ殿! そしてみなさんも!」


 ムーサイ子爵は懐かしいタウロ達を大歓迎すると豪華な応接室に通した。


「こちらこそ、お久し振りです。ムーサイ子爵。図々しくも旅の途中で立ち寄らせてもらいました」


「はははっ! 私と君の仲ではないですか! もう一年以上も経つのですね。あの時はお世話になりました」


 ムーサイ子爵はタウロから受けた恩義を忘れておらず、人懐っこい笑顔で歓迎してくれる。


「実は──」


 タウロは宰相閣下から預かった書状を渡して、簡単な説明をした。


「──ほう? なるほど、それでこちらに……! それでは失礼ながらここで父の書状を拝見させてもらいますね」


 ムーサイ子爵はタウロの新領主として領地に赴任するという簡単な説明を聞いて書状に目を通した。


 しばらくして読み終わると顔を上げて話し始めた。


「──そういう事でしたか……。それにしてもタウロ殿。以前のこの地での活躍の時も只者ではないと思っていましたが、帝国……、いや、謎の軍団をチームで撃退してしまうとは……。そちらのセトと名付けた人形ゴーレムがその力の一端という事でしょうか?」


 ムーサイ子爵はタウロの背後に立つセトを興味深げに見て半ば納得しながら言う。


「僕の自慢の仲間の一人になっています」


 タウロも笑顔で答える。


「この書状にはタウロ殿と交易に関する契約を結ぶように書かれています。条件については話し合いが必要ですが、タウロ殿の新領地と言うと確か秘境特区やいろんな種族の自治区に接する山が多いところでしたね……。──わかりました。タウロ殿も大変でしょうから、本来は宰相家としての立場で、交易の為にこちらに商品を持ち込まれた際はこちらが六、そちらが四という利益配分が通常なのですが、うちは三、そちらが七でどうでしょう?」


 ムーサイ子爵は自分に利益が出ない利益配分を持ちかけた。


「……それは全ての商品についてですか?」


 タウロも好待遇な条件に驚きつつ、慎重に確認する。


「ええ。それだけタウロ殿にはこちらも恩義があるという事です。それにタウロ殿が赴任する新領地の過去五年の経済状況がとても芳しくなかった事は承知しています。それをこれから上向きにしようと思ったら、三年は少なくと赤字経営が続くかと……。ですが、うちがそちらが卸す商品を先程の配分で扱えば二年でどうにかなるかもしれません」


 ムーサイ子爵はタウロの新領地の事も詳しく知っているらしくそう願い出てくれた。


「あ、実はですね……。領地の代理としてガーフィッシュ商会の人間が統治してくれているらしいのですが、すでに赤字経営からは脱却できているみたいなので、ご心配には及びません」


 タウロは自分に得になる話とはいえ、事実を黙っておくのも気が引けて本当の事を告げた。


「え!? あのどん底の経営状況だったあの土地をすでに黒字に!? 商人による統治とは恐ろしいものですね……」


 ムーサイ子爵は自分の情報がすでに古くなっていた事よりも、商人の統治であっという間に黒字化している事に驚いて唸った。


「はい、ですから、利益配分は五分五分でどうでしょうか?」


 タウロはあえてオリハルコンについての未確認情報は伝えずに交渉する。


「……いえ、黒字化したとは言っても、あの土地だと今後何が起きてもおかしくありません。タウロ殿が六、こちらが四でどうでしょうか? あ、もちろん、あの領地の食糧事情などもあるでしょうから、そちらに関しては優先的に安くお譲りします」


 ムーサイ子爵はやはり、タウロに対しての恩義を感じてタウロの利益優先で話を進めた。


「……わかりました。それでは我が領で現在、収益の柱になっている秘境特区、自治区との交易品で入手できる商品の数々はそれでお願いします。もし、新たな主力商品が出来た時はまた、再交渉するという事で」


 これは暗にオリハルコンの事を言っていたのだが、もちろん知らないムーサイ子爵はその案を承諾した。


 二人はがっちりと握手をすると、細かい話を詰めていき、それを契約書にしたためる。


 こうして、タウロは領地入りする前に、最大の交易相手としてバリエーラ公爵領と契約を結び、他の領主から言いがかりがつけられない状態にするのであった。

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