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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第606話 狼型人形

 この日の朝、タウロ達一行は王都での挨拶回りを終え、ようやく南部地方に向けて旅立つ事になった。


 タウロの肩にはスライムエンペラーのぺらが乗り、セトも同行している。


 ただし、前日に作った狼型人形(ゴーレム)はいない。


 どうやら、マジック収納に納めているようだ。


 タウロ一行は南部方面の乗合馬車に乗るでもなく、徒歩で王都を後にした。


「それで、最初の目的地はリーダーの新領地であるジーロシュガー領に向かうんだよな?」


 アンクがタウロに何かを確認するように聞く。


「うん。──あ、王都から少し離れたし、この辺で良いかな?」


 タウロはそう言うと、マジック収納から前日生み出したばかりの大きい狼型人形を出した。


 その背中には背もたれ付きの鞍が五つ、シートベルト付きで装着されている。


 狼型人形はタウロに言われるまでもなく、しゃがみこんで一行が背中に乗るのを待つ。


「じゃあ、みんな狼型人形ガロに乗ってくれる?」


 タウロはそういうと、エアリスの手を取ってガロの背中に誘導する。


 ガロとは狼型人形に名付けた名だ。


「マジで乗るのか? 乗合馬車でも良さそうなもんだが」


 アンクはこの事をわかっていたので、タウロに目的地を意味ありげに聞いたのだ。


「もう、アンクさん。観念して乗りましょうよ。タウロ様の考えに間違いはないですよ!」


 タウロ信者のシオンはタウロの考えを全肯定する勢いでアンクを促した。


「でもよ? セトは男女型人形アダムとイブと一緒に徒歩で先行するから良いとして、それでも俺達五人は結構重いだろう?」


「この大きさだから大丈夫じゃないか? あとは乗り心地だがな」


 ラグーネが動物に接するようにガロの背中を撫でてから、その背中に跨る。


「もし、乗り心地が悪かったら、次の街から乗合馬車に変更するから安心して」


 タウロは渋るアンクを笑って乗るように促した。


「……わかったよ。みんな抵抗なく乗れるなぁ。五人も乗ったらガロがかわいそうなもんだが……」


 アンクはどうやら大人数で背中に乗る事でガロが辛いのではないかと感情移入した結果であったようだ。


 ぶつぶつとアンクが愚痴をこぼしながら跨り、全員の乗った事を確認すると、ガロはすくっと軽々立ち上がる。


 そして、「がう!」と、小さく吠えるとタウロ達を乗せたまま走り出すのであった。



 ガロの乗り心地は想像以上に良いものであった。


 一歩一歩が空を飛んでいるように長く、地面に着地する瞬間も柔らかく衝撃を吸収して、また、飛ぶように跳ねるのでほとんど気にならない乗り心地だ。


「……こいつは空を飛んでいるみたいだな……!」


 アンクもガロが一歩一歩軽やかに跳ね、風を切って走るのでその心地に感動の感想を漏らした。


「凄いです! これなら早くいろんなところに行けそうですね!」


 シオンは嬉しそうに疾走するガロの背中で両手を上げて風を感じる。


「本当ね! こんな疾走感を味わえるとは思っていなかったわ」


 エアリスもタウロの背中に向かって最高の乗り心地を感じて正直な感想を漏らす。


「これは、ドラゴンの背中に乗るのと同じくらい乗り心地が良いかもしれない!」


 ラグーネが冗談なのか実際経験したのかよくわからないような事を言うが、全員、竜人族のラグーネならあり得るかもしれないと思うのであった。


 途中、先行していたセト達に追いついたので、タウロは一度、マジック収納に回収するとそのまま、ガロの背中に跨ったまま街道を南下していく。


 途中、通り過ぎる馬車の乗客から悲鳴が上がったり、驚く声が聞こえてきたが、背中に人が乗っているから安全な乗り物なのだろうか? という疑問と共に見送る。


「それでタウロ。このガロの特徴ってどうなの?」


 エアリスが一番前に乗るタウロに声を掛けた。


 製作した昨日の段階では、明日旅の途中で説明すると言ったきりだったのだ。


「あ、そうだったね。ガロは僕達を乗せての移動ができるように大きく造ったわけだけど、新たな試みもいくつかしているんだ。例えば、気づいたと思うけど、ガロは簡単な声なら出せるように魔石を使った声帯を作ってみたんだ。まだ、試作段階だから文字通り、狼の鳴き声くらいしか出せないけど、それで簡単な意思疎通はできるでしょ? 将来的にはこれを改良していってセトが話せるようにしたいのだけど、かなり難しそうではあるね」


「ちゃんと顎も作っていたものね。それで、ガロは基本、移動特化の狼型人形という事になるのかしら?」


「あ、一応、ガロの口の内部には衝撃波を出せる機構は付けてあるから戦闘も可能だよ。あとは全身に使用したダンジョン『バビロン』産の謎物質が、セトに使用した『始まりのダンジョン』産の謎物質と違って弾力があるものだって事。だから衝撃を吸収してくれる感じに仕上がっているんだ」


「確かに乗り心地が最高だな。本物の動物よりは肌質は硬く、刃が通りそうな感じの弾力ではないがな」


 アンクがガロの背中を擦ってその感触を確認した。


「タウロ様。ガロはどのくらい賢いのですか?」


 シオンがガロの背中を触りながら新たな仲間の賢さがどのくらいかを知りたがった。


「僕が核を作る際のイメージとしては、忠実な狼をイメージしたんだけど、僕と意識の共有は出来るから、人並みに利口だと思うよ。──ね、ガロ」


 タウロがシオンに答えた後、ガロに声を掛ける。


 すると、ガロは嬉しそうに「ガウ!」と答えると、もう一段早く走り始めた。


「うわ! この速度は風がきついぜ、リーダー!」


 アンクが笑いながら、注意する。


 それに反応するように、ガロはまた、元の速度に戻して疾駆し始めた。


「ガロはお利口です!」


 シオンはセトに続いて『黒金の翼』での後輩が出来た事に、先輩としてちょっと嬉しそうにしながら褒める。


 それを聞いたタウロ達は、それが微笑ましくて、お互い視線を交わすと笑い合うのであった。

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