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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第586話 スウェンの街でのひと時

 タウロ達は今回の謎の軍団との戦いにおける報告書を提出後、調査団の帰還を待つ事にした。


 冒険者ギルドにしたらあまりに荒唐無稽な話で街での一時待機を求められたからだ。


 とは言っても、実際、軍からの伝令や早く帰還した一部の冒険者からも連日報告が上がってきており、タウロ達の活躍の模様がどうやら全く誇張されたものでもない事が明るみになりつつある。


 それは早くも街で噂になりつつあった。


 タウロ達の活躍が調査団より先に到着した冒険者達によって語られ始めていたのだ。


 冒険者ギルドは調査団が到着して事実確認をするまで、かん口令を敷いていたのだが、冒険者達はお酒の勢いで周囲に話す為、噂が広がるのを止められない。


 タウロ達は一躍英雄扱いになっていく。


「聞いたか? あの偽者討伐でこの街でも有名になった『黒金の翼』の話」


「ああ。あまりに突拍子もない話だが、一足先に調査から戻ってきた冒険者達が口を揃えて同じような事を言っていたぞ」


「マジか……。それってつまり、北の帝国がこの北部に侵攻しようとしてたのを、一つの冒険者チームが未然に防いだって事だろ?」


「それにしたって魔物を千体以上も討伐したというのは尾ひれが付き過ぎな気がするけどな」


「他の冒険者達も声を揃えて同じ事話してたの聞いていないのか? その話本当らしいぜ?」


「マジか!? その『黒金の翼』のリーダーってまだ、子供だろ? こんな常人離れした活躍するって、もしかして『勇者』スキル持ちかもしれないぞ……!」


 スウェンの街の領民達は、突如現れた英雄冒険者チームを酒の肴にして心浮き立たせるのであった。


 それと同時に、北の帝国の侵攻が計画されていたのではないかという疑惑には怯える。


 それはそうだ、戦争となれば今の生活は確実に奪われるだろう。


 他人事ではないのだ。


 中にはこの土地が戦場にならなければ問題無いと言う者もいるが、それで済むわけがない。


 それはあまりにも平和ボケした考えだろう。


 それらを領民達は想像するとなおさらの事、その可能性を未然に防いだ『黒金の翼』一行を英雄扱いするのであった。



 タウロ達はスウェンの街郊外の森に来ていた。


 冒険者ギルドには街から離れないでくれと注意されているので、いつもの実験場所に来て、領民の騒ぎから避難していたのだ。


「街は凄い騒ぎになってるね……」


 タウロは静かな森の一角でエアリスに魔物除けの結界を張ってもらい、休憩を取っていた。


「俺達『黒金の翼』全体が、注目の的になっているが、活躍のほとんどはリーダーの『人形使い』としての能力だけどな」


 アンクが笑って問題の中心であるタウロに指摘する。


「敵将を討ち取ったのも、タウロだしな」


 ラグーネも同意して頷く。


 そう、謎の軍団の指揮官についても冒険者ギルドへの報告書で記述しておいたのだが、北の帝国の四天王の一角であるバルバトス将軍であった事も一応記しておいた。


 それがどこからどう漏れたのか、北の帝国の軍だったという事は、街で広まり始めている。


「調査団が明日戻るそうだから、その時、私達の報告書の裏付けをしてもらったら、この街から移動しましょう。この街にも帝国の間者が潜んでいるでしょうし、好奇の目でじろじろ見られるのはちょっと嫌だわ」


 エアリスがうんざりした表情で言う。


 エアリスの場合、調査団で負傷した冒険者達を上位の治癒魔法でシオンと共に多くの者を治療したのだが、その美貌と相まって、このスウェンの街の冒険者の間ではすでに女神扱いされていたのだ。


 それにラグーネやアンクも冒険者達の前で大活躍して見せたから、評価は高く噂話には全員の名前がしっかり口にされていた。


 その中でもタウロは前例のない驚異的な『人形使い』として、魔物軍団を蹴散らした事で、『勇者』スキル持ちの英雄ではないかと噂され始めている。


「みんなも注目されているけど、僕のスキルについては独り歩きしているからね。勇者どころか、ポンコツスキルとして有名な『文字化け』なんだけどなぁ」


 タウロは苦笑してそう答える。


「はははっ! リーダーはそもそも考え方から規格外だからな。だからこそ文字化けスキルも使いこなせているんだろうな」


 アンクが感心しながらタウロを冷やかす。


「僕は運が良くて文字化けスキルの能力に目覚めた感じだからね。あの時、目覚めてなかったらその時死んでたと思う」


 タウロは何年も前の出来事を思い出して苦笑した。


「でも、今ではグラウニュート伯爵の養子にして、ジーロシュガー名誉子爵。そして、国内の文化発展に貢献する発明家ジーロ・シュガーその人でもあるのだから、タウロは頑張り過ぎているくらいよ」


 エアリスは自分の恋人の経歴が眩しいくらいに素晴らしい事を評価し、それが一朝一夕で成し遂げたものではない事も知っているから、その努力を労うように言う。


「さすがタウロ様です!」


 シオンにとっては、タウロは命の恩人である事が全てであり、大切な主であったから、その一言に全てが詰まっている。


「タウロは竜人族の村を救った時点で、只者ではないからな!」


 ラグーネも一緒にタウロを評価した。


「ははは……。エアリスの言う通り、早くこの街から移動した方が良さそうだね」


 改めて仲間から評価されると、自分の成してきた事が想像より凄い事だと自覚せざるを得ない。


「北の帝国の動向については、竜人族の村にも知らせたし、この地で私達に出来る事はここまでかもね」


 エアリスはタウロの言葉に付け足す。


「そうだな。──それにしても、今回リーダーはちょっと派手にやり過ぎたな! はははっ!」


 アンクがまた、タウロを冷やかすと、一同も同意して一緒に笑うのであった。

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