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【完結】自力で異世界へ!~優しい仲間と一緒に異世界生活を満喫します~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第581話 謎の軍団の正体

 指揮官である将軍を討ち取られた事で、完全に勝機を失った魔物の軍団とそれを操る謎の精鋭部隊の殿軍はタウロの『ロック』シリーズ残り十体と『黒金の翼』に蹴散らされた。


 元々が人間の部隊を逃がす為の殿軍であったから、敵は完全に戦意を失い、夜の闇に紛れて逃げていく。


 最早、勝負ありだから、見逃しても良さそうではあるが、タウロは『ロック』シリーズによる追撃の手を緩めなかった。


 なにしろオログ=ハイと吸血狼を中心とした軍団はこのまま逃がしても脅威でしかない。


 一体でも多く討ち取り、その脅威を断っておく必要があったのだ。


 タウロはさらなる追撃戦を子供型自律思考人形ゴーレムのセトに任せる。


 そして、自分は将軍を倒した事で能力『無作為ランダム強奪(小)』が発動され、入手した能力を確認していた。


「……これはアレの事かな?」


 どうやらタウロが入手した能力は将軍が『ロック』シリーズの一体を一撃で仕留めた剣技のようであった。


 しかし、その能力は将軍を倒した直後に脳裏で聞こえた『世界の声』を聞く限りでは、聖騎士専用剣技『聖光波動剣』というものらしい。


 つまり、倒したこの将軍は世にも珍しい『勇者』や『聖女』などに並ぶ、貴重な『聖騎士』スキルの持ち主であった事がわかったのだが、専用剣技という事は、聖騎士ではないタウロに使えるのか微妙なところである。


「どうしたの? タウロもぺらも大丈夫だった?」


 エアリスが周囲の魔物軍団を魔法で一層してから、タウロの元に駆け付けた。


「ああ、エアリス、大丈夫だよ。ぺらは今回も大活躍だったからね」


 タウロは肩の上でぴょんぴょん跳ねて元気なのをアピールするぺらを褒めて無事を伝える。


「敵はどのくらい仕留める事が出来たかな? 結構な数だとは思うのだけど……」


 タウロは累々と屍の山を築いている山道とその周囲、そして、広場を見渡して嘆息する。


 それもそうだ。


 周囲一帯にはオログ=ハイ、吸血狼を中心とした魔物の死骸が、数百体どころか千を越える規模で転がっているのだから。


 タウロはこのまま放置も出来ないので、マジック収納に一瞬で納めていく。


 子供型自律思考人形セトが『ロック』シリーズを使ってまだ、追撃戦を行っているから、山中には回収しきれない魔物の死骸が無数に転がっているだろうが、そこまでは面倒見切れない。


 それにしてもセトが急行してくれたのは本当に助かった。


 薬草採取クエストの虹色草採取後、すぐにこちらの危機を察知して直行してくれたのだ。


 やはり思考共有をしているから、セトはその辺りの判断が早い。


 セトのお陰で『ロック』シリーズの被害も四体で済んだし、追撃戦も効率よくやってくれている。


 謎の軍団は百パーセント帝国の軍隊で間違いなさそうだが、これだけ徹底的に叩けば、あちらはぐうの音も出まい。


 この大規模な謎の軍団は素性を隠して動いていた事を考えると、この魔物軍団をサート王国内に進軍させ、混乱を生み出す事が目的だったと思える。


 その後に、帝国の正規軍が何か理由を付けて国境を侵犯するという筋書きかもしれない。


 あり得そうなのは、魔物討伐に協力するとかだろうか?


 帝国側の今回の作戦の全貌はわからないが、この北部地方を狙っているのは間違いないだろう。


 三千余りもの魔物を用意するのはただ事ではない。


 きっと、大がかりな作戦を行う為の肝の部分であっただろうから、それを叩けば作戦自体潰えたのではないかと思えた。


「今回は大変だったわね……」


 エアリスがタウロの手を握って一言そう漏らす。


「うん。『ロック』シリーズを四体も倒す相手だったからね……。そんな相手が国内に進軍していたらと思うとぞっとするよ」


 タウロはエアリスの手を握り返して頷く。


「でもタウロが無事で本当に良かったわ。相手の指揮官、只者ではなかったのでしょ?」


 エアリスはタウロと一騎打ちを演じた将軍の強さをちゃんと理解していたようだ。


「うん。将軍って呼ばれていたから、もしかしたら帝国のお偉いさんなのかも。素性がわかるものは身に着けてるものからは全く分からないけどね。あ、遺体を鑑定すればわかるかな?」


 タウロはそう考えるとマジック収納に回収していた将軍の遺体を出すと、能力の『真眼』で鑑定しようとした。


 その時である。


 鑑定に反応するかのように、遺体が発火した。


 それもただ燃えるというものではなく、青白く高温による燃え方であり、遺骸が鑑定不可能なくらいに燃え尽きるのはあっという間であった。


 エアリスが驚いて少し間をおいてから慌てて水魔法で火を消そうとする時には燃え尽きてしまったくらいだから、どのくらいの火力で燃えたかわかるというものだろう。


「それくらい鑑定されてはいけない人物だったって事か……。でも、一瞬だけど鑑定できたよ。この指揮官は帝国四天王の一人であるバルバトス将軍という名だったみたい。証拠となる遺骸が無くなったから、証明はもう出来ないけれどね」


 タウロが『真眼』で少しだけ鑑定できた内容を口にした。


「え……? バルバトス将軍!?」


 何か知っているのかエアリスが驚いて聞き返す。


「うん。知っているの?」


「当然よ! バルバトス将軍といえば、帝国最強クラスの剣技持ちで、さらにその用兵は一級品、特に地形を生かした戦いを得意とする歴戦の将らしいわ。私でも聞いた事あるのだから、帝国と国境を接するこの北部地方の人ならもっと詳しく知っていると思うわよ!?」


 エアリスは驚いて早口で一気に言い終えた。


「……道理で強かったわけだ。あの『ロック』シリーズを倒せる人なんてそうそういないよ」


 タウロは凄そうな将軍であった事を知って納得する。


「何を言っているの。同じ事をやったのがタウロでしょ?」


 エアリスはその将軍と一騎打ちで勝利し、それ以前には『ロック』シリーズの原型である守護岩人形ゴーレム二体を仕留めた本人に呆れるのであった。

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